23 木三:意地
木三VSフハイに差し向けられた攻撃的な植物の
『7つのオーパーツ』無限水筒の攻防戦、終幕の時—。
360°至る所から絶えず襲い来る植物を必死に受け流す木三。
しかし傷ついた体ではまともに動くこともできず、
能力の強さでも完全に押し負けており時間の問題だった。
木三は考える—ここから勝つ方法は。
連我ならどうするか。
—きっと連我なら機転を利かし周りの物を利用するはずだ。
連我の今までの戦いの話や実際ピエロ戦で見た動きからそう推測できる。
だが現状周りには自分を取り囲む植物のみ。
それに周りばかり観察していてはすぐ懐に入られそうになり危険だ。
外に出ようにも入り口は植物に覆われていてどうにもならない。
強いて言うなら無限水筒から流れ出た水が流れる水路が道路より一段低くなっている影響で外へ続いている—が、人間が、それもこんな状況で素早くくぐることは不可能だろう。
木三はもっと柔軟に考えろ、何か、何かと脳内で自分を急かし考える。
止むことのない攻撃と防御し続けることによる疲労、
そして怪我から焦る気持ちが大きくなる。
周りを何度も見渡す。
床を覆う植物、塞がれた入口、無限水筒、天井の人質—…水路。
くっ、と歯を強く噛む。
「これしか…なさそうだな…たった1つ…確実にこっから抜け出して完封できる方法…思いついたぞ…」
そう言い屈んで地面にそっと右手を置き、キッと顔を上げ水路を見る。
「生えろ!『苗木』ッ!」
その水路から細く小さな苗木が数本生える。
それは水路を壊すには十分立派な物だった。
ガラガラと水路が崩れ、苗木が骨組みとなって崩れた岩が枝に挟まり、水路が埋まる。
流れていくところを失った水は水路を増水させまたたく間に溢れ、足元を濡らし始める。
「この植物、地球で生まれた天然物なら当たり前にどの植物も持ってる機能が欠けてんだよ。
攻撃性持たすために植物を地面から離れささなきゃいけない。
腹や顔を狙うようによ~く作られてやがる。
が、そのおかげで、
地面に固定するという植物として生きるための当たり前の機能が欠けてんだよ!!」
と、誰に言うでもなく高らかに言う。
その言葉通り水が増水し始めると簡単に浮き上がる。
「我慢勝負といこうぜ植物軍団…
俺は水中で動きが鈍るから防御ができず、呼吸もできない。
植物は水につかったら浮いてしまい話にならず、
俺の下位互換と言える能力でも引き裂くことは出来るだろう。
さて、俺の呼吸と体力か植物の再生力、どっちが勝つか試させてもらうぜ…!」
そう言い終わるやいなや、どんどん増していた水位は木三の頭まで到達した。
“くそ…なかなか固いな…”
水中で木三は植物の塊をつかんでは次々と枝で引き裂いていた。が、予想外に生命力が高く苦戦する。
“天井のユグの父親まで水没する前に決着つけねぇと…”
入り口の苗木は水をたっぷり吸い成長し、水に流されそうな入り口の植物を骨組みとなり瓦礫とともに押さえている。
わずか20数秒、固まりの大方に傷を入れ木や地面から引き剥がすことに成功する。
“あとは…”
息を止めているのが限界に近づく中、両手で力を振り絞り枝をぐっと構え、巨木の内壁を思いっきり蹴って入り口を目指す。
(「解…除…っ」)
ゴボゴボと息を吐き出しながら声にならない声を出す。
入り口の瓦礫を押さえていた骨組みの変わりの苗木がへにゃっと倒れ、壁が脆くなる。
そこにすかさず木三渾身のタックルが決まる。
その瞬間、入り口から濁流が流れ出る。
水路をあふれそうなほどの激流が放出される。
木三はというとその濁流に押し流され水路の壁に体を打ちつけ、その衝撃、そして植物に受けた傷で朦朧とする。
今にも力尽きそうな意識の中、何か輝くものが直ぐ側を通り過ぎるのを目撃する。
「駄目だ…っ」
必死に伸ばした手は、奇しくも届かない。
その輝くもの―…無限水筒は、水に押し流され町のどこかの水路へと流れていった。
