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異世界英雄式のつまらない解き方  作者: 四四 カナノ
第三件 異世界からの幽霊
54/71

54 一週間+調査


 ◇◇


 光にヘレのお願いを了解させた。とりあえず、第一関門は突破だ。

 僕は、ショウグンの影響のことを光に隠している。理由は、これ以上の心配をかけたくないからだ。ただでさえ、クリスマスパーティーの準備にも付き合わせている。本人がそれをどれほど意識しているのか確認できないが、これ以上の心配はさせたくない。

 そうかと言って、異世界に行く手段がなければ、ショウグンの問題を解決できない。ネリスカームからショウグンのことは、こちらの世界ではほとんど解明できないだろうと言われている。進展を期待するならば、異世界へ向かい、そこで何かしらの手掛かりを探す必要がある。

 光に事情を隠したままで異世界に行くのは、難しい。そのことを裕也に相談すると、今回の件を設定してくれた。セリアとヘレに協力を頼んだのだ。異世界に行くには、セリアの協力が必要不可欠だ。そして、ヘレには、光をごまかしてもらう役目がある。その手段として、屋台への協力が含まれたのは、僕の意思ではないが。

 実際に異世界へ行くのは、光が料理を教えている間のわずかな時間だ。日に一時間から二時間くらいになるだろう。

 その間に異世界へ行き、ショウグンの記憶を刺激できる物や場所を探す。そんな短い時間で何ができるか分からないが、全くないよりは良い。こっちの世界ではできることがないのだから、あまり贅沢は言えない。

 基本的にはセリアとヘレが、異世界でそれらしい情報をあらかじめ探しておき、光が料理を教えている間にショウグンを現地へ連れていく。それを繰り返して、少しでも解決の糸口を探す方針だ。うまくいけば、光に気づかれることなく、ショウグンの件を解決できる。


 ◇


 一日目。

 いろいろな確認をした。

 屋台で可能な料理方法の確認や使用できる食材の確認を行なった。異世界であっても、こちらの世界と似た食材は、存在するらしい。

 光が本格的に教えるには至らず、僕も異世界の食材の味見に付き合わされた。


 ◇


 二日目。

 教える料理を決めた。

 野外の屋台でお祭りということもあり、焼きそばを教えるそうだ。材料や調理作業に問題はないが、ソースをどうするかでトトクとロワが話し込んでいたらしい。

 異世界へ渡った僕は、闘技大会会場の外側に作られたヘレの出す屋台のあるお祭り広場で、お祭りを直に体験してきた。なぜか、もみくちゃにされた。予選から盛り上がりを見せている。


 ◇


 三日目。

 試作品が、作られた。

 ソースに代わる調味料の話は、トトクとロワがそれぞれ探し出して、試作品が作られた。それを食した光は、首を縦に振らず、改良を求められる結果となったようだ。

 異世界へ渡った僕は、闘技会関係者の方々にあいさつ回りをした。共に審査員として大会を観戦する方々をはじめ、主催者や共催者にまで足を運んだ。


 ◇


 四日目。

 特にこれといった動きはない。

 光と共に勉強をした。学生としての本分のため、異論はない。


 ◇


 五日目。

 特にこれといった動きはない。

 トトクとロワが、試作品を持って来たぐらいで、今日も勉強に勤しんだ。学生としての本分のため、異論はない。

 ただ、光の目があり、全く異世界に行けていない。


 六日目。

 試作品が、認められた。

 認められたのは、ロワの味付けだったが、トトクのほうも悪くなく、そちらは焼きそばパンのようにして出されることとなった。期せずして、こちらの世界から二種類の料理を屋台に並べることになった。それにしても、この短期間で試作品を納得できるまでに仕上げた腕は立派なものだ。

 異世界へ渡った僕は、ヘレの依頼で追加の仕入れを手伝わされた。焼きそばパンに使用するパンの確保のためだ。僕が異世界にいる時間帯は、トトクとロワが屋台にいないため、店が閉まっている時しか見たことがない。ヘレの口ぶりから予測すると、大変盛況なようだ。


 ◇


 七日目。

 テスト期間の最終日となった。放課後、光は、屋台がどういう状況になっているのかを見に、異世界へ渡った。乗り気ではなくとも、気になるらしい。様子を見に行った後、そのまま屋台の手伝いをしてしまう。

