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 大陸暦1053年 戦の月 23日



 =B9階=


 速く。とにかく速く攻撃を。


 横に薙ぐ動きじゃ遅いので〈ドラゴンクロー〉の爪による突きをとにかく速く繰り出してはいますが、全部余裕でかわされた上にカウンターで攻撃をされます。


 「このぉっ!」


 時折、〈ドラゴンテイル〉で大きく薙ぎ払う面での攻撃を挟んでみますが、移動速度も速くあっという間に距離を取られてしまいます。背中に羽があるので空中も飛び回りますし。


 「……『なら』っ!」


 こちらの突き攻撃を回避するタイミングを見極めて〈ドラゴンハウル〉!


 回避する動作を硬直で止めて攻撃を当てる!


 ……はずが、〈ドラゴンクロー〉の爪が空を切ります。


 〈ドラゴンハウル〉のアーツを発動させるわずかの時間で〈ドラゴンクロー〉の届く範囲の外まで逃げられたようです。


 まじですか。


 〈ドラゴンハウル〉のクールタイム(再使用までにかかる時間)が過ぎてから何度か試してみましたが、やっぱりこちらの〈ドラゴンハウル〉を発動させようとするのを見てから、ぎりぎり範囲外に逃げられるようです。


 どうしますかねえ……思わず頭を抱えたくなります。向こうの攻撃はこちらにダメージを与えられないので今も攻撃され続けているんですけどね。傍から見ると間抜けな光景です。


 ちなみにこのまま攻撃され続けていたら〈竜闘術〉と〈ドラゴンスケイル〉のレベルが上がるかなあ、とちらっと思いましたが、結構時間がかかりそうな感じなのでやらないことにしました。ボスですけど向こうの方がレベルが低いんですよね。


 とりあえず、攻撃され続けているのは放っておいて、私はキャラクターブックを取り出しました。


 どうするか、考えていることはあるんですが。ただ、やり方がわからないんですよね。なのでシステム的なやり方をGMへ問い合わせることにします。



     ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇



 GMへの問い合わせの返答はわりと早く返って来ました。


 ふむふむ。やり方はそんなに難しくはないようです。


 さて、覚悟を決めましょうか。


 キャラクターブックを開き、私のスキル一覧を表示させます。そしてそこからさらに〈竜闘術〉を選んでアーツの一覧を開きます。


 〈ドラゴンスケイル〉を選択。


 そうするとこういうボタンが空中に表示されます。



 【□ 自動発動の効果をオフにする】



 先頭にある□マークにチェックが入れられるようになっています。


 つまりこのボタンはどういうボタンかと言うと。攻撃に対して自動で発動し防御してくれる〈ドラゴンスケイル〉を発動しなくなるようにするボタンです。



 【■ 自動発動の効果をオフにする】



 オンにしました。


 今まで恐ろしスピードのラッシュから私を守っていた〈ドラゴンスケイル〉の壁が消えます。


 とにかく、頭と顔だけは攻撃を受けないように、両腕を交差してカバーして守ります。


 連続で体に何か針が刺さるような痛みが走ります。


 「〈ドラゴンテイル〉……『だ』っ!!」


 痛みを受けるのと同時に全身に力をこめて、〈ドラゴンテイル〉を発動、と同時に〈ドラゴンハウル〉を叩きつける!


 「……捕まえ、ましたよ」


 剣の女王の刺突剣は私の肩を貫いています。


 そして〈ドラゴンテイル〉が刺突剣を握る女王の腕に巻き付いています。


 「創作でよく見る『自分の体でワザと攻撃を受けて相手の動きを止めて捕まえる』てやつです。上手くいってよかった」


 〈ドラゴンテイル〉を振りほどいて逃げようとしますが、元々〈ドラゴンスケイル〉を貫通できない時点で非力なのはわかっています。逃がしません。


 「もう、逃がしませんよ?」


 〈ドラゴンテイル〉で剣の女王の体をぐいっと引き寄せると、〈ドラゴンバイト〉が大きな口を開きました。



    ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇



 「剣の女王」のカード

 分類:イベントアイテム

 レア度:1

 品質:A

 重量:-

 剣の女王が描かれたカード。



 落ちているカードを拾って、代わりに貨幣の女王のカードを捨てておきます。


 ああ、〈ドラゴンスケイル〉の設定をちゃんと戻しておきませんとね。


 普通の人ならこの剣の女王、どうやって倒すんでしょう?ぱっと思いつくのはパーティで盾役が攻撃を引き受けてる間に部屋全体を範囲に含むような広範囲攻撃で叩きつぶす、ですが。


