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異世界英雄式のつまらない解き方  作者: 四四 カナノ
第二件 異世界からの定住者
27/71

27 帰宅+調査報告

 道乃森高等学校の文化祭から二日が経過した。

 文化祭での一件が無事に終わり、いつもの日常が戻って来る。僕たちは、早くもその事件を過去のものとして、いつもと変わらない日常を送っていた。裕也だけは、セリアから事件後の話を聞きたいと言っているが、こちらからどうこう言えるわけではないため、ただ待つしかない。結局、日常を平穏に送っている。

「ただいま」

 僕と光は、学校から帰宅したところだった。

「おかえりなさい」

出迎えたのは、光の母親である加賀美智子だ。

 文化祭中は旅行に出かけており不在であったが、文化祭終了の翌日に帰って来た。旅行と言ってもその行先は、光の父親の単身赴任先であり、ほとんど様子を見に行ったようなものだろう。帰って来てから、お土産としていろいろと話を聞いている。

「お客さんがいらしてるわよ」

「お客さん?」

「誰?」

 二人で疑問に思いながらも、靴を脱いで玄関へ上がる。

「ん〜、外国の人じゃないかしら。心当たりある?」

「そんなに簡単に家にあげて大丈夫なの?」

 にこにこと答える美智子とちょっと心配になっている光。

「その辺は、母親の勘かしら?」

「お母さん……」

 親子で似たようなことをするものだ。僕は、勘は大事なことだと思っていますが。

 そんな親子の会話を無視して、僕はさっさと家に上がらせてもらう。客として訪れている人物の心当たりは十分にあるのだ。すぐ近くにいるのに待たせるのも悪い。

 リビングのソファに座って、テレビを眺めている人物が二人いる。一人は、見覚えがある。

「おかえり」

 そう言葉をかえしてくるのは、セリア=ミレス。ちょっと小柄な体格をしたお姉さん。僕の師匠である。

 さて、見覚えのないもう一人の人物は、一体誰だろうか。

 パッと見は少年だ。年齢的には若い、確実に小学生だ。黒髪の長髪ではあるが、所々はねており、あまり手入れには関心がないのだろう。表情は、不機嫌そうに眉と目じりを上げており、その場でジッとしていたくないような、活発そうな印象を受ける。背中に見える金属っぽい物は、アクセサリーの一種だろうか。

「またあったな、相棒」

 その少年は、僕を見てそう言った。

「ああ、テンカか」

 僕のことを相棒と呼ぶのは、ただ一人だけ。正確には一体だけ。僕のパートナー精霊であるテンカだ。

「セリア、二日ぶり」

 そうこうしているうちに光もリビングに入ってくる。リビングの状況を見て、一度首を傾げたが、すぐに表情を戻した。

「とりあえず、私の部屋に行きましょう」

「そうね」

 光がセリアとテンカを連れて二階へ向かう。

 僕はこのまま待機する。

 それを見た美智子が、慌てだした。

「あら、それじゃあ光の部屋にお茶を持っていきましょう」

 当然、そういう流れになりますね。

「準備だけお願いします。お茶は僕が持っていきますので」

「そう? 」

「はい」

 どんな話や単語が出てくるか分からないのだ。接触する機会は、少ないほうがいいだろう。

「それじゃあすぐに準備するから」

 キッチンで美智子が準備を始めた。

 僕はそれを見ながら、何気なく聞きたい事を聞いてみる。

「あの二人は、ここに訪ねて来たんですか?」

「違うわね。浩ちゃんの家の前で右往左往してたから声をかけたの」

「それで、何も聞かずに家にあげたんですか?」

「さすがに私でもそこまでじゃないわよ。浩ちゃんとの関係とか、少しばかり話をしてからですよ」

 僕との関係か。ちょっとセリアの返答の内容が気になる。師匠とか話していたら、さすがに警戒されるだろうから無難に友人だろうか。

「それにしても、日本語が上手な人ね」

「そうですね」

「どこで覚えたのかしら」

 そう言えば、その辺は全然気にしていなかった。異世界では日本語が、標準言語などと言うことは考えにくい。何かしらのからくりがありそうだが、別に知らなくても問題はないだろう。