 一緒に異世界へ渡った僕は、光が屋台の手伝いで四苦八苦している時に、ショウグンに関係がありそうな場所へ向かった。その場には、裕也も同行している。セリアに案内してもらった場所は、いくつかあるが、どれもショウグンの反応はいま一つだった。


 ◇


 僕とショウグンの物理的なつながりが、危険とされてから一週間になる。

 それだけの期間を費やしてもショウグンのことは、ほとんど分かっていない。僕が異世界に調査に来ている時間としては、まだ十時間にも達していないのだが、セリアに調べてもらっている分も合わせれば、相当の時間になるはずだ。調査以外にも時間を費やしてしまっているのが、響いている気がする。

 すぐに何とかなると思っていたのは、あまりにも楽観的過ぎたようだ。

 現在は、裕也も一緒に異世界へ、闘技大会会場へと来ている。

「とりあえず、いろいろ回ろうぜ」

 裕也が先に立って、人の多い通りを進んでいく。

 それに並んで、僕とセリアも歩いていた。

 僕は、何度か来るうちに慣れてきていたが、裕也は、異世界そのものが初めてという状況であるのに、良く動き回れるものだ。

 今までの調査で、ショウグンがまともに反応を返したのは、闘技大会だけだ。闘技大会が、唯一の手掛かりと言って良い。そのため、闘技大会とショウグンのつながりを調べることになった。

 まずは、闘技大会について。

 現在、闘技大会は、予選が行なわれている最中だ。各地から集まった参加者たちが、己の能力を競い合って、しのぎを削っている。

 予選は、体力、知力、技術を見るように競技が作られている。それらの競技で参加者たちが競い、その結果の上位者が、本選に進む。ただ単純に腕っ節を見るだけの大会ではない。

 ちなみに、予選の競技を一部、体験することも可能だ。予選で行なわれる競技を簡略化したものが、お祭り広場に設置されている。それらは、来場者であれば誰でも自由に挑戦できる。アトラクションとして、とても人気のようだ。連日、挑戦待ちの列ができ、ときおり、歓声が聞こえてきている。

 大会参加者の内訳は、人間と精霊か半々くらいの割合らしい。この異世界では、精霊のほうが、人より数が多いはずだが、闘技大会だとその程度で落ち着くようだ。テンカのような精霊は、稀だということでもある。人間の参加者は、パートナーと合わせて一人と数えられているせいもあるだろうが。

 闘技大会の主催者は、ヒュリストラ王国が務めている。会場の場所も当然、ヒュリストラ王国の領土内だ。そして共催者は、自然とその関係者となる。

 基本的に人間ばかりで考えられたお祭りだった。それでも、精霊たちの楽しんでいる姿も多く見られるため、精霊のことも十二分に考えられているのだろう。精霊が、人間と似通っているという見方もできる。

 会場として準備されたのは、とても大きなスタジアムのような建物だった。どんな種類のスポーツでも開催できると思える広さがある。そんな広さのスタジアムが、二棟並んで建てられており、その威容は、巨大としか言い表しようがない。かなり昔に建てられた建物のようで、石材を積まれてできた壁が、長い時を経て黒味を帯びている。一部改装したりしているようだが、そういった部分はお祭り広場に面した部分となっていた。

 僕たちは、大きな会場の、これまた大きなアーチ状の通路を通って、大会の様子を見て回っている。

 人の出入りは、基本的に自由で、多くの観客が行き交っていた。競技の行なわれる会場は、スタジアムの全域を使用して行なわれており、見たい競技や応援している参加者がいれば、移動の頻度はかなりになる。移動に利用する通路にも、場所を区切って露店が並んでいて、移動で飽きるようなこともない。

「本当に、ただのお祭りだな」

 裕也が、呟きながら会場の様子を眺めていく。

 事前に話をする時に、どう説明するか迷ったのだが、他に当てはまるような言葉が出てこなかったため、裕也にはお祭りと伝えていた。

「ここまで大きなイベントは、十年戦争終結後は、初めてみたいだよ」

 大きなイベントとしては久しぶりという話は、挨拶で回っていた時に耳にしたことだ。

 戦争が終われば、どうしても復興で人手も物資も必要になる。こういったイベント事は、そうやすやすとは行えない。それが出来るようになったのは、それだけ普段の生活が整って来たということだ。

