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異世界英雄式のつまらない解き方  作者: 四四 カナノ
第三件 異世界からの幽霊
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49 幽霊+眼鏡


 ◇


 放課後。

 昨日、闘技大会の審査員として参加する話をセリアに了承したが、一日ですぐに話が動くわけがない。だが、いずれは詳しい話が、回って来るだろう。それまでに、できる事をしておきたいと思っている。

 僕は、生徒会室へ向かって足を進めていた。審査員の話は、涼子と交わした約束をたがえる可能性も少なくない。それを謝罪しに行く途中だ。

 何事もなく到着し、生徒会室の扉をノックする。

 中から返事はないが、勝手に扉を開けた。生徒会室は、生徒が誰でも利用できるというのが涼子の論であり、別に返事がなくても勝手に入って良いと言われている。ある程度信頼をされているからだと思うが。

「失礼します」

 扉を開けて、僕は素早く入室した。

 そこにいたのは、副会長の正道と裕也だった。二人は、応接用のソファに座って、対面している。

「おっ、タケ。遅かったな」

 ひょうひょうとした様子を見せる裕也と、憮然とした様子を見せる正道。以前に見たことがあるような構図だ。

「どうした?」

 そう聞いてくるのは、正道だ。裕也との話を中断して、こちらに意識を向けている。裕也との話は、平行線をたどっているのだろうか。

 そんなことを考えても仕方がない。僕は、僕の用事を口にする。

「会長に話があって来ました」

「一足違いだったな。会長は、いつもの見回りに行った後だ。どうしても会いたいならば、少し時間をつぶして来るといい。一時間もすれば、戻って来るだろう」

 なるほど。そうなると、正道の言葉に従って待つべきか。

「丁度いいな」

 そう口にしたのは、裕也だった。ソファから立ち上がって、こちらに、生徒会室の出入口に向かって歩いてくる。

「ちょっと、手を貸してくれ」

「ああ」

 僕は、特に考えずに了承した。裕也が手を貸せと言うのだから、僕がいないと駄目なことなのだろう。

「待て、高戸」

「もう少し調べたらまた来ますんで、そん時に再びよろしくお願いします」

 裕也は、正道の制止を聞かずにさっさと生徒会室から出て行った。

 僕は、話の流れが分からないため、何も聞かずに裕也の後をついて行くしかない。裕也に続いて生徒会室から出ると、廊下で裕也が待っていた。すぐに追いつき、そのまま二人並んで歩いて行く。

「それで、どこに行くんだ?」

「西校舎だ」

 僕は、説明を求めて、裕也の話の続きに耳を傾ける。

「なんかな、最近、幽霊が出るんだとさ」

 幽霊とは、また季節はずれな単語が出てきた。

「幽霊ってのは、そう言っている人が多いからそう言っているだけなんだが、どうも暗くなり始める時間帯に目撃されてるみたいなんだ。俺が最初に聞いたのは、不審者ということだったんだが、話を集めていくと、不審者よりも幽霊のほうが表現としては合ってる」

「……で、その目撃場所が、西校舎?」

 話を集めている裕也が、人物でなく場所を往き先として指定している。ならば、現場が特定されたということだ。

「話を統合すると、そうなる」

 裕也は、話を続けるが、自分の考えに浮かない表情を浮かべた。

「そうなるんだが、どうにも西校舎の話が集まらなくてな。何か、気になるんだよ」

 渡り廊下を渡って、中央校舎から西校舎へ移る。

 裕也は、すぐ近くの階段へ足を向けて、下の階へ向かって降りて行った。向かう先は二階だと言う。

「気になるって、何が?」

「ちゃんと自覚をしている人数が、少ない気がするんだ」

「自覚をしてない?」

「してないってわけでもないんだが、部活なんかで遅くなって、校舎の外から幽霊を見た話よりは、断片的な話になってるんだよな」

「……」

 そこに、どんな意味があるのか。

 外にいる人よりも内にいる人のほうが、距離的に近いはずだ。何かしらの現象を体験したのならば、普通は外よりも内のほうが、詳細なことが分かる。それが、逆になっている。ならば、内にいる人は、何かしらの現象を体験していないのか。外にいれば観測できて、内にいると観測できないのだろうか。

