表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/102

21

戦闘シーンは難しいですね。面白く書ける人は尊敬します。

 大陸暦1052年 雷の月 12日



 今日もいつもの訓練……ではありません!私もちょっと気合が入っています!


 なぜなら、私の目の前にいるのはいつものノクターナルさんではなく赤毛の少年──以前、ログアウト中の私をぶっ飛ばしてくれた赤竜のヘイズ君だからです。見た目が自分より年下だから君づけで呼んでますけどドラゴンとしては幼いだけで私より年上なんですけどね。


 そして私たちを観戦しているのが4人……サルカンドラさん、ノクターナルさん、ヴィリジットさん、そして初めて会う赤毛の長身の男性です。この人の名前はフラムリングさん。なんとヘイズ君のお父さんの赤竜だそうです。


 しばらくヴィリジットさんと外に出ていたそうですが久しぶりに戻ってきたということで、つまり今回の模擬戦は、ヘイズ君の成長度合いをお披露目する場というわけです。


 そのせいか、ヘイズ君、かなり張り切ってる様子。


 他の〈人化〉できる魔竜ですとヘイズ君が相手にならないので、私が抜擢されたわけですが……とは言っても私もヘイズ君「には」負けたくないのです。なにせ〈竜闘術〉を使う魔竜の中では私に一番実力が近いのがヘイズ君ですから、せめてヘイズ君と互角くらいではありたいのです。もっとも、私のアーツのレベルだとヘイズ君の〈ドラゴンスケイル〉を突破できず、有効なダメージを与えられないのですが………まあ、〈ドラゴンスケイル〉のアーツのレベルは高いから頑張れば攻撃を受け止めるのはできますよ。


 彼我の距離、だいたい10メートル。ヘイズ君はいつでも始めろ、と言わんばかりに右腕をぐるぐる回しています。


 「じゃあ、あくまで模擬戦だから、ノエルの攻撃は私がポイントで判断するからね。ヘイズはちゃんと防御しなきゃだめだよ」


 審判役のノクターナルさんがヘイズ君に注意をしています。私の攻撃はノクターナルさんが当たり具合を見て「相応の威力なら有効だったかどうか」を判定してくれるルール、ですが。


 あ、それに頼るつもりは最初からないです。ガチで勝ちに行きます。


 「始めっ!!」


 ノクターナルさんが手を挙げます。


 「行くぜっ!」


 ヘイズ君が勢いよく駆けだしました。私は迎え撃つ形で動きません。ちゃんと防御しないと駄目、と言われてた割には隙だらけですね。


 〈竜闘術〉の基本というべきアーツ〈ドラゴンスケイル〉。これは5レベルになると相手の攻撃に「自動的に」発動し、相手の攻撃を防ぐ最小限の大きさの鱗を形成します。その堅牢さこそが〈竜闘術〉の強みと言えます。

 これを攻略するには、竜鱗の防御力を上回る打撃力を叩きつけるか、竜鱗が防ぎきれない広範囲の攻撃を浴びせるかがセオリーです。

 私の使える攻撃手段は〈ドラゴンクロー〉〈ドラゴンバイト〉〈ドラゴンテイル〉。レベル差でヘイズ君の〈ドラゴンスケイル〉を上回るパワーはなく、攻撃範囲で言うと〈ドラゴンテイル〉の攻撃はリーチが広く、薙ぎ払えば広い範囲を巻き込めますが、竜鱗1枚で止められます。


 つまり、セオリー通りでは、私はヘイズ君に傷1つつけられません。本来なら。


 「あ、った!?」


 小さく呻いて、全力で突撃してきたヘイズ君の足が止まりました。


 私が足元に作った〈ドラゴンスケイル〉の黒鱗に足のすねをぶつけたからです。


 自動で発動する(私にとっての)無敵の〈ドラゴンスケイル〉を突破する方法その1。


 「障害物にぶつかる」ことは、攻撃と見なされない。


 〈ドラゴンスケイル〉自体は相手の攻撃を防ぐ盾であり壁。それを置いておく。

 それにぶつかることは攻撃と見なされないため、ヘイズ君の〈ドラゴンスケイル〉は発動せず、激突のダメージは、受ける。


 〈魔力操作〉スキルを覚えて、魔力を操ってより遠くでアーツを発動できるようになったからこそ、できる技です。


 「くっ、このっ!」


 とは言っても、すねをぶつけるのは涙が出るほど痛いでしょうが致命的というわけではありません。ヘイズ君も1度は足が止まりましたが、また距離を詰めようと駆け出します。

 そうですね、そこは私の魔力は届きますけど、〈魔力操作〉を覚えてないヘイズ君の攻撃は届きませんから。


 「いてぇっ!?」


 もちろんそうくるのは計算していましたから、あらかじめ〈ドラゴンスケイル〉を足が出る場所に置きなおしています。すねへの激突、2回目。これで足が完全に止まりました。


 「〈ドラゴンクロー〉!」


 私の魔力が黒い竜の鉤爪から握り拳へと変わり、ヘイズ君へと殴りかかります。もちろん、これは自動で発動する〈ドラゴンスケイル〉に受け止められます。


 無敵の〈ドラゴンスケイル〉を突破する方法、その2。


 「触る」という行動では〈ドラゴンスケイル〉は発動しない。


 握り拳を作っていた竜の「手」の指が開くとそのままヘイズ君に触れます。そして、魔力で指を操作し、服の襟を掴む。


 〈ドラゴンスケイル〉の発動条件はおそらく一定以上の威力、なのでしょう。でないと何に対しても発動してしまうなら、日常生活にも支障をきたします。だからそっと優しく触れるなら、発動はしない。


