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 大陸暦1052年 土の月 12日



 【空腹度】63/100 【渇水度】58/100


 空腹度が100になると【SP】に、渇水度が100になると【HP】にダメージが入るようになります。〈HP自動回復〉〈SP自動回復〉があるので座っていたら餓死は防げそうな気もしますが、その場合、一生座っていないといけないので意味がないですね。


 手持ちのアイテムに食べ物がないので、〈ドラゴンバイト〉による空腹度と渇水度の回復は必須です。となると、〈竜闘術・王魔★〉のレベルをとにかく3に上げるのが急務なわけで。


 戦闘してレベル上げするしかないですね。頑張りましょう。


 この周辺ならぐるっと通路を一周していればボーンゴーレムが、小部屋に入ればダンジョンラットとダンジョンバットがいます。敵の出現位置がわかっているのは楽ですね。


 では、通路に出てさっそくボーンゴーレムから倒していきましょう。



      ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇



 「……」


 「……」


 私の目の前にはフェルエさんがいます。お互いに無言です。



 と  て  も  気  ま  ず  い  で  す。



 いや、だってしょうがないじゃないですか。


 思いっきり喧嘩して、文句言って、最後は新たなる決意と旅立ちの雰囲気で別れたのがだいたい現実(リアル)で30分前です。


 そりゃ、死んだらフェルエさんの元に飛ばされるのはわかるのですが。まさかこんなに早く再会することになるとは思ってなかったんですよ。


 「……し、死すべき運命の分岐路に立つ、異界の魂よ。あ、あなたには、ふ、2つの選択肢が、あります。こ、このままあなたの、死を世界の歴史に刻むか、し、死の運命をなかったことにするか、です」


 思わず吹き出して笑ってしまいそうになる気持ちはわかります。とてもわかります。が、余計に失礼に見えますよ、フェルエさん。


 まあ、死んでしまったのはちょっとした油断です。今まで〈ドラゴンスケイル〉の自動防御でボーンゴーレムの攻撃はあってなしがごときだったのです、が。


 〈ドラゴンスケイル〉が相手の攻撃にあわせて自動で発動するのは5レベルから。

 今の私の〈ドラゴンスケイル〉のレベルは1。


 すっかり仕様を忘れていてボーンゴーレムの錆びた剣にばっさり斬られて死にました。


 あ、でも今の私ってスキルとアーツのレベルが全部1なんですよね。ボーンゴーレムのレベルが11~13。小部屋に出現するダンジョンラットとダンジョンバットのレベルが7~9です。


 最初にダンジョンに入った時は〈竜闘術〉が15レベルでアーツはそれ以上のレベルでした。なので全然苦戦することなく倒せていたのですが。


 あれ?もしかして、私、やばい?


 敵のレベルは強さの目安としてプレイヤーの戦闘系スキルとアーツのレベルの平均が同じなら互角です。早急にレベルを上げないと【空腹度】と【渇水度】がたまって死にかねないのに、その戦闘自体に、今の私からだと敵が強すぎてそもそも勝てない……?


 「……お悩みですか?」


 「あ、いえ」


 フェルエさんの声で我に返りました。ちょっと先行きの暗さに集中して考え込みすぎていたようです。


 「そうそう。進化おめでとうございます」


 「すごく嫌味に聞こえるのですが……」


 「気のせいですよ」


 でしょうか。まあ、自分でも過敏な反応しすぎな気は否めません。レベルが下がったせいですね、うん。


 「この世界では貴女は人ではなく竜となりました。竜がどのように暮らしていたか、短い間であっても貴女は直に見知ったはずです。なら、貴女の悩みを解決する糸口も、そこから自ずと見えてくると思いますよ」


 「そうですか」


 とりあえず復活しましょう。



      ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇



 デスペナルティは一定時間ステータスの減少、所持品をランダムに失う、スキルに蓄積されていた経験値の減少です。一番最後は今はあまり関係ありませんが、所持品をランダムに失うは怖いですね。ただストックが丸ごとなくなるのではなく数がちょっとずつ減るだけで済むようです。


