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異世界英雄式のつまらない解き方  作者: 四四 カナノ
第三件 異世界からの幽霊
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69B =勝者となった黒は、何を企むのか。


 ◇◇◇


 そこは、暗闇だった。

 外の光は、すべて遮られた地下。

 広大な広さを誇る空間に、神殿のような円柱の柱が、規律に沿って、無数に並んでいる。上を見上げても天井は見えない。立ち並ぶ柱も、どこまで伸びているのか、先が見えない。

 この空間が、なぜ存在するのか。それを知る者は、ここにはいない。

 ここにいる者は、ただ利用しているにすぎない。

 その者は、魔法によって作られた光球に照らされた中を歩いている。

「今回は、大漁だったな」

 そう騒いでいるのは、影のような男。輪郭は、人であるのだが、色がない。黒一色で、まるで影が立体となっているような姿だ。

 その影男の後をついてくる者が、二人いる。

 一人は、魔法で光球を作り出し、もう一人は、無駄な動きを一切せずに後をついて行く。共通するのは、共に黒い外套に身を包んでいることだ。

 影男に答えるのは、光球を作り出している者だ。

「この結果は、始まった時から見えていたこと。今騒ぐのも、前に騒ぐのも同じであり、結果もまた同じです」

 影男の言葉に、答えたのか、答えていないのか、あやふやな内容の言葉を紡ぐ。

「相変わらず、お前の言葉は、分かりづれえな」

 それでも答えを返してくれたのが、うれしかったのか、影男は話を続ける。

「ここんとこは、ずっと一人だったからな。お前でも話が出来ると、なんか安心するぜ」

 三人は、そのまま奥へと進んでいく。

 奥にあるのは、少し開けた空間だ。そこだけは柱も並んではおらず、くり抜かれたような円形のくぼみがある。

 そのくぼみの広間には、三人の待ち人がいた。

「よお、お待たせ」

 影男は、特に悪びれた様子もなく、待ち人たちに片手を上げて示した。

「俺たちが最後か?」

「まあ、そうなんじゃない」

 その問いに答えたのは、全身が赤い、真紅の外套に身を包んだ者だ。色は違うが、羽織った外套の細部に黒い外套との違いは見つからない。

 適当に言っているように聞こえるが、いかにも三人が到着するのを待っていたという風情だ。

「集まり悪いな」

「さっさと報告を聞かせろ。時が過ぎる」

 言葉を急かしたのは、待ち人の中で黒い外套を着ている者だ。その者は、手元の懐中時計を見つめるように、顔を俯けている。

 ここにいる者のほとんどが、その黒い外套に身を包んでいる。この集まりで、それが共通のコスチュームでもあるのだろう。

 真紅の外套と影男が異質と言うことでもある。

 そんな中に一人、待ち人たちの中で唯一、椅子に腰かけて待っていた者がいる。

 その者もやはり、黒い外套に身を包んでいるが、フードをかぶっていないために顔が露わになっていた。

 その顔は、まだ幼い。青年とすら言えないほどの年齢に見える。体格も子供ほどでしかない。黒髪が、肩の上で切りそろえられていて、整えられた人形のようにも見える。

「それじゃあ、始めましょうか」

 その子供が、長い前髪の隙間から片目だけ視線を影男に向けて、話の先を促した。

「うっす」

 影男は、返事をするとすぐに本題に入った。

「まずは、結果から。今回の計画は、成功だった」

 影男の言葉に続いて、後ろにいた黒い外套のうち、何も持っていない方が、前に出て来た。

 くぼみの広間へ出て来ると、そこで外套の前を開き、懐から無数の光球をばらまいた。

 色とりどりの光球が、一瞬だけ空間を埋め尽くす。

 その光球は、一つ一つがとても小さく、手の平に収まるほどの大きさだった。だが、それが五十近くも舞えば、一瞬とはいえ、かなりのエネルギーとなる。

 その光景を、子供は、目を細めるようにして眺めていた。

「これだけあれば、成功だろ?」

 影男が、確認するように子供に顔を向ける。

「そうですね。当初の計画通り、成功でいいでしょう」

 子供は、そう答えて、広間を舞う光球たちへ左手を向けた。

 自由に舞っていた光球たちは、その子供の手に導かれるように、子供の目の前へ集まり、子供の体の中へと消えてしまった。

 影男は、報告を続ける。

「計画遂行中に、ちょっとイレギュラーがあったから予定を切り上げて戻って来た。できれば、もう少し熟成させたかったんだけどな」

「あら、そんなに影響があったの?」

 真紅の者が、疑問を投げかけた。

「影響はなかったが、念のためだ。一応、あれは先代だし、どんなことをしてくるか分からないしな」

「あなたにしては、ずいぶんと弱気な発言ね」

「アッ?」

 影男が、やや怒気を込めて、真紅の者を睨む。真紅の者の言葉は、影男の意にそわないものだったようだ。

 一瞬で険悪な雰囲気が、広がる。

 それを払ったのは、時計を持つ者だ。

「今、事が公になるのは、まずい。ただでさえ、姿をさらす危険を冒しているのだ。予定を切り上げたのは、正解だろう。時は貴重だ」

「そう言ってもらえるのは、ありがてえ」

 影男は、時計を持つ者に素直に礼を示した。だが、真紅の者へは、苦言を呈する。

「ただなあ、先代の力量は、事前の話とは違うんじゃねえのか?」

 その言葉に反応を返すのは、真紅の者だ。

「それってどういう意味? 私の調べが間違っているって言うの?」

「そんなのは、知らねえ」

 影男は、自分の発言でありながら、それを切り捨てる。

「ただ、見た感じ、そんなでもない気がしてな。むしろ、先代の友のほうが、危険だったぜ」

 影男の視点は、今回の計画から見た視点だ。今回の計画にとっての危険度は、単純な力量では測れない。

「陽動にも、簡単に引っ掛かってたな」

「ふーん」

 それを聞いた真紅の者が、一歩前へ出た。椅子に座る子供を正面に見据える。

「今度は、私に行かせてもらえないかしら? もう一度、しっかりと調べてくるわ」

「うーん、そうですねえ……」

 子供は、真紅の者の進言に腕を組んで考え込んだ。

 その様子を見守る者たちは、黙ってそれを見つめている。誰も口を挟もうとはしない。緊張が、この空間に広がっているようだった。

「それならば、同時に僕のお願いも聞いてもらいましょう」

 緊張が走る面々とは、異なる雰囲気で子供は告げる。

「お願い?」

「はい」

 一つ頷いて、子供は笑う。

「まだこちらの準備は整っていませんし、先代に本気になられると困ってしまいますので」

 新しくいたずらを思いついたように、子供は、笑みを浮かべて話を進めていく。

 黒い集団は、その存在を秘匿しながらも確実に息づいている。

 暗闇の先は見えない。見えないからと言って、何もいない訳ではない。確実ではなくとも、ゼロではない。

 少なくとも彼らは、暗闇に息づいている。


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