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多少、グロテスクなシーンがあります。ご注意ください。

 大陸暦1052年 雷の月 9日



 というわけで、目指せ〈魔力操作〉スキル取得、です。


 「まず〈魔力操作〉とは何か、だけれど、簡単に言ってしまえば『魔力』を『思い通りに動かす』ためのスキルですわ。〈魔力知覚〉はもう持ってるみたいだから、自分を覆う魔力は認識できていますわね?これを動かすのだけれど、これは体の中の魔力の余剰分が外に出ているものだからそう簡単に動け、と動かせるものではありませんわ。例えるなら、自分の皮を自力で動かそうというようなものですわね」


 なるほど……と思いつつ、疑問が。


 「〈竜闘術〉の訓練の時に、〈ドラゴンスケイル〉のアーツで魔力を操作して最適な大きさの鱗を作りましたけど、あれは〈魔力操作〉じゃないんです?」


 一番最初に〈ドラゴンスケイル〉の扱い方を教えてもらった時に、最適な大きさにするために魔力を感じながら、ちょっとずつ鱗を創った記憶があります。あれは魔力を動かしてたと思うんですが。


 「それは魔力を動かしているのではなく、〈ドラゴンスケイル〉というアーツを操作した結果、魔力が動いただけですわ。だから〈魔力操作〉の習得にはカウントしませんの」


 なるほど。アーツの操作、という扱いになってしまって、〈魔力操作〉に関しては直接魔力を動かさないといけないんですね。


 「じゃあ、どうやって〈魔力操作〉を覚えるかと言うと、ようは外から魔力を動かして、魔力が動く感覚を覚えるのですわ」


 と、ヴィリジットさんはとん、と足踏みをします。すると、足元の地面がさーっと砂に変わりました。何かの魔法でしょうか。そしてそこに思いっきり自分の右手を突っ込みます。


 「よく見るといいですわ。こうして流動体の中に自分の魔力を入れ、周りを動かす。すると魔力がつられて動きますから、その『魔力が動く』という感覚を掴めば、おのずと魔力を動かせるようになるわけですわ……今は、私が魔力で砂を動かしていますけれどね」


 そう言うヴィリジットさんの右手を中心に砂の渦がぐるぐると回っています。


 「ただし、これをするには魔力の属性が大事になるのですわ。自分の魔力と同じ属性の物でないと魔力が動かない……火属性なら炎、水属性なら水、風属性なら大気、土属性ならこうして砂がいいのですわ。泥でもいいのですけれど、泥は土と水の複合なのでやや効率は落ちますわね」


 なるほど。で、私の魔力の属性とは何でしょう?

 その問いにヴィリジットさんは目線をそらすとすまなさそうに言いました。


 「ノエルはグリムレット様の魔力を受けて竜化したから当然『黒竜』ですわ……つまり、属性はないですわね」


 「属性がなかったらどうなるのでしょう?」


 自分と同じ属性の物でないと魔力が動かない、と言ってましたが。魔力が動かないのでしょうか。


 「属性に合うものがないので魔力の動く度合いがすごく少なくなりますわね。だから、感覚をつかむのにとても時間がかかりますわ。黒竜が魔力の扱いが苦手な所以ですわね」


 うわー……これは大変そうですね。


 「黒竜は自分の魔力を身体の強化に使っているんだよね。だから魔力に属性がなくて、外に出ていく魔力が少ないんだ。ま、代わりにどの竜よりも高いパワーとスピード、タフネス、それに防御力の高い最硬の鱗があるんだけどね」


 ノクターナルさんが苦笑いして付け加えました。

 つまり、黒竜だけ他の竜と違って、魔力の使い方が違う、ということなんでしょうね。


 ん? 身体強化?


