気軽に調べられる世の中だから気になったら調べちゃうよね
休日のお昼、特にやることのない僕はスマホを開いて何気なくオススメされたニュース等を閲覧する。
別に検索したわけでもないのに、なんだか僕が好きそうなニュースや話題をオススメしてくるスマホに不気味さのような違和感を感じながらもついついタップして見てしまう。
そんなことをしてだらだらとした時間を過ごしていると、最近メー子の似顔絵を依頼したからか絵関連の話題がオススメに上がってくる。
何気なくボーっと見ていた僕だが、見たことのある絵が目に留まる。タップして開くとメー子の似顔絵が出てくる。正確には似顔絵をベースにしたもの。
髪の色は違うし、ウインクにピースして表情やポーズまで変わってしまっている。それでも元の絵がメー子の似顔絵であるのは素人の僕にでも分かる。
「ふーん、その髪の色も良さそう。似合うかな?」
いつの間にか僕の隣に来たメー子がスマホを覗き込んで質問してくる。
「似合うと思うよ」
「やった」
自分の髪に触れて喜ぶメー子だが画面を見て悲しそうに目を細める。
「描いてもらった絵が勝手に使われてるんだね。髪の色とポーズを変えて自分で描いたって言ってるの?」
「そうみたいだね。でも」
僕は画面をスクロールして絵に寄せられたコメントをメー子に見せる。そこには絵の上手さを褒める声と、絵のモデルの女の子が可愛いって声に混ざって、絵の出どころとAI使用を疑う声がある。
もともとメー子の似顔絵はピースなんてしておらず表情も違うので、元の絵を知っている僕やメー子は手を加えたことが分かるが、見る人が見たら分かるらしく指の向きや歪みの違和感など細かなところを指摘している。
さらには元の絵を見つけてきてリンクが貼ってあるものだから、コメント欄はかなりの荒れ模様となっている。そんな中だからこそ一つのコメントが僕の目に留まってしまう。
『この絵のモデル誰ですか?』
絵が可愛いからモデルが知りたい人が書いたのかなと思い数件ついている返信をタップして開く。そこには返信ではなく本人が連投して書いたコメントが続いていた。
『誰か知りませんか?』『リンク先の絵が本物ですか?』『リンク先の方がこの絵を描いたんですか?』
必死に尋ねるコメントにここまで反応する人はいなく一人で連投しているだけだが、ようやく反応されたコメントは『必死過ぎww』と煽る一言。
ただ最後に
『この女の子と似た人を探しているんで知りたいんです』
と書かれておりそこに『自分で調べろよ』とか『特定班に頼んでみれば』など数件のコメントがついて終わっていた。
「一週間前か……そんなに知りたいものかな」
言葉から必死な感じがして気になった僕は心で思ったことを口に出してしまう。
「これは私の可愛さに気づいた芸能関係のスカウトが私をデビューさせるために探していると考えられませんかね?」
「考えられませんね」
僕の肩に手をのっけてドヤ顔で言うメー子の発言を速攻否定すると、言った本人はしゅんと肩を落としてわざとらしくいじける。
「でも気にならない? 普通絵を見てここまでモデルが誰か知りたいとか思うかな。たとえばだけどさ、メー子の両親とかが探してるとかいう可能性もあるんじゃないかな?」
「う~ん……どうなんだろ? そんな可能性あるのかな? 分かんないなぁ~」
眉間にしわを寄せて考えるメー子だったが、ふと真顔になって僕を指さす。あまり真顔にならないメー子だけに僕は緊張して生唾を飲み込み喉を鳴らしてしまう。
「そもそも人間だったころの私が誰か分からないわけだし。だって私のこと調べたけど分からなかったんでしょ」
「うっ……なんで調べたこと」
「ふふ~ん、メー子さんは恵人のことなんでも知ってるもんねぇ~。履歴はちゃんと消さないと」
「ぐっ……」
ニヤリと勝ち誇った顔でメー子が僕のことを見てくる。まさか履歴のチェックまでしているとは恐るべき幽霊である。
「調べたって言っても思いつく範囲なんて限られているから、僕の会社があるビルでの飛び降り、事故、事件を調べてみたんだよ。もしかしたらメー子のこと分かるかもしれないって思ったから」
「別に私は知らないままでもいいって言ったのに」
「でも名前とか知れたら……あ、いや、ごめん。勝手に調べて」
「私を知りたかったってことに関しては悪い気はしないけど、相談はしてほしかったなぁ~」
「本当にごめん」
怒るわけではなく腕を組んでジト目を向けるメー子に僕はもう一度頭を下げ謝罪の言葉を述べる。
「いいよ。私のことを思って調べてくれたんでしょ。実際私も調べてみたし」
ニシシと歯を見せ笑うメー子の顔を僕はまじまじと見つめてしまう。
「メー子でいいってのは本当なんだけど、生前どんな人だったのかな? って好奇心はあるからちょっとね。それにあのビル周辺の事件事故なら簡単に見つかるかなぁ~って思うし」
「なんだ、メー子も調べてたんだ……で、何か分かった? ちなみに僕は全然分からなかったけど」
お互いメー子の生前を調べていたことが分かったところで、結果を尋ねるがメー子は首を横に振る。
「ううん、私も分からなかった。地方紙とか小さな記事でしか扱われなかったとか、ずっと昔のことで記録が残っていないとかかなぁ」
僕が調べたときと同じ結論を述べるメー子の言葉を聞いた僕はもう一度コメントに目をやる。
「行方不明の娘を探す親……なんてことはないかな?」
「どうかな? もしそうだとしてもあなたの娘は幽霊ですけど元気にしていますよって話すわけにもいかないし。そもそもなんで似顔絵を描いたか説明できないと思う」
「そりゃそうだ」
メー子に正論を言われて僕は頷くしかなかった。
「じゃあそういうことで、今日の晩御飯は久しぶりにうどん食べに行きたい!」
「うどん!? なんでまた」
「ふふ~ん。今日は何の日でしょ!」
そう言ってメー子がふわっと飛んでカレンダーの日付を指さす。メー子が指さす日付を見て納得した僕は手をポンっと叩く。
「あぁ~、1がつく日はうどんが半額だったね」
「そういうこと! だから食べに行こっ!」
「でも人が沢山いるのにバレずに食べるの難易度高くない?」
「激混みで誰も他人のことなんか見てないから大丈夫! ほらっ、前みたいにコートに隠れて食べればいけって」
Vサインをして自信満々な顔を見せるメー子の言う作戦、ロングコートを着た僕の両膝にメー子を載せ両手をテーブルに置き体を丸めて周囲から隠す方法だがあまり乗り気ではない。
それでも行く気満々なメー子に引っ張られ僕はさきほどのコメントのことは忘れ、夕食のため支度を始めるのである。




