第150話 過ぎ去り消えた十年
日々は続く。何もできないまま。もどかしいだけの日々が続いた。
あれから、十年の時が、経とうとしていた。
「ハイガル」
――まったく。
「待たせたわね」
いつまで待たせる気だ。首が伸び切ったじゃないか。
その声を聞くのも、同じくらいぶりだ。すべてを鮮明に覚えている――今、目の前で起こっていることみたいに。それでも、懐かしいと思うくらい。
「――本当に、変わらない」
相変わらず小さな手が、俺の頭を撫でる。
「誰も、何も、できなかったのね」
俺を治すため、ローウェルが各地から知識を募った。その結果、「どうにもできない」という結論に至った。
「あたしも、前に同じようなことがなかったら、きっと気づかなかったもの」
何かを躊躇うようにして、マナは。
「こんな方法しか思いつかなくて、ごめんなさい。でも、こうするしか、ないと思うから」
マナは俺を、強く抱きしめる。
「――もし、今の生活が気に入ってるって言うなら、謝りようもないくらい、ごめんなさい」
グジュ、と、音がする。俺の、胸の辺りから。痛い。熱い。のたうち回りたいのに、体が動かなくて。痛みを紛らわせる方法がなくて。痛い。
「不老不死は、魔法だから。あたしが触れて、無効化してる間は、不老でも不死でもない」
「ごめんなさい」
熱い痛いが、ぐるぐる回って。気持ち悪いになってきて。それが、寒いに変わっていく。
心臓を貫かれたのだと、遅れて理解する。
それでも、なかなか死ねないのは、マナの魔法を無効化する力と、不老不死の魔法が、反発しあっているからだろう。
「すぐに、終わるから」
ありがとう、マナ。
そんな決断をできるくらい、強くなったんだな。
いつでもマナは、俺の、憧れだ。
だから、次があるなら、俺も、強く生きたいと思う。
感覚が、遠のく。
次なんて、あるんだろうか。
でも、よかった。
こうなることを見越して、空間収納の中を、空にしておいたんだ。
ジェニファーとナーアは、マナに預けたから、安心だ。
もし、次の世界があるなら。
今度こそ、みんなで、堂々と生きられるような、そんな居場所を、作っていこう。
「次の世界でも、あたしはあなたを――」
俺はお前を。
――愛してる。
(瞳人と送影 END)