 「じゃあ砂を使ってやりますわね。私は土属性の緑竜ですから、砂を動かす感覚は教えやすいはずですわ。まずは手を砂の中に……」


 「あ、ちょっと思いついたことがあるんでやってみていいですか?」


 上手くいけばもしかすると、簡単に〈魔力操作〉を覚えられるかも。


      ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇


 まず、以前、〈魔力知覚〉を覚える時にやってもらった「魔力を流し込む」というのをノクターナルさんにやってもらいます。鼻血は出さないでくださいね。

 自分の体内の魔力は感じることはできませんが、流し込まれた他人の魔力なら、体の中にあっても感じることができるのは〈魔力知覚〉を覚えた時の通りです。


 だいたい右手の指先から上腕部くらいまで、感覚としては腕の中と周りにクッションを詰めてるような感じがします。


 で、その魔力を感じた状態で魔力が外に逃げないように意識しながらゆっくりと指を動かしてみます。


 1本ずつ指を握りこんでいき、グーになると今度は1本ずつ指を開いていく。

 うん、指の動きに合わせて、魔力が動いているのが感じられますね。それを何回か繰り返しながら、今度は手首をぐるぐるとまわしてみます。


 十分に手と腕の動きに合わせて魔力が動いたのを確かめたら、今度は中の魔力を手の動きと同じように動かしてみましょう。

 1回目。動きません。まあ、そんなに簡単にはいきませんね。もう1度、実際に指を動かしてみます。

 2回目。動きません。ただ、1回目と比べるとふわっとした魔力の中に神経が通っているようなそんなイメージがわきます。自分の体と違って、魔力の柔らかい感覚からぬいぐるみの手を動かしてるような気持ちになりますね。

 3回目。ん、手は動かずに、魔力だけが動いた!


 【〈魔力操作〉のスキルを取得しました】

 【〈魔力奪取〉のスキルを取得しました】


 アナウンスが聞こえたのと同時に、太いゴムが弾けるようなぶちっ、という音が響きました。


 「ちょっと!?何をやっているんですか!?」


 ヴィリジットさんが私の右手首を掴んでいます。そのショックで手の中の魔力がすーっと外に抜けて出てしまいました。


 「えっと、〈魔力操作〉のスキル習得を……ノクターナルさんの言葉で思ったんですよね。黒竜の魔力は身体強化に使われているものなら、黒竜の魔力を動かす感覚を一番掴みやすいのは『自分の体』じゃないか、と。で、ちょっと試してみたわけですが」


 〈魔力操作〉のスキルは覚えられたようです。何か違うスキルも覚えたようですが。

 ヴィリジットさんが盛大にため息をつきました。


 「……馬鹿ですか、貴女は。そもそもさっき動かそうとしたのは貴女の魔力ではなくノクの魔力でしょう?自分の魔力でなくて他人の魔力を動かすなんて、もっと高位の技術ですわよ?」


 それに、とヴィリジットさんが続けます。


「貴女、自分の体の中の魔力『だけ』を動かそうとしたら、そりゃ魔力は体の中から飛び出ていくに決まってますわよ!?それで貴女、右手が滅茶苦茶になっているじゃありませんか」


 あっ。


 さっきの音は魔力が右手の肉と皮をぶち破っていった音ですか。確かに右手がひどいことに……本来なら血塗れで激痛が走っているはずです。残酷な描写がカットされて痛覚が緩和されてるゲームでよかった。


 「私も治療しますから、ノクは早くサマリーとサルカンドラを呼んできなさい!!」


 その後、サルカンドラさんに滅茶苦茶怒られました。



 ちなみに一緒に覚えた〈魔力奪取〉というスキルは「他人から魔力を奪う」スキルだそうです。ノクターナルさんの魔力を奪って自分の物として動かそうとしたことで覚えたようですね。


 効果としては「魔力による攻撃が生物に命中した際、レベルに応じた【MP】を奪い、自分の【MP】とできる」ようです。〈竜闘術〉の攻撃は全て魔力による攻撃なので〈竜闘術〉を使いながら【MP】の回復ができるようです。〈竜闘術〉のアーツを使う時の消費も気になっていましたから、結果的にはいいスキルを覚えられましたね。

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