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ほんとうのたからもの  作者: あやん


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4/5

涙の告白と、消えない絆

頂上が近づくほど、山道は細くなっていった。

足場は緩く、木の根が複雑に絡まり、土は今にも崩れそうだ。

「気をつけろよ」

先頭を行く大翔が振り返った、その瞬間だった。

足元が、ずるりと滑る。

「うわっ!」

短い悲鳴とともに視界が大きく傾いた。土と草と空がぐるぐると混ざり合い、僕たち六人は短い崖を転がり落ちた。

どさり。

静まり返る山。

「いてて……」

大翔が泥だらけの腕を押さえる。美咲はひざをすりむき、恒一は泥の中から眼鏡を拾い上げ、ひよりは小さく顔をしかめていた。僕の手のひらも赤く剥けている。

少し離れた場所に、ハルが静かに立っていた。

大怪我ではない。でも、痛い。そして、何より怖い。

「……やっぱり、やめればよかったんだ!」

大翔が地面を叩く。

「地図なんて当てにならないって言っただろ」

恒一の声も、苛立ちで強くなる。

「こんなの冒険じゃなくて無茶だよ!」

美咲が叫ぶ。誰も僕を直接責めてはいない。けれど、その言葉は鋭いとげになって僕の胸を刺した。

やっぱり。やっぱり僕のせいだ。

ぽろ、と涙が落ちた。止まらない。

「ごめん……!」

声が、情けないほど震える。

「ほんとうにごめんね、僕のせいだ!」

四人が一斉に振り向く。

「違うだろ!」

と大翔。

「秋也のせいじゃない」

とひより。

でも、僕は首を振り続けた。

「僕……僕、本当は宝探しなんてしたかったわけじゃないんだ!」

叫ぶような声に、全員が動きを止めた。風だけが通り抜ける。

「ただ……思い出が欲しかったんだ! 最後のみんなとの思い出が欲しかっただけなんだ!」

「最後って……どういうこと?」

恒一の声が、低くなる。

僕は深く息を吸い込んだ。ずっと喉の奥にこびりついていた言葉。

「おじいちゃんが……死んじゃって。引っ越すことになったんだ……遠い街に……転校するんだよ」

時間が止まった。

「……なんで言わなかったんだよ!」

大翔が叫ぶ。

「先生だって、何も言ってなかったぞ!」

「みんなに知られたくなくて……黙っててって頼んだんだ! 離れたくなくて、ずっとこのままがよくて、そんなことばかり考えてたから、こんなことになったんだ!」

僕は泣きじゃくった。大好きだから言えなかった。

崖下の空気が、鉛のように重く沈んだそのとき。

ずっと静かだったハルが、すっと白い手を上げた。

「……階段があるよ」

全員が、ハルの指差す先を見た。

崖の脇、生い茂るつるの影に隠れるように、古びた石の階段が上へと続いていた。

「あそこを登れば、そのまま頂上に行ける」

ハルの声は淡々としていて、まるで最初からそこにあることを知っていたみたいに穏やかだった。

泣きじゃくる僕の前に、大翔が立ち、泥だらけの手で僕の肩を掴んだ。

「……思い出、作るんだろ?」

美咲も目尻を拭う。

「まだ行くんでしょ?」

恒一が眼鏡を直し、

「途中でやめる方が後悔する」

と僕を促した。

ひよりが僕の手を握り、

「泣くのは、頂上でもできるよ」

と真っ直ぐに僕を見た。

四人の声が重なり、僕を暗い底から引き上げてくれる。

宝物があるかどうかなんて、もうどうでもよかった。

でも。今、僕の隣にいてくれるこの四人の体温だけは、何よりも確かな本物だった。


「……うん。行こう」

僕は、涙を袖で拭ってうなずいた。


石の階段を登り始めた。その途中のことだ。

崩れた岩陰の奥に、真っ白な何かが横たわっていた。

「うわ……っ! なにこれ、骸骨!?」

美咲が短い悲鳴を上げ、僕たちは凍りついたように一歩後ずさった。

長い年月、誰にも見つからずにそこにいた何者かの姿。かつて、僕たちと同じように道に迷い、ここで力尽きたのだろうか。その手は、今も山頂へ向かって伸ばされているようだった。

恐怖に顔を強張らせ、みんなが動けずにいたその時。

ハルだけが、静かにその骸骨の傍らに立ち、愛おしそうにそれを見つめていた。

そして、僕の耳元でだけ、風が囁くようなハルの声が聞こえた。

『……一生懸命、歩いたんだと思う。友達との約束を、守りたかったから。どうしても、あの日、あそこで会いたかったから……』

「え……?」

僕が驚いて顔を上げると、ハルは寂しそうに、でも誇らしそうに微笑んだ。

他の4人には、今の言葉は聞こえていない。

けれど、僕には確信があった。ハルのその言葉は、目の前の骸骨への手向けであると同時に、秘密を抱えて必死に歩いてきた僕への、最大の励ましだったんだ。


ハルが最後にもう一度だけ、その骸骨を……あの日、一歩が届かなかった自分自身を優しく振り返ったのを、僕は見ていた。

彼の瞳には、もう迷いも後悔もない。

彼が長い間待たせていた「友達」は、もうすぐそこにいる。

空に近いあの場所で、ずっと止まったままだった二人の時間が、僕たちの足音とともに動き出そうとしていた。

「行こう、秋也」

大翔が僕の背中を力強く叩く。

僕たちは、眩しい光が漏れ出す階段の先を見上げた。

六人の足音が、石の階段を同じリズムで刻んでいく。

頂上は、もうすぐ。

そして、宝物も。

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