 壁にもたれて座り込みます。【HP】も【MP】も結構減ったので回復させないとですね。結構疲れました。


 ちなみにキャラクターブック見ましたが、〈竜闘術〉も〈ドラゴンスケイル〉もレベルは上がっていませんでした。よく考えると、〈ドラゴンスケイル〉がレベル上がるのは自分で使った時で、自動発動だけだとスキルやアーツへの経験値って入らないのかもしれませんね。



 大陸暦1053年 戦の月 25日



 =B9階=


 部屋の奥にあった扉から先に進んでいきます。曲がりくねった通路を歩いて行くとまた扉に到着しました。


 扉を開けて中に入ります。部屋と、部屋の真ん中にある像。まあ、だいたいここまでは予想通りですね。


 像は私よりちょっと背が高いくらいの大きさでしょうか。白い髭が立派な老人で王冠をかぶっています。鎧をまとい、腰に剣を帯びています。その剣はいわゆるロングソードと言われるくらいの刃渡り1メートルくらいのごくごく普通の直剣です。そして左手に盾を持っています。


 私が部屋の中に足を踏み入れたことを感知したのか、像が動き始めます。腰の剣をゆっくりと引き抜き、構えます。



 剣の王

 ボス

 レベル:30

 種族:魔法生物

 属性:-

 スキル:〈剣術★〉〈盾術★〉〈状態異常耐性〉



 ……ふむ。スキルが普通、ですね。


 今まで出てきたボスですと剣術以外にそのキャラの特性を示すようなスキルを持っていましたが。


 十剣の騎士は多剣による全方位からの連撃と隠し剣。


 剣の王子は超巨大な剣による防御不可・広範囲攻撃。


 剣の女王は超高速機動。


 剣の王の特性は〈盾術〉を持っているから、防御力でしょうか?


 剣と盾を構えていますが、こちらに向かってはきませんね。


 ゆっくりとこちらから歩み寄って行きます。


 アーツの間合い、私の攻撃が届く距離に到達しました。向こうは剣と盾を構えたままぴくりとも動きません。


 「いきますよ……卑怯とは言わないでくださ……」


 聞いてはいないと思いつつ、話しかけながら大きく息を吸い込んで、最後に大声を上げる準備───つまり、〈ドラゴンハウル〉を発動させる準備をします。


 と、息を吸った瞬間。


 剣の王がすっと私に近づいて軽く盾を私に押し当てた、ような気がしました。


 ものすごい強烈な打撃に吹き飛ばされた私はひっくり返って倒れると勢いでそのまま一回転して床に叩きつけられました。


 何されました!?


 あ、いや。何かはわかります。

 シールドチャージ。上の階でマネキン・クルセイダーも使ったいわゆる「盾で突撃して弾き飛ばす」アーツです。


 何かちょこっと当てられただけのようだったのに物凄い威力です。


 それはそうとして、起き上がらないとまずいです。


 近づいてきた剣の王が剣を突き出して来ます。〈ドラゴンスケイル〉が自動で防ぎますが貫かれ、私の体にも剣の切っ先が刺さります。


 「〈ドラゴンウィング〉!」


 普通に起き上がっている暇はない、と判断。〈ドラゴンウィング〉を発動させると、翼の力で無理矢理浮き上がって空中で体勢を整えます。


 剣の王の斬撃。〈ドラゴンスケイル〉を手動で発動させて防ぐ。


 一撃目は防ぎましたが、二撃目は鱗が斬り裂かれて私の鎖骨の辺りが斬られます。現実なら血が流れ出るところです。


 それでも倒れて転がっている状態からは回復できました。


 それと剣の王の特色も。


 〈ドラゴンスケイル〉を斬り裂かれた二撃目。確かに見えました。腕と手首の返しで小さく3回斬られたはずです。


 けれど受けた傷は一撃。


 もう1度〈鑑定〉を見ます。



 剣の王

 ボス

 レベル:30

 種族:魔法生物

 属性:-

 スキル:〈剣術★〉〈盾術★〉〈状態異常耐性〉



 間違いないですね。


 〈剣術〉ではなく〈剣術★〉。〈盾術〉ではなく〈盾術★〉。


 最初のシールドチャージが軽く当てられただけなのに高威力だったのもそうですね。軽く当てられただけ、ではなく、軽く「連続で」当てられたから、高威力になった。


 剣の王。


 上級スキルと多重発動が特色ですか……!

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