「さて、それじゃあ浩ちゃん、お願いね」

 考えをまとめ終わると、お茶一式とお菓子を乗せたトレイが目の前に差し出された。

「はい」

 僕は、素直に受け取って二階への階段に足を向けた。


 ◇


 話の前にまずは、セリアが来たことを裕也に連絡する。話は裕也が来てからと言うことになった。

連絡を受けた裕也は、すぐに駆けつけた。

「まずは、知らない顔がいるんすけど」

 到着早々、裕也が口を開く。裕也が言っているのは、テンカのことだ。

そのテンカは、窓のすぐそばに腕を組んで立ち、外の様子を眺めている。

「こいつは、テンカだよ」

裕也の問いに、僕が簡潔に答えた。

「テンカって、大きな竜みたいな奴って言ってなかったか?」

「私もそう思ってた」

 光も形は違うが、裕也と同じ意見だ。

ちなみに、僕もそのあたりのことは二人と大差ない印象を持っている。だが、そこまで驚いてはいない。精霊の姿をいくつか見ているから予想はつく。

 そんな二人にセリアの説明が続く。

「精霊の姿は、いろいろ変わるからね。最初は卵型。そこからいろいろ覚えて、動物型になって、一人前と呼ばれるようになる頃に人型になれるようになるの」

セリアのパートナー精霊であるキュピは、小さい卵型、大きな鳥型、そして人型に姿を変えることができる。要は、それと一緒だろう。

「精霊のランクの基準としても使われてるね。見た目が変わるから目安にし易いという感じかな」

「なるほど」

 能力によって変化できる姿は変わるようだ。逆に、変化できる姿によって、能力が分かるとも言える。

「ちなみに、俺様はランク6だぞ」

「一番上のランクだね」

 順番は逆になったが、簡単に自己紹介をする。裕也、光、テンカと巡る。特に目立つこともなく終わらせる。今回の主題は、自己紹介ではないだろう。

「で、今日は何の用で来たんすか?」

 話は、裕也から切り出した。

「経過報告だね。一応、落ち着いてきたから」

「ぜひ、聞かせてください」

 裕也は、前のめりになって聞いている。情報屋として琴線に触れるものが、いろいろとあるのだろう。

「まずは、暴走した精霊のことだけど」

 興味はないと言っても、自然と話に耳を傾けてしまう。

「名前は、ハッコウ。レストランのアルバイトをしていた子だよ」

すごく日常的な単語が出てきた。

「普段は、湖の魔力源泉で管理者をしているそうなんだけど、三年前くらいから観光地として湖の周辺が注目されるようになってきて、観光客の集客のためにいろいろな施設が建設されるようになって、それに精霊たちも協力するためにそこで働き始めたみたい」

 異世界の話じゃない。なんかこれ、普通にどこにでもありそうな話だ。

「最近では、源泉の管理よりもそっちで働くほうが多くなってたみたいね。店主の方の話だと仕事ぶりも良くて、お客さんの反応も良かったそうだよ」

「普通っすね」

「普通だから、問題なんだけど」

 ここで問題と言っているのは、普通であることが問題ではない。

「暴走する理由っすか?」

「そう。ハッコウさんの周りを調べても、暴走に至るような理由が見つからないんだよね」

 精霊の暴走の原因には力を追い求めるから、というのが根本に存在する。自分の手に負えないような大きな力を得てしまうから、結果として暴走を引き起こしてしまう。

 力を求めるからにはそれに相当する、理由があるはずなのだ。

「本人も暴走につながりそうなことに心当たりはないみたいだし」

「全くの手詰まり何すか?」

「現状では、外部からの干渉という線で調査が進められているよ」

 セリアは、紅茶を口にしてから付け足した。

「私はもうこの件にはかかわってないから、これ以上については知らないけどね」

 これに、裕也が反応した。

「とことんまで調べないんすか?」

 情報屋としての血が騒いでいるのだろう。裕也であれば、確かに調べられるところまで調べる。とは言え、個人で手の出せる範囲までだが。そのあたりは、十分に線引きをしている。

