30 各所の決闘
ついに決戦!
…なんですがこれは1回目の決戦。
完結までで言うと20パーも行ってないです。
―屋上。
本来であれば美しい日の出の見えるいい場所だろう。
が、今現在あたり一帯は闇に包まれ、囲まれている。
コツ、コツと一人の男がゆっくりと近づいて来るとともにその後ろからじわじわと闇が迫る。
後ろに後退りするがその後ろすら闇である。
気づけばもう一歩も逃げられぬほど狭まった空間で、連我は覚悟し、ぐっと目を閉じた―。
遡ること数分前。
屋上にて互いに挨拶を交わそうとした時、それは起きた。
突如周囲の空間が裂け、闇ができる。
その闇―もといワープゲートに硬介だけは見覚えがあった。
「やあ、久方ぶりですね」
そう言ってゆっくりとこちらへ歩いてくる男―この前ノルマを連れて帰ったワープと名乗る男。
「気をつけろ!!この闇はワープだ、吸われるぞ!」
と、声をかける。
既に先ほど会った冒険者の4名ほどが見当たらない。
「まあまあ、そう警戒なさらずに。
今日、我々のもとに来るんでしょう?
ならば先にこちらからご招待させていただこうかと」
後ろに居た4人の足元にぽっかりとワープが出現する。
声も上げず次々と減っていっていることに、ワープをみている連我たちは気づいていない。
「なんでその情報がお前らに…んで俺たちを何処へ連れて行く気だ!!」
「ああそれは…企業秘密とさせていただきます。
ですが連れて行く場所は貴方達の目指すアジトですよ。
あなたたちは個々の戦績が高く、冒勇隊などと組まれては四天王やタイムが危うい。
そんなことになれば我々の十数年保ち続け勢力を拡大してきたその均衡が崩れる。
なので僭越ながら―…散り散りになって死んでいただきます。」
ニヤリと笑みを浮かべ、一呼吸置き―…
『空間飛砲』
直後周囲を取り囲むワープゲートから何かが発射される。
何かは見えずわからない―…それでも、当たった人がふっと消えるその現象から、それがミニワープゲート弾であることは容易に想像できた。
まずい、反応が追いつかない―…
振り返った連我は、音もなく自分に向けて一直線に飛んでくるその弾を見て―…瞬間、体当たりにより地面に倒れ回避する。
「柔音!!」
連我を突き飛ばし助けた柔音は、その伸ばした手が届くあと一歩の所でふっとワープに呑まれ消える。
「く…っ」
空を切った連我の手を支えにそのままパッと立ち上がり、見渡す周囲には連我しか残っていなかった。
前からはコツ、コツと男が近づく。
男はワープの中に居ても吸われず普通に歩けるようだ。
もう逃げ場はない。
デタラメに放った攻撃は全てワープに呑まれる。
周囲が全て闇に染まった逃げ場のない空間で、連我は覚悟しぐっと目を閉じた―。
「“年ノ譜”『第捌ノ暦』―照りし斜陽の刺突―」
連我が吸い込まれた後、突如まるで天から聞こえるように辺りに響く声とともに闇はかき消された。
ワープはすんでの所でゲートに飛び込む。
誰も居なくなり瓦礫だけが残された屋上で、
チッ、と唇を噛み悔しそうな表情を見せながら、腕を組み空を見上げるその人物―冒勇隊No.1、陰陽は、
自分達が本来のルートで乗り込むまでの間、連我達に生きていてくれ、とただ祈るしか無かった。
「…ん…っ」
恐る恐る柔音が目を開ける。
目をこすり体を起こして周りを見る。
遠くまでずっと続く廊下に数え切れないほどの襖、いくつもの曲がり角。
木造でほのかに明るく、本来ならどこかの宿のように思えるであろうその空間は、どこか異様な雰囲気を放っていた。
物音すらしない静まり返った空間に柔音ただ一人。
恐る恐る近くの襖に手を伸ばし、そーっと隙間を開けて中を見る。
中は畳の部屋で、がらんとしていて何もなかった。
そのままするりと中に入る。
恐らく、皆分断されていると考えたほうがいいだろう。
「連我…探さなきゃ、連我と一緒なら敵が来ても安心だし…けどまずは探索からだよね、能力は体力すぐなくなるし…何かアイテム見つけなきゃ」
◇◆◇
「おーい、柔音ー!誰か居ないのかー?」
屋内のスタジアムを彷彿とさせる一面人工芝の場所で、
連我は必死に呼びかけていた。
遠くから何か音が聞こえる。
誰か―…
瞬間、数人の冒険者が壁を破り砂ぼこりとともに飛んでくる。
そしてその奥から1人、異形な影が近づいてくる。
姿は人、しかし右腕だけが巨大化している。
全体的にムキムキの筋肉と軽く2メートルは超えるであろう身長に圧倒される。
目は両目とも赤く染まり、その目に瞳孔はない。
男が口を開く。
「汝等は強者か…真正面から立ち向かう勇者か…?
選べ、犬死か、無駄死か!!」
◆◇◆
ワープをあと一歩捉えられなかった陰陽はホテル一階奥にて映像を繋ぎ、読歩と話していた。
「えーと…ふむふむ、ありました四天王、
四天王―…力、炎、雷、銅像の4人で構成されるタイム直属の部下。
力は真正面からの戦闘を、炎は罠でのサイレントキルを、雷は短期決戦を、銅像は頭脳戦を強いてくるとのこと。」
パタリ、と本を閉じ読歩が呟く。
「あの場にいる冒勇隊は数えるほど。
後続の到着まで持つかどうか。
―面倒にならないといいけど。
僕は連我一行の記憶を読んだのでわかりますが―…
連我、そして柔音―…居合わせたメンバーが出せる物を最大限引き出す力、連携力は素晴らしいと言えます。
が―…離れている以上互いに全力は出せないでしょう。あまり無理をさせるわけには―…お願いします、陰陽さん」
「わかっている、式神は向かわせているが後を追ってすぐに出発する。
情報をありがとう。」
そう言うと通話を切り入り口の方へ歩いていく。
太陽は、もうしっかり照っていた。
読歩の能力、書斎はあらゆる本を取り寄せ自在に使用できる能力です。
絵本やら小説から未発見の書物、魔導書、ひいては他人の記憶本まで…
読歩が読んだ連我と柔音の過去とは一体―?
追々明かされていきます。