 ステータスの回復はゲーム内で6時間(現実だと2時間です)。回復したら、油断せずにリベンジです。


 目の前から歩いてくるボーンゴーレム2体。〈鑑定〉を使って見てみます。



 ボーンゴーレム

 種族:魔法生物

 レベル:11

 属性:-

 スキル:-


 ボーンゴーレム

 種族:魔法生物

 レベル:13

 属性:-

 スキル:-



 ちょっと強めとちょっと弱めのコンビですね。まずは弱いレベル11の方を倒すのを目標にしましょう。


 近づいてくるのを待ち構えて〈ドラゴンクロー〉で殴りかかります。攻撃を受けてひるみますが、あまりダメージにはなってない様子です。

 13レベルの方のボーンゴーレムが斬りかかってくるので〈ドラゴンスケイル〉を手動で発動させて受け止めます。が、そのまま斬られて結構なダメージを受けます。だいたい私の【HP】が5分の1ほど減りました。


 2体はそんなに速くない動きで錆びた剣を振り回して来ます。


 ……これ、防ぐより避ける方がいいかもしれませんね。結構、ダメージを受けるみたいですし。


 相手の動きは十分に見えています。


 剣を振り下ろすのにあわせて、一歩後ろに下がります。


 もう1体がさらに剣を横なぎに振るってくるので、さらに下がります。


 足がもつれます。バランスが崩れました。尻もちをつきます。


 ちょ、待って。容赦なく相手が斬りかかってくる!?〈ドラゴンスケイル〉!?


 〈ドラゴンスケイル〉で受ける。斬られる。受ける。斬られる。


 ……は、速く立ち上がらないと。


 〈ドラゴンスケイル〉で受ける。斬られる。受ける。斬られる。



      ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇



 「死すべき運命の分岐路に立つ、異界の魂よ。あなたには2つの選択肢があります。このままあなたの死を世界の歴史に刻むか、死の運命をなかったことにするか、です」


 ……慣れないことをするものではない、というのはよくわかりました。


 そもそも、ノクターナルさんと模擬戦と訓練をしていた時も、基本、私は足を止めて戦っていました。


 相手の攻撃をさっ、と避けるとか私にはまず無理なのです。


 ええ、攻撃は見えています。ただ、こう、それを体を動かして避けようとしているうちに、次はどう動けばいいかがだんだんわからなくなってパニックになって逆に動けなくなっちゃうんですよね。


 「戻ります!」


 「了解しました……では、よき運命を」


 というわけで復活地点で復活しました。


 ちょっと考え方を変えましょう。


 通路を歩いているボーンゴーレムは必ず2体1組でいます。レベルは11~13。私のスキルとアーツが1レベルであることを考えると、とても強敵です。


 逆に通路にある扉から中に入れる小部屋ではダンジョンラットかダンジョンバットが出現しますが、これはレベルが7~9。ボーンゴーレムよりはやや弱いです。こちらと戦う方が得策かもしれません。


 というわけで、復活地点の小部屋からちょっとだけ扉を開けて、通路の様子をうかがいます。


 ボーンゴーレムが通りすぎるのを確認して逆回りで通路を走って、小部屋に飛び込みます。


 黒い靄のような魔力が集まって、敵が出現します。


 出てきたのはダンジョンラット。数は1,2,3,4,5。


 〈鑑定〉で見たレベルは7、8,8、9、9。



 あっ。



 そういえばダンジョンラットやダンジョンバットはだいたい3~5匹ずつ出てくるんでしたね。


 一斉に襲い掛かってきました。



      ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇



 「死すべき運命の分岐路に立つ、異界の魂よ。あなたには2つの選択肢があります。このままあなたの死を世界の歴史に刻むか、死の運命をなかったことにするか、です」


 確かに1発あたりのダメージはボーンゴーレムより低かったです。


 ただ、純粋に相手の手数が多すぎました。あと、ダンジョンラット、毒を持ってたんですね。前は全部〈ドラゴンスケイル〉が勝手に防いでくれてたので気づいてませんでした。


 「……大丈夫です?」


 フェルエさんが心配そうに聞いてきます。


 「大丈夫です!」


 さっきは最大数出現して、運が悪かったですね。何回かやってたらいけるでしょう。


 「じゃあ、戻ります!」


 「了解しました……では、よき運命を」



     ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇



 「死すべき運命の分岐路に立つ、異界の魂よ。あなたには2つの選択肢があります。このままあなたの死を世界の歴史に刻むか、死の運命をなかったことにするか、です」


 2回目の挑戦でダンジョンバット3匹に翻弄されて、死に戻ってきました。

 空中を自由に飛び回って襲ってくる相手を攻撃するのって意外と難しいのだと知りました。



 グリムレットさん……みんな……せっかくダンジョンに逃がしてくれたのに、私、いきなり詰んでるかもしれません……ぐすん。


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