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序盤はおまけ話です。
文字数稼ぎ? なんのことかな?
ゲイザーとは
ゲイザー(睨む者、という造語)とは主にダンジョンの奥深くに住む異形の化け物である。
その姿は完全な黒い球体に巨大な主目と牙の並ぶ大きな口、側面および背面にならぶ小さな副目で構成されている。
彼らは己以外をまったくの無価値と見ており(それは同種のゲイザーも含まれる)、遭遇すると高確率で襲い掛かってくる。
彼らの能力は極めて危険である。
中央の主目は〈封じの魔眼〉と呼ばれ、この視界内に入った者は自動的にスキルおよびアーツが使用できなくなる。戦士系なら強力なアーツと武術系スキルによるモーションアシストが使用できなくなり、魔術師系なら数々の魔法アーツが使用できなくなり、無力化される。
側面および背面の副目はそれぞれ視線に捉えたものに様々な効果を発する魔眼となっている。
〈即死の魔眼〉
抵抗に失敗するとPCは死亡する。
〈分解の魔眼〉
抵抗に失敗するとPCは粒子に分解され、死亡する(即死の魔眼よりは抵抗の可能性は高い)。また装備品および所持しているアイテムは80%+アイテムごとの補正の確率で消滅する。
〈石化の魔眼〉
抵抗に失敗するとPCは石化状態となり、行動不能となる。
〈麻痺の魔眼〉
抵抗に失敗するとPCは麻痺状態になる。移動、体を動かす行為、動作や詠唱を必要とする魔法は使用できなくなる。
〈冷凍の魔眼〉
抵抗に失敗するとPCは冷凍状態となり、行動不能となる。
〈魅了の魔眼〉
抵抗に失敗するとPCはゲイザーに魅了され、ゲイザーの利益を最優先に考え行動するようになる。おおむね味方に襲い掛かることになる。
〈誘眠の魔眼〉
抵抗に失敗するとPCは睡眠状態になる。
以上のように、抵抗に失敗すると即死ないし即行動不能となるものが多い。
ゲイザーは〈浮遊〉能力を持ち、地面すれすれに浮き上がり移動する。移動速度は速くはないが、クエイク系の魔法およびピット系の魔法は効果を及ぼさない。
対処方法
・低レベルの場合
ゲイザーは50レベル以上である場合が多く、自分たちがゲイザーよりレベルが低い時は戦わず逃げるべきである。それでも挑む場合は、盾役に支援魔法・防御魔法を十分に掛けたうえで正面でタゲを維持し、〈封じの魔眼〉の範囲に入らないように回復役が位置を取り、側面・背面から攻撃役が攻撃をする。
この時、回復役および攻撃役は副目の魔眼の攻撃を受けることになるので十分に魔法抵抗力を高めておくことと石化・冷凍・魅了の状態異常への回復手段を十分に準備しておくこと。
弓矢および刺し型の攻撃の場合、副目を潰すことも可能であるので技量に自信があるなら狙いたい。
・高レベルの場合
ゲイザーより10レベル以上自分たちのレベルが高い場合、主目の〈封じの魔眼〉よりも副目の即死攻撃の抵抗失敗による事故の方が危険視される。そのため、全員が主目の効果内に陣取り、そのままアーツを使用しない素殴りで袋叩きにするという方法が一般的に取られる。これは主目の視界内には側面および背面の副目の視線が届かず、魔眼の影響を受けないためである。
ゲイザー自身は同レベルのモンスターと比較すると身体能力は高くなく、噛みつきによる攻撃もあるが強力ではない。そのため、十分にステータスの育った戦士系のPCなら、たやすく殴り殺せるだろう。
───AEC攻略サイト「ミレシャのAEC博物誌」より抜粋
大陸暦1052年 空の月 29日
ゲイザー、有名なモンスターだったようです。
まあ、70レベルだと流石に今の私じゃ相手になりませんし、スキル・アーツを封じてくるとなるとそもそもアーツ頼みの私じゃあ勝ち目がないですから近づかないように注意しましょう。
今度は最初の部屋から左の道を進みます。真っすぐ進んでいくと通路の行き止まりにまたしても巨大な黒い球が。
またゲイザー!?