 そして〈ドラゴンクロー〉のアーツ。これは名前を見ると「爪」を出現させるアーツに見えますけれど、拳を握って殴ることもできます。つまり本質は「爪」ではなく「手」なんですね。だからこうして指を動かして「掴む」ことができる。まあ、〈ドラゴンクロー〉で「掴む」のはノクターナルさんの得意技で、私も散々やられたんですけどね。


 〈魔力操作〉スキルを覚えて初めて、触るように動かしたり、掴んだりできるようになりました。ノクターナルさんが覚えさせた理由がとてもよくわかりました。これは必須です。


 〈ドラゴンクロー〉にヘイズ君の襟を掴ませたまま、間髪入れずに〈ドラゴンテイル〉のアーツを発動。目標は足です。〈ドラゴンスケイル〉に防がれますがかまいません。そのまま竜鱗ごと両足に巻き付かせます。

 そのまま〈ドラゴンクロー〉で掴んだ襟を後ろに押して崩し、絡みつかせた〈ドラゴンテイル〉を手前に引くような形でヘイズ君の足を刈る。


 ふわり、とヘイズ君の体が宙に浮き、次の瞬間、地面に叩きつけられました。


 ふぅ、上手くいきました。


 名付けて「ノエル流〈竜闘術〉式なんちゃって大外刈り」


 ノクターナルさんは私の足に〈ドラゴンテイル〉巻きつけると力づくで引きずり倒してしまうんですけどね。それにヒントを得つつ、私にはそんなパワーはないので、柔道なんかやったことないですが、ネットで原理とかけ方を調べてやってみました。上手くいってよかったです。


 が、そんな場合ではありません。


 大外刈りは現実だと受身を取れないと後頭部をぶつけて危険な場合もあるそうですが、今回は下はやわらかめの草と土です。綺麗に背中から落としましたけど、それで勝った、と言えるのは一本もらえる柔道と土をつけたら勝ちの相撲ぐらいです。


 相手がまだ戦えるなら、とどめ、刺しませんと。


 私は急いで走り寄りました。運動は苦手ですが、ヘイズ君が衝撃から立ち直って起き上がる前にマウントポジションを取るくらいは、できます。


 ヘイズ君の〈ドラゴンクロー〉はこちらの〈ドラゴンクロー〉で迎撃し、抑え込みます。


 ゆっくりと優しく、でも速く。〈ドラゴンスケイル〉が発動しないように。自分の手を伸ばし、右手で左襟を、左手で右襟を掴む。

 ヘイズ君の両腕を〈ドラゴンテイル〉で縛り上げ、そのまま腕に力を籠めます。

 ネットで調べたもう1つの柔道技、投げた後のこの状況を想定し、とどめを刺すための技。


 突込絞。


 このまま絞め落とすことができれば、私の勝ち──。


 「そこまで!」


 ノクターナルさんの声が響いた。


 「うん、ノエルがあそこまでやるとは思ってなかったよ。『引き分け』でいい?」


 優しく、肩に手が置かれました。


 「……いえ」

 

 腕の力を抜き、大きく息を吐いて私は答えました。


 「……私の負け、ですね」

 

 地面に倒れるヘイズ君の目は鋭く赤く輝き、口元には小さな炎が揺らめいていました。


      ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇


 「あれはノクに教えてもらったのかい?」


 観戦していたフラムリングさんが声をかけてきました。


 「発想と言うか、戦い方を工夫することはノクターナルさんを見て覚えました。今日のは今の実力で本気で勝ちにいくために、自分で考えて調べました。ダメですね……〈ドラゴンブレス〉を失念してました」


 〈ドラゴンブレス〉


 〈竜闘術〉の高レベルアーツであり奥義とも言うべき技。竜のブレスを再現するそれは広範囲に魔法ダメージとブレスの種類による付随効果を発生させます。


 私は使えないんですよね。レベルが足らないのもありますけれど、たぶん、私は黒竜なので覚えないみたいです。ノクターナルさんも使えないそうですし。代わりに他の攻撃や防御のアーツの威力が高いそうですが。


 もちろんヘイズ君は使えます。あの体勢と状況、〈ドラゴンブレス〉吐かれたら防ぎきれません。体の動きを封じても、〈ドラゴンブレス〉のアーツなら使えますしね。


 つまり。最初から私の作戦負けというわけです。


 「ノクもたいがい不思議な戦い方をするが、〈竜闘術〉においては見習うべきところはある。あれは人間の武術とやらに傾倒していたが、君の戦い方も元人間が故かな?」


 「……どうでしょう。そう、かもしれませんね」


 「まだ君は30数歳、しかもずっと眠っていたのだろう?私たちから見れば幼子パピーと変わらない。それがあそこまで戦えるなら大したものだよ」


 優しく頭を撫でられるのが、ものすごく子供扱いなのですが、あんまり気にはなりませんでした。


 というか。


 あー、悔しい!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