「く…っ…」
木三はなんとかそれでも水路から這い上がることには成功した。
水を含んだ服のせいか、あるいはもう体が、脳が動きたくないと言っているのか、体が凄く重く感じた。
巨木の入り口までわずか数メートル、それを必死に這いずって進む。
全身は水で濡れ、それでも血は止まらずに服の一部を赤く染めている。
死人のような顔で、それでも諦めるものかと一歩一歩進んでいく。
「生ぎ…るんだ…っ…生きて…あの子の父親を…っ…
感謝を…っ…皆に…貰う…貰うんだ…見てろ…今に…また笑って…」
苦し紛れの笑みを見せながら入り口へたどり着く。
嬉しいことに弱りきった植物に大人を支える力は残っておらずダラリと垂れて地上から1.5メートルほどの高さにユグの父親は引っかかっている。
通常ならば手を伸ばさずとも助けられるその距離が、
地面に這いつくばる木三にはそれでも高く届くはずのないものだった。
その垂れ下がる植物の1本が弱々しくピクリと動き、
トスリと無情にも木三の右横腹を刺す。
「どんっだけ…タフかよ…」
木三は考える。
今この場で何もしなければ助けが来るかもしれない。
だが来なければ死ぬだろう。
きっと無限水筒画無くなれば人質など要らないはずで、ユグの父親すらも命が危ない。
今能力を使用すればユグの父親を助けられるはずだ。
だが、心身共に限界な体で能力を酷使すれば俺は—…
弱々しく笑いを見せる。
「決まってんだよな…答え…はさ…連我、見てろ…俺だって…柔音思う気持ち…負けてねぇからさ…柔音…頑張ったね、って…お疲れ様って…言ってくれるかな…
悲しいな…きっと…もっと楽しい話が2人とできたのにさ…
弾、強乃、俺、俺は…楽しかったよ。ありがとう。
能力、『抱樹ノ苗木』—…」
目に涙を浮かべ、口元は口角が少し上がったまま、木三は静かに目を閉じる。
結局生まれ育った町を出ていくことなく、
冒険者って呼べる人生だったかといえば違う。
けど、自分で満足できる人生だったと思った。
そしてきっと、根拠もないけど何故か自然と、母も満足してくれると、そう思える人生だった—。
避難所で他の住民と帰りを待っていたユグはいつの間にかうとうとしていた。
が、外を見張っていた住民の声で目が覚める。
「これは…無限水筒じゃないか!何故ここに流れて?」
転けそうになりながら慌てて外に飛び出す。
ちょうど見張りが水路から光の玉に包まれた無限水筒を持ち上げたところだった。
無限水筒がここにあるので新たな水が生成されず、いつもより流れが弱い。
「木三…さん…私のお父さんは…無事なの…?」
それを見て咄嗟に大樹の方を見る。
遠くから、誰かが降りてくる。
だんだん近づいてきて分かる、それはユグの父親だった。
そして背中には木三が背負われている。
「お父さん!それに木三さんも!どうしたの!?」
安心しユグが駆け寄る。
「あぁ、ユグ、無事に避難所に行けたんだな、良かった。」
「うん、お父さんが背負ってるその人のおかげでね!
お父さん、元気ないけどどうしたの…?
木三さんも、意識ないの…?」
だが、その質問には答えず、ただ俯いて避難所の中へ入っていく。
「ちょっと待ってよお父さん!」
慌ててついて入るユグは、確かに聞いた。
よくぞご無事で、と町長の無事を安堵する声に混じり、木三に聴診器を当てた医者の小さな声を。
「こちらの方は…残念ながらもう既に亡くなっております。」
と。
木三—植物との戦いの末、死亡。
死因、度重なる流血、打撲による心身共に消耗状態下での能力使用による衰弱死。
弾、木三、強乃の3人で1番連我との理解度が高かった木三。
最後まで味方を思い儚く散りました。
次回、そんな思いを託された弾の元に現れた『新7教』の1人ノルマVS助っ人参戦冒勇隊の戦いです。
主人公君にはもうちょいだけ待機しててもらって…
あと2話ぐらい…