「そんなわけで、ちょっとタケの力を貸してくれ」

「調べるわけか」

「そういうこと」

 階段を下りて、西校舎の二階へたどり着いた。教室が並んでいるだけの、特に目立った変化のない階だ。

 廊下を歩いて、さらに先に進む。ここからは、僕が裕也の前を歩く。

 周囲に人がいないことを確認して、手にレーダーを作り出した。何か変化を感じ取れるとしたら、僕のほうが裕也よりも可能性が高い。

 後を付いてくる裕也は、懐から眼鏡を取り出していた。《色の記憶》という魔法アイテムだ。何か変化があれば、それで裕也にも『見る』ことが出来るだろう。

 まずは、広い範囲から確認していく。レーダーの範囲を西校舎全体に設定。全体から何か気になる反応がないかを確認する。

 果たして、見つかった反応は、二階の教室の一つにあった。

 念のためにその反応を中心に範囲を縮めて、その変化を見てみる。

「……」

 間違いない。

 思ったよりもかなり簡単に見つかった。校舎内に人がいる以上、反応自体はいろいろな所にあるのだが、明らかに人とは異なる反応がある。

 その反応の明らかな違いとは、天井付近に漂っていることだ。人であれば、床から少し上ぐらいに反応が出るのだが、この反応は、床からかなり高い位置にあり、明らかに宙を浮いている。

「これかな?」

 僕は、裕也にレーダーで特定した地点を確認してもらった。

「さすがだな。仕事が速い」

 裕也は、まだ何も見つけられていないらしい。

 日が沈むには、まだ早い時間帯であり、生徒の反応もちらほらと見られる。あまり大事にはしないほうがいいだろう。まだ、何も確認できていないのだ。変な噂が流れても困る。

「まずは、見てみるだけだな」

 それには、裕也も同じ考えのようだ。

 僕は、裕也に一つ頷いて、反応のある教室へ足を向けた。

 気になる反応は、教室の後方、窓際の天井付近を漂っているようだ。

 目的の教室まで到着し、まずは廊下から一睨みして見る。

「……」

 僕の目には、特に何も見えなかった。

 レーダーと実際の場所を何度も見比べて、間違いがないことを確認する。特に見当はずれな所を見ているわけではない。

「なんか、霧みたいなのが出来てるな」

 裕也には何か見えているようだ。さすがは、見ることに特化した《色の記憶》である。

「僕は、何も見えない」

「そうなのか」

 裕也は、廊下から離れた宙空を睨むように見つめている。

「んじゃ、いったん戻るか?」

 僕は、裕也のその問いに頷いた。

 それを見た裕也は、引き返すのではなく、そのまま教室を横切っていく。

 僕もその後に続いた。用が済んだので、すぐにレーダーを消す。

「人気がなくなったら、後でもう一度確認に来ないとな」

「そうだね」

 これだけでは、何も分かっていないのと変わらない。姿を確認しているのは裕也だけだし、普通には何も見えていない。

「レーダー内の反応は、藍色だったよな」

「そうだと思う」

「藍色は、氷の属性だっけか?」

「確か」

 魔力には、色がある。その色を見れば、多少の傾向は判断できる。判断できるのは主な系統だけなので、それですべてを決定するのは難しいが。

「寒いのは、今の季節だと当たり前だし、見えないってのは証明するのがきついな」

 裕也は、考えを口に出しながら、思考をまとめに入っているようだ。

 とりあえず、今はここまでかな。

 僕は、クリスマスパーティーの手伝いのために中央校舎へ、少し遠まわりをして戻った。


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