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VRMMOだと食事ネタは定番ですよね(2回目)。

 大陸暦1052年 雷の月 21日



 とりあえずダンジョンとノクターナルさんとの訓練の日課が終わって、グリムレットさんのところに向かいました。〈ドラゴンウィング〉のレベル上げも兼ねています。


 今日はなんとか途中で力尽きることなくたどり着けました。今の【MP】と〈ドラゴンウィング〉の消費を考えるとレベル6あれば何とか、というところのようです。


 「こんにちは」


 いつもの場所に、いつものようにグリムレットさんはいました。


 「ノエルか」


 わりとこうログインしたら毎日来ているので、グリムレットさんも私が来ても特に驚かなくなりました。

 だいたい、いつも山頂から広がる景色を見ながら、わりとどうでもいいことを話するのですけれど。


 「そう言えば、グリムレットさんはいつもここにいますけど、食事とかどうしてるんです?」


 「私は食事はほぼ必要ない」


 ちょっとびっくりな答えが返ってきました。


 「魔竜とは本質、魔力を喰って生きるのだ。魔力を取り入れられるなら何でもいい。そう、大気でもな」


 「でも、下で竜たちは狩りといって獲物を獲って来てたような」


 「命とは最も純粋で濃い魔力だ。まだ若い竜は魔力を体内に取り込む効率が低いから、生きている者を喰う必要がある。年を経るほど魔竜は力を増し、魔力の吸収もより効率的になるので喰うものは何でも構わなくなる」


 「便利なのか、美味しいものを食べられないのはもったいないのか」


 グリムレットさんが私の言葉に笑いました。


 「より濃い魔力なら、人間が言う美味を感じる。だから年を経ても生きる者を襲い喰らう魔竜は多いよ」


 「じゃあ、グリムレットさんもできるなら狩りに行きたい?」


 「私はなるべくここを離れられないからな」


 「そっか。じゃあいつか私が狩りに出て獲物をとってくるというのもいいかもですね」


 「先の長そうな話だ」


 否定はできないですけど、それはひどい。






 大陸暦1052年 土の月 13日



 フェルエさんは死に戻った時は何気なくヒントをくれるんですよね。


 まあ、好きで死ぬ人はあんまりいないでしょうから、死んだ、というのは何かしら不都合が生じたということです。そのままそれが解決しないなら、ゲームの世界からそのプレイヤーはいなくなってしまう、フェルエさんとしてはそれは避けたいのでしょう。


 何度か挑んでみたものの、まったくモンスター相手に勝てる見込みが立たず、レベル上げが行き詰まったので、フェルエさんが言っていたことを思い出して以前の特に何もなかったような日の自分の日記を読みなおしていました。


 あー、そういえばこんな話もしたなあ、という中でちょっと気になる内容を見つけました。


 竜の食事、という話です。


 グリムレットさんいわく、魔竜とは魔力を喰う種族である、と。魔力とはいろいろな物が普遍的に持っているもので、魔竜はそれを喰って魔力を体に取り入れることができるそうです。


 若いほど、この取り入れる能力が未熟で、生きている獲物など他の命を直接取り入れたりする必要があるそうですが、年を経てくると植物や普通の肉、あるいは土やら石とか水とかでもいけるようになり、グリムレットさんくらいになると大気中に漂う魔力を吸収して生きていけるそうです。


 霞を食べて生きる仙人のようなものですね。


 で、どういうことかといいますと。


 私は現在「人竜」(マン・ドラゴン)という種族になりました。これは竜に分類されます。


 私はまだ若いですけれど、本当に若いですけど、大事なことなので2回言っておきますけど、グリムレットさんの竜珠を継承してますから、それなりに竜としての能力や素質は高いのではないでしょうか。


 つまり何が言いたいかと言うと。


 食事、いわゆる【空腹度】と【渇水度】の回復について、常識にとらわれてはいけないのではないでしょうか。


 具体的に言いましょう。


 今、私の所持アイテム欄には以下のものが入っています。ここに逃げ込む前にダンジョンでレベル上げをした時に集めたアイテムの数々。


 骨×88

 錆びた剣×88

 ダンジョンバットの牙×88

 ダンジョンバットの翼×93

 ダンジョンラットの牙×92

 ダンジョンラットの尻尾×87


 もしかして、私、これを食べて【空腹度】【渇水度】の回復ができるのでは……?



      ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇



 とりあえずアイテム欄から骨を1個取り出しました。


 だいたい成人男性の大腿骨くらいの大きさです。ゲームですから具体的にどこの部位の骨、というのはなくていわゆるイメージの骨です。


 まず骨を取り出したのは魔力を帯びているという〈鑑定〉情報があったからで、一番上手くいきそうに見えたからです。


 とはいえ、現実でこんな骨をかじったりはさすがにしません。


 そもそも骨をバリバリ噛み砕けるほどの顎の力は現実では持っていません。


 まあ、ダメ元です。やるだけやってみてダメなら考えるでいいですよね。


 ダメだった場合はいかにして敵を倒すかを考えないといけませんが……もっとも、これが食べられたとしても敵を倒す方法は考えないといけませんけれど。


 はっ……ついつい思考がわきにそれて無意識のうちに食べることから逃げていました。


 逃げてはだめですね、行きましょう。


 ……。


 思いきって、かぶりつきました。


 口の中にほんのり……塩味?


 そのまま口に力をこめると、ばりっと音がして噛み砕けました。


 ちょっとびっくりです。いえ、私が現実でも骨を噛み砕けるよような豪快な人間だと思わないでくださいね?ゲームとしての仕様なのでしょう。


 うーん、これは例えるなら……限りなく薄味でめちゃくちゃ固いおせんべい?


 お世辞にも美味しいものとは思えませんが、食べられないというほどのものではないですね。そもそも味も感じるといはさすがVRというところでしょうか。


 そのままアイテムが消費されるところまで食べましょう。


 【空腹度】60/100 【渇水度】58/100


 ステータスを確認すると、おお、【空腹度】が3回復しています!


 骨1個につき【空腹度】が3回復するようです。ただ【渇水度】は回復しないようですね。


 となると。


 牙、はどちらかというと骨と同種な感じです。


 ダンジョンバットの翼とダンジョンラットの尻尾、これは生ものぽいです。干物かもしれませんが。


 ダンジョンラットの尻尾を1個取り出してみました。


 いわゆるネズミの尻尾ですね。ネズミの尻尾を現実で触ったことがないので、触感がリアルかどうかはわかりません。


 骨と違って、いや骨もたいがい口に入れるのに勇気はいりましたけど、食べるのに躊躇われる見た目ですけれど、思いきって口の中に入れてみましょう。


 やっぱりほのかに味がします。


 もぐもぐもぐ、と噛んでみますが、歯ごたえと言うか……例えるなら味がほとんどしなくなったガムがこんな感じでしょうか。ただ吐き出さずに飲み込まないといけませんけれど。


 【空腹度】59/100 【渇水度】57/100


 こちらは【空腹度】【渇水度】がそれぞれ1ずつ回復するようです。


 続けてダンジョンバットの翼を食べてみました。尻尾と変わらない味と食感で、同じように【空腹度】【渇水度】が1ずつ回復します。


 とりあえずこれで餓死の危機はいったん回避できそうです。


 尻尾と翼はそれぞれ80個以上残っていますから、当分食料の心配はいらないですね。


 まずは現在の分を回復させておこう……とひたすら尻尾と翼を食べ続けていると。



 【〈竜の胃袋〉のスキルを習得しました】



 急にシステムメッセージの音声が流れました。


 んー、何のスキルでしょう。



 〈竜の胃袋〉

 悪食の竜の胃と消化器官を持つスキル。このスキルを持つ者は竜と同じくあらゆるものを喰らい、そこから魔力を吸収し命の糧とすることができるようになる。【空腹度】【渇水度】回復率上昇、食事可能な種類が増加する。



 どうやら通常では食料にならないアイテムをもりもり食べていたことでスキルを覚えたみたいですね。見た感じ、悪くない効果のように思います。


 では、引き続き尻尾と翼を食べて回復を。


 「何これ!?」


 ダンジョンラットの尻尾を口に入れたら、思わず声が出ました。


 今までほとんど味がなかった尻尾に濃厚な甘さを感じます。食感もさっきまではひたすら噛み続けてもなくならないので我慢して飲み込むような感じだったのが、口の中でとろけるようになっています。


 これ、あれですね。キャラメルです。


 続いてダンジョンバットの翼を口の中に入れてみます。こちらはぐにぐにとした歯ごたえにさわやかな甘みです。いわゆるグミキャンディかな。


 これ、もしかすると〈竜の胃袋〉スキルの効果!?


 食事可能な種類が増加、というのは単に食べることができるという意味ではなく「食べておいしく感じる物が増える」ということなんでしょう。


 ちなみに骨を食べてみると歯ごたえもちょうどよくなって、普通に固焼きのおせんべいでした。ダンジョンラットとダンジョンバットの牙はあられかな、これ。


 とりあえず【空腹度】と【渇水度】が0になるまで食べまくりました。


 〈竜の胃袋〉、いいスキルを覚えられましたね。



 ちなみに錆びた剣は食べると苦かったです。ただ、まずいのではなくて癖のある味で好き嫌いがわかれる感じだと思います。ゴーヤをイメージしてもらえるといいかも。私は結構好きでした。


日記「らしさ」を使った回想シーンですが、逆にわかりづらいかな?

2章は表現も色々研究中……。

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