「他にも仕事は舞いこんでくるし、続けても精霊がらみとは限らないしね」

 スピリットハンターとしてのセリアは、すでに前の件の仕事は終えているということか。

「今は、どこが調査しているんすか?」

「この件で被害を被った国が、連携して調べてるよ。今後のことは、それ次第だね」

 国が動く段階になっているのならば、セリアとしてもできることはたかが知れている。それもあって、手を引いているのだろう。

「国と言えば、ヒュリストラは、どうなってますか?」

 今度は光の質問だ。

「ミストロックが移動した影響とかはなかったんですか?」

「その点は心配しなくて大丈夫。時間的にも一日たっていなかったし、影響は出てないみたい」

「よかった」

 ミストロックの移動は、僕と光の異世界移動にも関係している。その影響が出ていないというならば、そこで知り合った人物たちも無事だということだ。

 他に聞くとしたら、僕が聞かないといけない案件がある。

「で、テンカは何をしているの?」

 僕は、窓の外見ているテンカに視線を向けた。

「俺様は、やりたいことがあるのだ」

「何を?」

「決まっている。それは世界一強くなることだ」

 そんな話なのか。それも、決まっているのか。

「向こうの世界では、俺様の強さは世界中に轟いているはずだ。だから、今度はこちらの世界で俺様の名と強さを広める。そのために手を貸してもらうぞ、相棒」

「断る」

 間髪いれずに、拒否した。

 テンカが、振り向きこちらを向く。その表情は、愕然としていた。泣くのを我慢したように、ちょっとだけ目がうるんでいる。

「な、なぜだ?」

「戦う気がない」

「これからも向こうから精霊がやってくるかもしれないんだぞ」

「そんなことが頻繁にあったら、精霊のことがもっと世界中で知られている。だから、そんな頻繁に精霊が来ることはない」

 この世界では、異世界について知られていない。そもそも今回のことは、世界観の移動を活発に行っていた精霊がいたからこそ、事件として成立していた。テンカの言っていることは、前提からして稀なことなのだ。

「こちらで、強さを見せつけられる戦いはないのか?」

「……」

 なくはない。格闘技の大会は存在している。それでも人間同士という話になるから、テンカがと言うといろいろ難しいだろう。

「テンカの言う戦いはないな」

 そう結論付けるしかない。

「そうなのか……」

 テンカがしょんぼりとしている。頭と肩が自然と下がり、今にも泣きそうだった。

 セリアが咳払いをして、テンカに優しく語りかける。

「ん。まあ、テンカはパートナーだし、浩一のところにいれば、いろいろ成長できると思うから、それだけでも今よりも強くなれるよ。精霊的に」

 パートナー精霊と言うのはそういうものなのだろう。

「と言うことは、テンカはこっちに残るんですか?」

「強くなること以外にもね、パートナーと一緒にいたほうがいろいろ都合がいいんだよ。そういうわけで、置いてほしいんだけど大丈夫かな?」

「……」

 ちょっと考えてしまうが、パートナーということを考慮するとセリアの言うことが正しい気がする。

 光と裕也の意見も聞きたくて、そちらに視線を向けた。

「私は、別にいいと思う」

「その姿でなければ、いいんじゃないか?」

 人型でいるのは、確かにいろいろまずいことになりそうだ。見た目は小学生だから、ずっと家にいるのも不自然になる。卵型ならば、言い訳を考えるにしても何とかなるだろう。ずっと連れ歩く手もある。キュピなんかは、セリアの外套のフードの中にいるわけだし。

「こっちの世界のことをいろいろ覚えてもらう必要があるけど、大丈夫でしょう」

「それじゃあ、オッケーかな」

「よし、これから世話になるぞ」

 テンカは、ふんぞり返っている。人型だと子供の姿だから威厳や威圧感が、全く感じられない。

「後は、いろいろお土産があるんだよね。キュピ」

「キュ」

 セリアに呼ばれて、キュピが出てきた。卵型の姿だ。皆の前に登場すると、丁寧に一礼する。

「キュ!」

 そして、キュピの足元に魔法陣が描かれた。緑色の光を放っている。

 その魔法陣に隣り合わせで、すぐに新たな魔法陣が描かれる。そこからは、何やら細かな物品があふれ出てきた。小さな包みから大きな包み、アクセサリーのような物も見られる。これらが、セリアの言葉にあった、お土産だろう。

「魔法アイテムもあるから、いろいろ説明しながらね」

 そう言って品物を広げ始めた。

 そうして残りの時間は、皆で雑談をして過ぎていった。

結局、事件の真相については疑問点があるということで、それの調査待ちの段階だ。それでも今後の被害は、とりあえずないだろうということは分かり、安心できた。これから先、似たようなことにかかわることもないと思う。そう願いたい。


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