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石の対決!――東昌府の没羽箭と、王牌投手の世紀大戦


朝廷の進撃は一波また一波と続き、ついに最後の猛将である「没羽箭」張清(ちょうせい)の到来を迎えていた。

張清が鎮守する東昌府の軍勢は手強く、彼の放つ一手の飛石暗器は、今や梁山泊の好漢たちにとって最悪の悪夢と化していた。

わずか三日の間に、双鞭の呼延灼、大刀の関勝、霹靂火の秦明。さらには一向に沈毅な豹子頭の林冲までもが、張清が暗がりのなかから放つ悪辣な石の前に鼻青眼腫(鼻青じみ)にされ、手首を紅く腫らされて、梁山泊は実に十五員の大将を連敗させていた。宋江は聚義庁の前で焦りのあまりぐるぐると足を進めるばかりで、全砦の好漢たちは誰一人として有効な手段を持てずにいた。

「飛石の暗器? この天天下に、あろうことか私の目の前で『投手(ピッチャー)』の真似事をしようなんて不届き者がいるの?」

美嘉は、前線から退いて薬を換える林冲の微かな悶絶の声を聞きながら、彼の傷口に舒筋活血(血の巡りを良くする)の独門の薬散を敷き詰めつつ、その清徹な大きな瞳を細め、冷ややかに笑い声を漏らした。

四日目、東昌府の陣前は風が砂を巻き上げ、石を走らせていた。

張清は馬上高くに居座り、手の中で丸みを帯びた石を弄びながら、傲慢な色をその面に浮かべて大声で叫んでいた。

「梁山泊は、揃いも揃って無能の輩ばかりか! 誰か、俺の石をもう一発喰らいに来る骨のある奴はいないのか!」

「東昌府の、世間知らずのガキんちょが。この私が遊んであげるわ!」

銀鈴の如く清らかでありながら、比類なき覇気を孕んだ鋭い嬌喝が、戦場を真っ二つに切り裂いた。

見れば、美嘉は天青色の戦裙(いくさ袴)へと身を包み、その修長(すらりとした)な身の丈を真っ直ぐに伸ばして白馬に跨っていた。鞍の側には原主の残した日月双刀が揺れている。戦鼓が地を揺らすように鳴り響くなか、彼女は颯爽と馬を進めて陣前へと躍り出た。

彼女の右手の掌のなかには、百無聊賴(退屈そう)に、鶏卵ほどの大きさの鵝卵石が三枚、軽やかに弄ばれていた。

「扈三娘だと!?」張清は一瞬呆気にとられたが、次の瞬間にはハハハと大笑いした。「宋江の奴、とうとう出す人間がいなくなって、女を一人、死に追いやるために寄越したか! ――石を喰らえ!」

言うが早いか、張清は槍を提げることすら迎えず、右腕を猛然と一閃した。流星のごとき凄まじい速度で放たれた一記の飛石が、キリキリと耳を刺すような風切り音を伴い、美嘉の面門(顔面)を目がけて一直線に激射した。

この一石の力道は千鈞の重みがあり、尋常の好漢であれば、今頃は傷を負って落馬しているところだった。

しかし、美嘉はその場に立ち尽くしたまま、その瞳の奥を驚くほど冷徹に集中させていた。

――それは、現代の女子ソフトボール部において、幾多の修羅場を潜り抜けてきた「王牌(エース)投手」だけが持つ、至高の捕球能力と空間把握能力の覚醒だった。

彼女は、身をかわすことすら選択しなかった。

飛石が美嘉の胸前一尺にまで肉薄したその刹那、彼女は首を落とし、腰を鋭く回し、右腕を限界まで引き絞った。扈三娘の持つ高武の爆発力を受け継いだその右腕が、空間の中に、教科書に描かれたような完璧な弧線を描き出す。

「いい度胸ね、小僧。よく見ておきなさい。――これが、変化球(カーブ)よ!!」

美嘉の手指が猛烈な勢いで石の表面を擦り、手首が極めて刁鑽(きわどい)な角度を以て振り抜かれた。

彼女の手から放たれた鵝卵石が、空気を引き裂く凄まじい呼気とともに激射する。

これは、古代の暗器のような単純な直線軌道ではない。強烈な自転(トップスピン)を伴い、空間の中で怪異な弧を描いて曲がり落ちる、超高速の強烈なスライダーだった。

「パキィィィィン————!!」

二つの石子は、両軍が固唾を呑んで見つめる陣前の半空中において、寸分の狂いもなく正面から激突し、耳を突き刺すような砕裂音を轟かせた。火花が激しく四散するなか、張清の放った飛石は、美嘉の投じた強烈な回転の前に力負けし、硬生生(力任せに)に粉微塵へと叩き潰されたのだ。

「な、何だと!?」張清の眼球が、驚愕のあまり眼窩から飛び出しそうになっていた。

彼がその衝撃から立ち直るより早く、美嘉は唇を僅かに開き、悪戯っぽく微笑んだ。彼女の右手から、二枚目、三枚目の石子が、矢継ぎ早に脱手(放たれ)していった。

双球連発。一記は鋭く鋭角に落ちるフォークボール、もう一記は左から右へと怪異な折線を描く超高速のシュート。

二つの石子は、空間の中で奇妙な風切り音を響かせながら、忽(たちま)ち左へ、忽ち右へ、あるいは上へ、下へと軌道をブレさせていく。張清は馬上でありえない冷汗を全身に流していた。彼の持っていた直線の飛石の経験など、現代の野球の投手が投じる「魔球」のロジックの前には、ただの子供の子供騙し(お遊び)に過ぎなかった。

彼は手元を大慌てに動かし、二つの石を投じて格迎(叩き落とそう)と企てたが、美嘉の放った石子は空間の中で「自ら急カーブを描き」、神業のような軌道で彼の防衛線をのの字にすり抜けた。

「パシッ! パシッ!」

二声の、小気味よい音が響く。

第一石は、張清が手綱を握る右手の虎口(親指と人差し指の付け根)へと精準に命中し、その衝撃で彼の長槍は手元から弾き飛ばされた。第二石は、ひらひらと揺れる抛物線を描きながら、寸分の狂いもなく、彼の頭上の戦盔(兜)の紅纓を粉々に打ち砕いた。

「天の下に……これほどまでに曲がる妖石が存在するというのか……」

張清は血の滲む手首を押さえ、馬の上で何度か大きく揺らめいた。その二つの瞳には、根底からの震撼と、言葉を失うほどの心服の色彩が満ち満ちていた。

美嘉は両手の泥を軽く払うと、東昌府の大軍に向けて片方の眉をくいと上げ、覇気あふれる動作で手招きをした。「顧大姉、人間を引き連れて、収編(いただくわよ)!」

「おおおおおーーーーっ!!」

後方で観戦していた林冲、秦明、魯智深、武松たちの眼球が驚きのあまり転がり落ち、次の瞬間には、海嘯の如き轟然たる喝采が戦場を包み込んだ。彼らはすぐさま山砦の軍兵を引き連れて突撃し、一瞬のうちに張清の部隊を包囲した。

この一役、美嘉は「石対石」という名の一切の言い訳を許さない降維打撃(次元の違う攻撃)を以て、朝廷の猛将である張清を叩きのめし、馬を下りて梁山泊へと帰順させたのである。

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