リバイス10
歓迎会が終わる頃には、雨蘭さんが酔い潰れていた。グーグーとだらしなく脚を広げて寝ている。
サスペンダーの付いた黒の短いスカートにはスリットが入っており、絶対領域が…
脱ぎ癖があるのか雨蘭さんは、長袖のシャツを身に付けていたが、シャツのボタンがいくつか開いている。
雨蘭さんに女性社員がコートですぐにガードしたので気づいた人は少ない。彼方の両目は光莉が塞いだので見えることはなかった。
微かに黒い布が見えた気がしたのは気のせいだろう。
粟井ちゃんもその隣ですやすやと眠っている。彼方はちょっとした悪戯でほっぺをツンツンと指で突いた。
歓迎会が終わり、粟井ちゃんは僕が背負っている。
「ボス、しっかりしてください」
雨蘭はよろよろと女性社員に支えられながら歩く。
「ふにゃぁ~」
上気した頬と濡れたような瞳、完全に酔っぱらっている。
「弱いのにお酒飲むんだから」
「社長はお酒が弱いんですか?」
彼方は疑問を日九南さん【秘書】に問いかけた。
「弱いですよ。ビールコップ一杯で酔います。今日は、君たちが入社したのがとても嬉しかったのだと思います」
「そうなんですか?」
「期待の新人見つけてきたって喜ばれてましたし」
「期待されるのは、嬉しいですが。期待に沿えるかは、確かに個性は強いと思います」
「そんなことないと思う。インディビジュアリティー、個性はヒーローに不可欠だよ」
「ありがとうございます。期待に沿えるように頑張ります」
「うん。社長なんて、やっぱり入社するのを辞めたって言われたら、死のうかなって言われていたので」
「マジですか!!」
「本気。社長はいつもは気丈に振る舞っているけど、精神が安定しないからね」
まったくそうは見えないけど。まあ、僕が知らないだけなんだろうな。
「面倒だな」
日九南さんの言葉に、どうしたんだろと見ていたら、社長の顎をクイッとするとそのまま唇を重ねた。
…初めて見た。大人のキス、しかも女性同士。粟井ちゃんが眠っていて、ホントに良かったと心から思う。
日九南さんが社長から唇を離すと、テラテラと糸ができていた。
その直後、社長の酔いが完全に覚めていた。
「んっ、あれ!私酔ってなかった?」
そこにはいつもと変わらない社長がいる。
「あの、今のはなんだったんですか?」
光莉と万利は顔を真っ赤にしていた。彼方は問いかけずにいられなかった。
「ボスの体の中のアルコール成分を分解したんだよ」
「そんなことができるんですか?」
「できるもできないも、今見た通りだよ。私は体内であらゆる薬を作れるんだよね」
そんなことが可能なのだろうか?しかし、酔っぱらていた社長が一瞬で酔いが覚めた。納得するしかないだろう。
「ちなみに私は両刀なので、問題ないですよ」
今の情報は聞きたくなかった。




