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腹ペコ幽霊と冴えない僕は1DKで麺をすする  作者: 功野 涼し
きみが幽霊となった過去を知り幽霊として生きる未来を歩む

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思わぬ繋がり

 日差しが皮膚に刺さるほどの炎天下のなか僕とメー子と一緒に歩く。


「汗拭いてあげようか?」


「大丈夫、それよりも僕に触れているときってメー子も暑さって感じないものなの?」


 僕の肩に触れて宙に浮くメー子は唇を押さえてしばし考えたあと僕を見て首を横に振る。


「全然」


「でも食べるときは温かいとか冷たいとかわかるんだよね?」


「わかるよ。料理が温かい、冷たいって大切なことだからね!」


「なんて便利な体」


 ふふんっと胸を張るメー子の都合のいい体をうらやましく思いながら僕は額の汗を拭う。


 僕たちは今、酒井さんの家へと向かっている最中である。


 酒井さんとは僕の会社がある地域の自治会長をやっていた人なのだが、なぜ僕たちがそこへ行っているのかというと数日前に遡る。


 今無期限の封鎖をされている会社の屋上へと向かったメー子が得た情報は特に何もなかったということだけだ。別に工事をしている様子もなかったし、柵が壊れてて落下の危険があるなどの異変もなかったらしい。


 それじゃあなんで封鎖したのかという話になるが、色々と調べてみたり別の部署の知り合いに探りを入れてみたりしても全くわからない。わからない上に近寄れないとなると知りたくなるのが人のさがと言うもの。


 そこで僕らは屋上のことを徹底的に調べてみようと考え、前に清掃のおじさんが話していた屋上の歴史のことを思い出し、過去の様子を写した写真などがないか探すことにした。


 最初ネットを中心に探してみたが、一枚も見つからないといった結果に僕は驚き同時に違和感を感じた。昔の様子といってもカメラがない時代でもないし、それこそスマホや携帯で写真を撮ることくらいできた時代だ。一枚くらいネットのどこかにあってもいいはずなのに一枚もないのは違和感を感じるなという方が難しい。


 根気強く探していると過去の自治会の活動記録なるホームページに行きついた。


 今はもう更新していないホームページには過去の活動の様子が写真付きで報告されていた。その中で当時は珍しい部類に入る屋上菜園の手伝いをしてヒートアイランド現象の緩和に繋がるなどの学びを得て、他のオフィスビルにも屋上菜園を広げていきたいという文章が見つかった。


 だが肝心のビルの名前と写真がなかったのだ。他の活動報告には必ずある写真がそこだけないことが気になった僕たちは自治会のことを調べていくと、僕が買った自転車屋さんの写真にたどり着いたのだ。


 自転車屋の写真を撮った人のことを調べるため再び今は閉店したおじいちゃんの自転車屋へと向かい、貼ってあった紙に書いてある緊急連絡先へと電話をした僕は直接息子さんと会い写真に関わっているであろう自治会長のことを聞いた。


 最初出会ったときこそ怪訝そうな表情で僕を見た息子さんだったが、おじいちゃんの自転車を見て表情を緩めると僕に許可を得てハンドルを握ってじっと見つめる。


「親父が言ってた最後のお客ってあなたのことだったんですね」


 少し寂しそうだが優しく微笑んだ息子さんはそう言って自転車に優しく触れたあと、自治会長が既に亡くなっていることを教えてくれた上で自治会長の家に連絡をしてくれ、僕たちが見たい屋上の写真があるかを確認させてくれるよう話をつけてくれたのだ。


 その流れから僕たちは当時の自治会長だった酒井さんの家に向かっているわけだ。


「君のおかげで手掛かりがつかめそうだよ」


 メー子が自転車のハンドルを撫でてて褒めている。


「人間関係ってどこで繋がるかわからないもんだよね」


 僕も自分が押している自転車を見て呟く。実際自転車を買ったことでメー子の過去を知る道が繋がっているのだから心からの呟きだ。


「あっ! あの家じゃない?」


 年季の入った自転車を見て感傷に浸っている僕の隣でメー子が声を上げる。勢いよく手指さす手を上下に振るメー子の指先にある家を見た僕は、息子さんに教えてもらった特徴と似ていることにそうであろうと確信を持つ。


「行ってみようか」


「うん」


 元気よく返事をしたメー子がふわりと一回転しながら僕の肩に手をかけると宙に浮いて、足をパタパタさせ水泳のバタ足のような動きで進む。いや、進んでいるのは僕であってメー子は引っ付いているだけなのだが、これが本人曰くかなり楽ちんな移動方法らしい。


 浮いて前に進むにも体力を使うとかなんとか……幽霊になっても色々あるんだなと感心しながら僕たちは酒井さんの家へと向かうのだった。

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