……と思って身構えたのですが、反応がありません。恐る恐る近づいて調べましたらこちらは本当にただの金属の球のようです。
こっちは本物のローリングストーンの罠でしょうか。
その後、分かれ道を進んで探索を続けると。
通路は複雑に入り組んでいる。
色んな場所に矢印のマークがついたスイッチがある。
2か所床が動く通路がある。動く歩道みたいな感じに乗ると勝手に一方向に進んでいく感じです。
大きな落とし穴が1つある。
そして、L字の曲がり角の部分に床の色が1ヶ所違う場所がありました。
この床の色が違う場所、思いっきり踏んでみるとどうやらスイッチになっているようでわずかに沈みます。そうすると遠くの方で物が動く音がしました。遠くと言っても音が聞こえるほどの距離ですけれどね。
とはいえ、この床は私が乗ってもほとんど動きませんし、かなり重いものを載せないと完全にスイッチを入れるのは無理でしょうね。
何となくこの階層の仕組みがわかってきました。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
戻って、最初の部屋から左に進んだ通路です。この先の行き止まりに金属球があります。
この通路にも矢印マークつきのスイッチがあります。
おそらくとして。
この矢印マーク付きスイッチと動く床の通路を駆使してあの金属球を床の色が違う場所まで運んで乗せたら壁が動いて先に進む通路が現れる、のでしょう。
問題は。
矢印のマークの指し示す方向、今、歩いてきた通路の方角を見ます。
突き当りの壁一面に赤いものが飛び散っています。
可能性その1。このスイッチを入れると私が矢印の方向に吹き飛んで壁に激突死する。
可能性その2。このスイッチを入れると高速で金属球が突っ込んできて私が壁と球に挟まれて死ぬ。
嫌な未来しかない!?
ええい。
今さら死を恐れるほどのものかーっ!
スイッチを入れます。
可能性その1でした。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「ヒントはしっかり見ないとダメですよ」
「それならもっとストレートに表記して欲しいんですが」
「それではヒントとは言えないと思われます」
ダンジョンに入ってからここに来るのもすっかり定番になってしまったのでフェルエさんとのんびり雑談をしつつダンジョン攻略のヒントの話をしていました。
どうせ死んだのでデスペナルティも受けている状態ですしね。
「自分で考えないと謎解きとは言えませんから……あそこは金属の球を動かしている力を考えたらおのずと答えは……と、これは言い過ぎですね。聞かなかったことにしてください」
ふむふむ、なるほど。
もちろんしっかり聞いて覚えておくに決まっているじゃないですか。
さて、復活地点で自分の装備品と所持品を確認します。
【装備品】
[頭]
[顔]
[上半身]
[下半身]
[手]
[足]
[アクセサリー1]ロスフェラードの指輪
[アクセサリー2]グリムレットの王竜珠
[アクセサリー3]女神の腕輪(残り5日)
[アクセサリー4]
【所持品】
骨×57
錆びた剣×1
ダンジョンバットの牙×26
ダンジョンバットの翼×46
ダンジョンラットの牙×28
ダンジョンラットの尻尾×2
ノクターナルの竜珠
針×2
糸×27
布×8
ワームの肉×68
欠けた魔石×51
HP回復ポーション×2
MP回復ポーション×2
食べたり死に戻りでだいぶ減ってますね。
フェルエさんのヒントとこの階層に入る前の「貨幣の王国」について書かれていたこと。
金属球をスイッチを入れて誘導していくのはいいとして。スイッチを入れると矢印の方向に金属を動かす力が働く。そこで金属製の物を装備したり持っていたりすると自分も影響を受けて矢印の方向に吹き飛ばされる。
「ただし、外から金は持ちこまないこと」というのはそのことなのでしょう。
……フェルエさんからヒントもらってないとわからないですよ、こんなの……。
まず真っ先に目につくもの。
さようなら女神の腕輪。
あとアイテムで1本だけ残ってた錆びた剣と針。
これは置いて行くことにします。
骨、牙や魔石は大丈夫かな……ポーションの瓶が判定されたりしないといいのですが。
あと問題は竜珠と指輪。
ノクターナルさんの竜珠は置いて行ってなくなったら嫌ですし、グリムレットさんの王竜珠はそもそもはずせません。ロスフェラードの指輪もはめたまま体が変性したせいか外せないんですよね。外そうと思ったら左手の中指を斬り落とさないといけません。さすがにそこまでは求められてないと思うのですが。
悩んでもしょうがないので、トライ&エラーの精神で行ってみましょう。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
