27 決戦へ
「…弾…?お、おい、大、丈夫か…?」
俯き微動だにしない弾に恐る恐る硬介が声をかける。
弾は何も答えずこちらへフラフラと歩いてくる。
と、いきなりガシッと示の胸ぐらをつかみキッと睨む。
「どう…して…どうして助けたんや!!
こんな…こんな…地獄なら…いっそさっき死んどけば…なんで…なんで…っ」
泣きそうな声で訴えかける。
「弾…ちょっと落ち着けよ…」
慌てて連我が止めに入ろうとする。
弾の手を示すから振りほどこうと掴む―その手はパシッと払われた。
驚き弾の顔を見ると、目に涙を浮かべその顔に生気はなく、それでも誰に向けるでもない怒りは汲み取れた。
「黙れよ人殺し野郎…お前なんかにこの気持ちが伝わっかよ…!」
「………は?」
「味方の命失ったけど頑張って冒険者やってますって?
敵を殺すのが心が痛むって?
どうせそうやって周りに功績撒き散らして間違ってないって肯定を、よくやったって賞賛をもらいたいだけなんだろ…?
自分語りほどほどにしろよ…!
奪った命の数語って武勇伝気取りかよ!!
そんな命を軽く見る奴に、こんな…こんな気持ち伝わるわけねぇだろ…」
「…え…いや…俺は何も…っ…そんな…」
1歩、2歩と後退する。
振りほどこうと強く掴んだその手も力なく離した。
「幼い頃からずっと一緒だったんだ!!
ずっと、ずっと…それなのにこんな所で俺だけ生き残るなんてあいつらに顔向けできっかよ!!
いっそ…いっそここで全部…」
引きつった顔は狂気にも思える。
ガタガタと震える手で大きな輪ゴムを出し、首にかけ絞めようとする。
「まて弾!そんな能力の使い方駄目だ!!」
硬介が止めても止まらず、命を絶とうとする―。
と、フラリと弾が前に倒れ込んだ。
「…ごめん、取り乱すよね。
いきなり知らせるべきじゃなかった。もっと配慮するべきだった。」
―矛が後ろから手刀で気絶させたようだ。
数秒間をおいて両刃が全員に、そして連我に言う。
「とにかく、これ以上被害が出ることはなくなった。
失ったものも大きいが、改めて皆よくやってくれた。
連我、君達は―どうだ、やっていけるか?
もし気持ちがしんどいなら冒勇隊で休むといい。
我々が本来対処すべき物を君達一般冒険者に対処させてしまったのが原因だ。本当にすまなかった。
だから―…」
「…大丈夫です」
「…本当に…良いのか?」
「俺はこうやって進んでいくって決めましたから。
どの道家族に会うため、記憶を取り戻すためにはこっちの道に進まなきゃ始まらない気がするんです。
これはただの勘なんで根拠もないけど…
どうせ進んだ先で後悔するなら、勘でも何でもいいから自分で思ったとおりに進みたい。
だから、俺は大丈夫です」
「…そうか。
…この国の戦争は厳密に言えばまだ終わっちゃいない。
君が進もうとするその道は、殺し殺されそれが世に出ない暗い世界だ。
それでも、どうしてもというなら1つだけ。
戦いにおいて最もやってはならないことが自己犠牲の精神に陥ることだ。
誰かを守りたい、こう生きていきたい、そう思うのはいいがそれを達成するために自らを殺してはならない。
胸張って主張貫いて俺だけでも生きてやる、って戦え。
そうすりゃあきっと道の果ては自分の目で見れるさ。」
そう言うとクルリと後ろを向き、ホテル内部へと歩き出す。
「冒勇隊諸君、少し屋根のあるところへ行こう。
今回の件と読歩から届いたデータでようやく位置が割り出せた。
…それと連我や仲間たち、君達が望むのなら―…覚悟が出来たなら―…君達も聞くべき話だ。
──フハイや君達がこれまで戦った敵を差し向けたであろう幹部達のアジトが1つ特定された。
この場で本部と繋ぎ、緊急会議を行う。
過去に因縁が、そしてそれを断ち切れれば晴れやかな未来が待っている者たちを集め、そこへ乗り込むための、な」
連我は大きく息を吸い込み、スーッと吐く。
「…兄ちゃん、俺は行く。
寮大や木三の思いを継がなきゃだし、
それにさっきチラッと強乃達は生きてはいる、昏睡だって言ってた。
なんとかできるかもしれないからね。
…柔音は…どうする?」
「私は連我についてくって決めてるから。
連我が1番信頼置けるし連我と離れて住むとこもないから、ね」
「そっか、ありがとう。
……んじゃ、行こうか」
冒勇隊の集まるとフロントへ歩き出す連我と柔音。
と、数泊遅れて走って硬介が隣に合流する。
「兄ちゃん…?」
「連我が覚悟決めてんのに黙って送り出せっかよ、せっかく会えたんだしついていくよ。
ちょっとは兄らしさ見せたいしなー。
それに、俺を洗脳したやつに挨拶にいかねぇと、な」
―こうして始まった会議は数時間に及び、1ヶ月後この場所にて再び合流、決算へ向かうということになった。
まだこの物語は、始まったばかりだ。




