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ノエル’ズ ダイアリー ~竜姫さまのVRMMO日記  作者: 柚ノ森みんと
3章:大陸西域・レウルザーガ領アルトラント
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3章開始になります。

よろしくお願いします。

 大陸暦1053年 海の月 26日



 ストーンゴーレム

 ボス

 種族:魔法生物

 レベル:15

 属性:土

 スキル:〈石の体〉



 人型モンスターを〈鑑定〉で見た内容です。一瞬、何かの間違い? と思いましたが、低レベル用ダンジョンでしたっけ。これくらいが普通なのでしょう。


 で、このストーンゴーレムと戦っている女性が2人。


 1人目は前衛で盾を持って戦っている女性。白い髪に赤い目……アルビノ、というのでしょうか。金属製の鎖帷子を着て大きな盾を持っています。

 武器を持ってないな、と思ったらこの女性、盾で殴ってますね。

 盾でストーンゴーレムのパンチを受け止め、そのまま盾で殴り返す。〈シールドチャージ〉とかありましたし、普通、なのかな……? 私の知る盾使いはだいたい武器を持っていましたが。


 2人目は後衛で離れた場所から攻撃している女性。青い髪にバイザーをつけているのでその影に隠れて目はよくわかりません。

 両手で構えているのは銃のようです。グリムレットさんの戦いの時も使っているプレイヤーがいましたね。銃身の長いライフル銃っぽい銃です。銃口から光がストーンゴーレムに飛んでいるので攻撃しているのがわかります。現実のように派手な音がしたりとかはしないみたいです。まあ、弾丸を撃ち出すのではなく、光が射出されているわけですから当然なのかもしれません。

 後、目立つのは銃身から銃口の先へ三角錐型の針が突き出していることです。銃剣、ですね。


 前衛の女性が盾で相手を足止めし、後衛の女性が銃で攻撃する。理に適ったパーティプレイです。


 と、戦いを観察していたら、前衛の盾持ちの女性と目が合いました。


 びっくりして目を見開いて、私の方を見ています。そりゃびっくりしますか。いきなり人が現れたわけですから。


 「新手!?」


 あ、私に注意が向きすぎて、ストーンゴーレムに殴り飛ばされた。


 「ローシャ!?」


 それを見て後衛の女性が銃を構え直し、ストーンゴーレムに突撃します。


 三角錐型の穂先がゴーレムに突き刺さりますが、致命傷にはなりません。ストーンゴーレムが腕を振り上げ、銃持ちの女性に襲い掛かろうとします。


 む、私のせいでピンチになるのは申し訳ないですね。


 カスタマイズアーツ〈オーラホーン〉発動。


 光に包まれた2本1対の角が、銃持ち女性とストーンゴーレムの間に割って入り、突き刺さります。

 固そうな石の体も、〈闘気術〉と組み合わされた〈ドラゴンホーン〉なら関係ありません。

 〈オーラホーン〉がそのままストーンゴーレムの体を貫通します。


 ゆっくりとストーンゴーレムは仰向けに倒れ、そのまま動かなくなりました。


 あ、あれ? まさか一撃で倒せるとは思いませんでした。

 急な展開に驚いて銃持ちの女性はこちらを見ます。あ、バイザーに隠れてて最初はわからなかったんですが、目の色は水色なんですね。



     ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇



 ストーンゴーレムに殴り飛ばされて、壁に激突していた盾持ちの女性は銃持ちの女性の方がポーションで回復させたようです。

 この状況だと、見なかったことにするのもまずいですね。私も2人へ近づいていきます。


 「大丈夫ですか?」


 「ポーション使ったから大丈夫。さっきストーンゴーレムを倒したのは君?」


 「え、ええ」


 銃持ち女性がぱっ、と私の手を取りました。


 「やー、ありがとう! おかげで助かったよ。ローシャがやられちゃって、焦っちゃってさあ」


 「……そもそも私がやられたのはその人が急に現れたから」


 あ、盾持ちの人も起き上がって来ました。


 「……何者ですか、貴女?」


 ジト目でこちらをじろじろと睨んできます。まあ、どう見ても、私、不審者ですしね。


 「あ、ええっと、私はノエル、プレイヤーです。実はそこに隠し部屋があって、そこの隠し部屋から別のダンジョンに通じているんですよね。で、そのダンジョンから隠し部屋に戻ってきたら、たまたまあなた方が戦闘中だったわけでして」


 さらに視線が険しくなったような。


 「……隠し部屋? そんな話は聞いたことがないけど……?」


 「ほらほら、駄目だよ、ローシャ。初対面の、しかも助けてくれた人にそんな顔しちゃ」


 銃持ちの女性が間に入って、盾持ちの女性の顔を引っ張っています。


 「あ、こっちの自己紹介がまだだったね。私はアーシャ。こっちは妹のローシャ。2人ともプレイヤーだよ。よろしくね」


 「……妹なのは現実で、こっちのキャラクターは妹じゃないから。私はローシャ。よろしく」


 「え、ええ。よろしくお願いします」


 銃持ちの青髪の女性がアーシャさん、盾持ちの白髪の女性がローシャさん、ですね。


 2人は第4世代のアカウント販売から「アナザーアース・クロニクル」を始めたそうです。現実で姉妹だそうで、ゲーム内でもコンビで一緒に冒険者をやっているそうです。

 「本当はキャラクター設定でも血縁にしたかったんだけど」「あはは、お金もったいないじゃん」とはそれぞれローシャさんとアーシャさんの言葉でした。


 で、このダンジョンに来たのは、冒険者ギルドの試験の一環だとか。


 このダンジョン自体が大して強い敵が出ない、既に探索が終わっているダンジョンだそうです。そのダンジョンを冒険者ギルドが管理していて、初心者の冒険者は訓練を兼ねてこのダンジョンを攻略しないといけないそうです。