あらためて最初の部屋から出て左側の通路のスイッチの場所です。
さっきはスイッチを入れた瞬間、吹き飛ばされて壁に激突死でしたが。
恐る恐るスイッチを入れます。
思わず目をつむります。
体が吹き飛ばされる様子はありません。
思わずほっ、と息を吐きました。これで、後は正しいルートを計算して実行するだけですね、
と、左手に気配を感じました。
そちらを向くと、結構なスピードで巨大な球が迫ってきています。
あっ。
球にぶつかった瞬間に視界が真っ暗になったのはたぶん優しさですね。
大陸暦1053年 戦の月 2日
金属球の動くスピードも実体験できたところで、いざ本番です。
まあ、正式なルートを計算するのに結構間違いもやらかしたのですが。一定時間階層から離れると最初に場所に戻るようで、おかげでリセットするのに無駄に時間を費やしたのでゲーム内で新しい年になってしまいました。
年が変わると同時に新しいソフトとアカウントの販売、およびver2.0と名付けられた大規模アップデートに伴う長時間メンテナンスがありました。新しいシステムや種族が実装され、新しいプレイヤーが増えているようですが、当面は私には関係がないようです。なにせ人が来るとは思えませんしね、ここ……。
というわけで、事前にスイッチを入れておく場所でスイッチをオンにしておいて、スタートです。
今度は球に押しつぶされないように、スイッチを入れたら脇道に避難しておきます。
球が通りすぎるのを確認したら、次のスイッチを入れに行きます。
この球とスイッチ、スイッチがオンになっている分かれ道では、必ず分かれ道の方に曲がってしまう仕組みになっています。そのためやみくもにスイッチを入れておいても変な場所に入りこんで詰んでしまいます。正しいルートに球を乗せるために適切なタイミングでスイッチをオンにしたり、逆に曲がってしまわないようにスイッチをオフにしたりしないといけないのでなかなか忙しいです。
途中の大きな落とし穴を迂回しつつ(というかこの落とし穴もルートを複雑にするためだけに存在するようなものです)、入り組んだ通路を大回りして行って、無事計算通り、色違いの床まで金属球が到達しました。
球の重みで床が沈み、スイッチが入ります。近くの通路の壁がせり上がり、通路が現れます。
ここまでは計算通りです。
新しく現れた通路の入口まで来ました。
問題なのは。
入口から右手側。巨大な目玉と、にやりと笑ったようないびつに歪んだ巨大な口。
この入口がゲイザーが反応する視界内にあるということです……!
新しい通路を急いで確認します。
真っすぐ、だいたい50メートル。その先に扉が見えます。
私は思いっきり走り出しました。
スキルもアーツも封じられるので、いつものように〈ドラゴンウィング〉で飛んで逃げることができません。
自分の敏捷度の低さが恨めしいぃぃぃ!
10メートルくらい走ったところでゲイザーが通路に入って来ました。
扉!扉まで逃げ込んで閉めてしまえばたぶん追ってこないはず!
〈罠察知〉に反応あり。
嫌あああああああ!?
何か床の色が違う部分があるのに気づきました。
飛び越せるか。
落とし穴に落ちても、ゲイザーに追いつかれても死にそうだけど、とにかくジャンプ!
走り幅跳びの要領で色違い床を飛び越えます。
ちょっと着地に失敗して転がったけど、無事飛び越えた!
起き上がって走る。
ゲイザー、ちょっと浮いているので落とし穴は回避。ずるい!
扉まで到着。
取っ手、ない。ドアノブ、ない。単純に押しても開かない。
まじか。
よく見るとボタンのようなものが扉についてます。
ああ、これ押したら開く自動ドアタイプ。
押したら両側に扉がスライドして開きます。
中に飛び込んで振り返ると。
ゲイザーの恐ろしい笑い顔がすぐそこに。
うわ。
ぴしゃん、とすごいスピードで扉が閉まりました。
助かった……。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
何とかゲイザーから逃げ切って先に進むと、大きな扉がある場所に出ました。
そして何か金属でできたブリキの人形のようなものがそばに立っています。
「ヨウコソ、貨幣ノ王国ヘ!ユックリ楽シンデ、稼イデ行ッテクダサイネ!」
機械音声みたいな声ですが、人形がしゃべりました。
というか言ってることが理解できる!今まで、銘板の文章はまったく読めなかったのに……ただ、どういう言語で喋ってるかはよくわからないのですが。
人形の言葉とともに大きな扉が開いたので、中に入ってみます。
中は大きな部屋で、同じようなブリキの人形モドキが何体もいて、テーブルがいくつか並べられています。
そのテーブルの上にあるのは……ルーレット、トランプ。
向こう側にあるのは明らかにスロットマシーンです。
これって……カジノ?




