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陰キャの僕にも拒否権を与えてもらえませんか? 〜陽キャ女子の距離感がバグってて、逃げ場を封じられたのだが?〜  作者: 古治
最初の関わりと日常編

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第2話 下校の時間

大輝(だいき)く〜ん! 行こっか!」

「う、うん」

 

 栞凛(しおり)とともに校庭を出る。その間も、凍てつくような視線が僕に向けられていたような気がする。

 

「ね〜、どうして大輝はさぁ、そんなに勉強できるの?」

 

 意外と重たい質問に、大輝は頭を悩ませた。

 

「え、どうって⋯⋯」

 

 栞凛にとっては軽い雑談のつもりだろうが、そんなことはないと感じる僕だった。

 

「うーん⋯⋯」

 

 思ってた以上に僕が悩んでいたからか、すぐに話題を変えてくれた。正直ありがたいと思う。

 

「いつもさ、すっごい分厚い本読んでるけど、なに読んでるの?」

 

 休み時間のことだろう。僕はいつも1人だから、暇つぶしに本を読んでいる。

 

「えっと、最近は、ギリシア神話、です」

 

 僕がそう言うと、栞凛は体をのけぞらせた。

 

「ギリシア神話って、どんなお話?」

 

 僕は突っ込みたくなったが、引っ込める。完全に手が出そうになった。

 

「古代ギリシャの、いろんな神が出てくる、話」

「ギリシャ? なんか聞いたことあるような気がするんだよなぁ」

 

 栞凛は髪をかき乱しながら考えていた。

 僕は仕方ないと思い、口を開いた。

 

「ギリシャは、エーゲ海のところの⋯⋯」

「エーゲ海? 知らない言語で話さないでよー」

 

 エーゲ海は一般常識だと思っていたが、知らない人もいるらしい。地中海のさらに奥、東欧の南付近にある海の名前だ。

 

「ヨーロッパの東側で⋯⋯」

「ヨーロッパはわかるよ! えっと、日本とかがあるでしょ?」

 

 栞凛は僕の話を遮ってまで言ったのに、完全に間違えている。日本はアジアだ。

 

「日本は、アジアだよ」

「え? アジア?」

 

 まるで初めて聞いたような顔だ。目を丸くして驚いている。


 ******


 そうこう話しているうちに、家についたのか立ち止まった。

 

「ここ、私の家!」

 

 真四角の家で、外観は(だいだい)色だった。

 

「あ、でもまだ17時じゃん! じゃあ今から教えてってよ!」

 

 栞凛はなぜかポッケからスマホを取り出していた。

 

「あの、スマホ⋯⋯」

「あ、バレちゃった? ま、いいじゃん!」

 

 とても軽い気持ちでルール違反をしたのか、浅い言い訳だった。

 僕も知ったところで、どうせ先生には何も言えないから変わらない。

 栞凛はカバンから鍵を取り出すと、鍵穴に差し込んだ。

 

「さ、入って!」

 

 僕は今まで赤の他人の生活スペースにまで足を踏み込んだことは一切ない。とても躊躇っている。

 

「どうしたの?」

 

 栞凛は首をかしげて聞いてくる。

 

「(僕みたいな陰キャが踏み入れていいほど人の家はガバガバじゃないだろ)」

 

 僕がそう考えていると、足が勝手に動き出した。

 

「早く入って!」

 

 後ろから、栞凛に押された。僕は強制的に入らされることになった。

 


 玄関には、靴が散乱していた。

 

「(これでは効率的に靴が履けないじゃないか)」

 

 そう思いながら、手が勝手に動いていた。

 気づいたときには靴がきれいに整頓されている。

 

「大輝くん、直してくれたの? 優しいじゃん!」

 

 そう言いながら、僕を手招きする。

 僕は渋々靴を脱ぎ、栞凛についていくことにした。

 

「私の部屋、2階の奥の部屋ね」

 

 そう言いながら、大半が荷物で埋まっている階段を上っていく。

 

「(これで滑ったらどうするのだろう)」

 

 僕は階段に積まれていた一足しかない靴下や、汚く捨てられたような洋服を見ながら上った。

 それは、最上段まで続いていた。

 

「こっちだよこっち!」

 

 そう言いながら、2階の廊下を少し早足で歩いていた。

 

()()()()汚いかもだけど、許してね!」

 

 栞凛はそう言いながら部屋の扉を開いた。

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