 「……そもそも、姉さんが旅行で不在のあげくにキャラメイクに1週間もかからなければ、もっと早く始められたんだけどね」


 「ごめんよー、ローシャ。やっと有給と振替で長期の休み取れたから前から行きたかった場所がねー」


 「……その休みをゲームに費やす気は……?」


 「ほら、ゲームはいつでもできるけど、旅行は休みが取れないとできないから、ね?」


 流石、姉妹。仲良さそうですね。こう会話がぽんぽんと2人でテンポよく進むのでついつい置いて行かれそうになります。


 「あ、ごめんね。ノエルにはあんまり関係なかったね。ところで私たちはこれから街に戻るけど、どうする?」


 「え、あ、はい。街ですか?」


 確か、公式の世界地図とエルスナードの地図と合わせた時に、この近くに街があるはずです。それを目当てにここに転移したわけですしね。


 名前はレウルザーガ領アルトラントの街。


 ゲーム的には周囲に危険な場所もなく、ゲームを始めたばかりの低レベルの初心者プレイヤーにちょうどいい街だそうです。


 「……嫌でも一緒に来てもらわないと困るけど……?」


 動かなくなったストーンゴーレムから何か回収していたローシャさんが、私の方を見て言いました。


 「元々、街に行きたいと思っていましたから構いませんが、どうしてでしょう?」


 「……さっき説明したけど、私たちは冒険者ギルドの試験でここに来たわけで。本来ならボスのストーンゴーレムを倒してコアを持ち帰るわけだけど……ストーンゴーレムは貴女が倒してしまった。だから、下手すると私たちが試験失敗になるかもしれない。だから、冒険者ギルドで今回の状況を説明してほしい」


 なるほど。確かに、私が倒しちゃったら厳密には2人がダンジョンをクリアしたとは言えない、ということになりますね。


 「そういうことなら、構いません」


 「OKOK。じゃあノエルも一緒に街まで戻ろ。ただ、街に戻るならそのかっこはちょっとまずいなあ」


 私の全身を上から下にじっくりと見ながらアーシャさんが言いました。


 格好……あっ。


 そう言えば、すっかり忘れてました。装備なしなのでTシャツにスパッツ、しかも裸足というラフな格好でしたね。(背中に槍は背負ってますが)

 ……ヴォルフさんも装備無しパンツ一丁で、かつ見た目が人間じゃなくてクマだったからすっかり気にしてませんでしたが、この格好でずっと一緒にいたのは実は物凄い恥ずかしいことだったのでは……。


 うん。過ぎたことなので気にしないことにしましょう。


 「背丈的にローシャの服はちょっと微妙?」


 「……姉さんとほぼ同じ体型だから姉さんの服を貸してあげたらいいんじゃ?」


 「いや、私が街で着る服がなくなるじゃない?」


 「……鎧でいいじゃない。どうせ革だし」


 「ええー? 街で鎧はちょっとね」


 考え事をしていたらアーシャさんとローシャさんで話が進んでいました。


 「とりあえず、私のマントを貸すよ。で、街で冒険者ギルドに行く前に服だね」


 アーシャさんがマントを羽織らせてくれます。くすんだ茶色のマントで雨や寒さを避けるためのものでしょう。とりあえずこれで体を隠せます。


 「……あと、靴ね」


 私の足元を見ながら、ローシャさんが言います。

 裸足なのもすっかり慣れたので忘れがちですね。


 「よし。じゃあ街に戻ろう!」


 「……」


 マントを羽織った私を満足そうに眺めて、アーシャさんが声を上げました。

 ローシャさんは右手を挙げて天井を見上げつつ、何か呟いています。


 「……どうかした?」


 何をしているのか、不思議に思って眺めていたら、ローシャさんと目が合いました。


 「いえ、何してるのかな、と」


 「……ああ、『マーキング』」


 「マーキング?」


 「……うん。私、プレイ日記動画の配信しているから。後で動画ログを探して回収する時にポーズや発言をキーに検索するから、そのための専用の動作」


 「そうなんですね」


 よくわからないですが、そういうものなのだ、と受け取っておきましょう。


 「……大丈夫、ノエルのことはカットする予定」


 「そうですか、ありがとうございます。でも、ローシャさんも日記を書いているんですね。私もです」


 何気なく言った私の言葉に、ローシャさんが食いついてきました。


 「……ノエルも? どこの動画? アドレス教えてくれたら見に行く」


 「動画じゃなくて文章ですね」


 「……ふーん、最近珍しいブログ系? よかったらURL教えてくれたら見に行く」


 「いえ、別に公開はしてませんが。昔からの習慣みたいなものなので」


 ローシャさんに物凄い変な顔で見られました。

 日記書くの、そんなに変ですかね……?

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