「俺様も、初めてだぜ」

 テンカが、セリアのフードから顔を出して、後ろの喧騒を振り返っていた。

 テンカがこの異世界にいたのは、戦争中のことになる。むしろ、生まれてからそれほどの時間が経過していない。しばらくの間、意識不明で眠っていたことを考えれば、起きていた時間は一年ほどしかないだろう。物珍しいのも当たり前だ。

 フードの中からテンカは、同じフードの中にいるキュピのことも忘れて、右へ、左へ、忙しなく顔を動かしている。

「あんまり見ていられる時間はないよ」

「キュ!」

 セリアとキュピが、テンカに注意をしていた。

 注意とは言っても、穏やかなものだ。言っているセリアも笑顔を浮かべているし、キュピはテンカが危険な行動を取らないように見ているようなものだ。

 そんな周囲の様子を見ながら、ショウグンの様子が気になった。軽く振り返りつつ、見上げてみる。

 ショウグンの様子は、今までと変わらず、ただの雲のように漂っていた。落ち着いて周囲を眺めているようだ。表現できるような目立った反応は見えない。

 テンカの様子と比べれば、子供と老人くらいの差がある。それほどの年齢差が、実際にあってもおかしくはないが。

「こっちは、何なんだ?」

 先を歩いていた裕也が、足を止めた。

 裕也の見つめる先には、薄暗い通路がある。古い建物だからだろう、明かりが十分に取り入れられない通路が、所々に存在する。明るく賑わっている通路から見れば、暗くさびれた印象を受けてしまう。

「そっちは、関係者用通路だね」

 セリアが、裕也と同じ先を眺めながら答えた。

「ということは、通っていいってことっすよね?」

 関係者と言うと、僕のことになるだろう。

 セリアは、少し考えるそぶりをしたが、はっきりと首肯した。

 それを確認して、再び裕也の足が先に進む。

 通路の合間に明かりが供えられているが、暗いことに変わりはない。暗がりの中を歩いて行く。

 裕也の後を追いかける形で、僕たちは通路内に入った。

 通路は、人が二人並んで歩くのがやっとといった広さだ。

「……裕也は、どう考えているんだ?」

 僕の問いは、いろいろと言葉が足りない。それでも裕也は、間違いなく質問の意図をくみ取っていた。

「んー、そうだな。簡単に言うと、何も考えてない」

 考えていないという割には、裕也の足取りに迷いはない。

「正確に言うと、考えるだけの情報がない、だな」

「そうなのか?」

 僕の問いに裕也は、頷いて続きを話していく。

「俺たちの目的は、タケとショウグンが繋がっているのを解くこと。そのためにショウグンの記憶を探しているわけだが、これは何の手がかりもない」

 今、ショウグンのことで判明しているのは、精霊であることぐらいだ。

「正直、ショウグンの反応待ちだと、時間がいくらあっても足らないと思うぞ」

「となると、こっちから動くのか?」

「まあ、そうなるな」

 裕也は、声に楽しそうな響きを乗せている。

 暗い通路の中でも、今の裕也がどんな顔をしているのか、はっきりと分かった。それだけ裕也にとって、今回の件は、やりがいがあるのだ。

「俺は、ショウグンが大会の関係者だと考えているんだ」

 ショウグンの記憶に触れているのは、闘技大会だけだ。失った記憶に干渉するほどだから、ショウグンは闘技大会にかなりの思い入れがあるのだろう。そう考えれば、関係者と思うのも間違いではないかもしれない。

「まずは、闘技大会関係を洗ってみようと思う。主催、共催とかだけじゃなく、参加者って線もあるしな」

「それじゃあ、いろいろ必要だね」

 後ろで聞いていたセリアも、裕也の考えに異論はないようだ。

「いつも悪い」

 僕は、裕也に頭を下げた。いつも、手を借りている。

「いいってことだよ。なあに、またいろいろ付き合ってもらうから、それで貸し借りなしでどうだ?」

「助かる」

 言葉だけでなく、心から本当にそう思う。

 暗く狭い、寂れた通路を抜けて、また喧騒の中にある祭りへと戻っていく。


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