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22 ただ1言君に

ユグを住民たちが避難している避難所—強乃のいる所とはまた別の—に預けた後、木三は町の中心地にある巨木へとたどり着いた。


「ここ、か…?」


巨木は根元に2メートルほどの穴があり、中に入れるようになっていた。

その穴からは水が流れ出し大きな川となって町中へ流れていっている。


「この水は一体どこから…もしやこれが無限水筒とやらの力か…?」


そう思い木の中に入ってみる。

思った通り、神々しく照らされた空間の中で光の玉の中で下向きになった無限水筒があった。

どういう原理かはわからないが浮いており、水が止まらず流れ出し川へと続く。


「…これがこの町全体の水源となって…

確かにこいつが生命線だし取られたくない、ってのもわかるか…

そういやユグの父親は—…」


そういい周囲を見渡す。

木の内部にはツタが生い茂り、光の玉から発せられる柔い光と合わさり神秘的な空間へと仕上がっている。

しかしそのツタに木三は見覚えがあった。


「まさか!!」


次の瞬間、あの見慣れた奇形植物が木の入り口の穴をふさぐ。

天井を見上げた木三は、そこに奇形植物のツタにぐるぐる巻きにされた男性が気を失い吊り下げられていることに気がついた。


「敵は既に到着して—…罠か!!」

考える間もなく狭い閉鎖空間で体を貫く勢いでツタがあらゆる方向から攻撃してくる。

木三は対抗しようとするが木三の能力は苗木程度の小さな木を生やし操ったり

近くの木を操れる能力。

地面は奇形植物が床となり苗木は押し負けて折れてしまう。

巨木を操って脱出しようにももし穴が崩壊すれば木三も男性もそして無限水筒ですらも下敷きになって終わりだろう。

折れた苗木を振り回し必死に抵抗するが追い詰められていく。

360°どこから来るか分からない攻撃に対処しきれず、程なくして右太腿をツタが貫いた。


「うがああああっ!!」

その強烈な痛みで思わず倒れてしまう。

倒れてうずくまり傷口を押さえる木三に対し、攻撃は止むことなく続き大怪我は避けられているものの腕、顔、体とどんどん傷がついていく。


「ぐっ…あぐっ…」

攻撃が当たるたびに激しい激痛が木三の体を襲う。

丸まって必死に頭と腹を守る木三は、真横からの攻撃で巨木の幹に叩きつけられた。


—木三が冒険者になったきっかけは些細なものだった。

小さい頃、特に将来の夢がなかった木三は仲のいい弾の夢を真似して冒険者と書いていた。

ある日参観で母親が木三の書いた冒険者という夢を見て驚いたと言う。

木三の母親が学生の頃冒険者という存在を知り、興味を持った。だがその頃はまだ冒険者という職業ができたばかりであった為、周りから反対を受け諦めたと言う。

そんな冒険者に、自分の息子がなりたいと言ったことが嬉しかったそうだ。

それを聞きジーンとする感覚になったことは今でも覚えている。

それから程なく、母は病気で呆気なく死んでしまった。

あんなに喜んでくれていた母のために、

冒険者を目指してみようと思った木三は、冒険者兼何でも屋を弾と、そこに加わった強乃と開いたのだった。


幹に叩きつけられた木三はそのままゴロリと仰向けになり、無限水筒の光が届かず薄暗い天井に吊るされているユグの父親をみる。


「生まれ育ったこの町から出もせずに…人1人守れずに…なにが冒険者だ…人を助けあちこちを周る、そんな冒険者に、俺は—…」

こんなことになるならユグ、あの子の頼みなんて聞かないで自分のやるべきこと、仲間との合流に尽力すべきだった—…

震える手を伸ばす。

涙で視界がぼやける。

その脳内に、連我の顔が浮かび上がる。

あの時、カードに囚われた人々を救う為、自ら得体のしれない所へと足を踏み入れていった連我。

周りの人の為に自分の命をかけたのだ。

周りの人間全員を生かさなきゃいけない理由なんてない。

連我があそこまでして柔音を守り生かそうとする理由、それはただ好きだからだ。

それだけの理由—けど、それだけの理由で皆の命の安全を、柔音の心を掴み取ったのだ。


「…ちくしょう…やってられっかよ…」

伸ばしたてを力なく目元に落とし涙を拭う。

力を入れると痛む足で、傷だらけの体にムチを打って立ち上がる。


「連我…俺ほんと尊敬してる…けど、

俺だって柔音が好きだ…会ったばっかでよ…一目惚れだよちくしょう、そう簡単に渡してられっかよ!」


そう言い、ヨロヨロと、しかし一歩一歩地面を踏みしめて無限水筒へとたどり着く。

そこから流れ出る水をひとすくいし、顔を擦った。

決意を固めて攻撃の態勢をとる。


「こいよ、植物なんかに負けてたまるかよ…

俺だっていいとこ見せて、頑張ったねの1言ぐらい、友達だよの認定ぐらい貰ってやる…!

父親連れてユグに会わせて、笑顔でピースサイン決めてやるぞ!」


「全てはただ一言…この戦いが終わったら柔音に、ただ君に一言喜びの言葉をもらうために」


◇◆◇

「その程度の弱い、何の捻りもない普通の攻撃が僕に通ると思ってるわけ?」


場面は変わりホテルフロントで戦闘中の弾は絶望していた。

自身の最大威力で輪ゴムを発射しても一切のガードもしていないノルマには効いていない。


「先に言っとくけど僕はどっかのペタトラみたいに逃げたりしないからね。

一度戦いを始めた相手は殺さないと気がすまないからね。」


「なんで効かへんのや…教えろ!なんかギミックがあるんか?」


「そんなこと敵に教えるはずないでしょ?

君思考回路どーなってんの?普通じゃないよね。

その教えてもらえるって思う浅はかな思考も攻撃すらもあまりに端的で見てて恥ずかしいよほんとに。

ってなんだぁぁ!?」


突如ノルマはコンクリートの波にのまれた。

「音がしたから来たけど敵に探知されてたか」


「硬介さん!」


「よ、温泉ぶり。

今のうちに避難所の人は早く逃げろ!腐敗でコンクリも長くは持たない!」


「わかりました!」

脱出の機会をうかがっていた強乃が10数人ほどの住民を率いて避難所へ向かう。

その一行が曲がり角を曲がってすぐ、コンクリが破られる。


「挨拶もなくいきなり埋葬されても困るんだけど。

お前の脳回路普通じゃないよ。

ほんと冒険者には普通なやつがいなくて腹が立つね。

優秀で完璧な僕との差を知るがいいさ。」


「来る…」

次の瞬間、目にも止まらぬ速さで弾の体は地面に打ち付けられる。

咄嗟に防御の壁を作った硬介も一撃で壁を破られ蹴りによりホテルの柱に激突する。


「あれ、2人共もうダウンかな?威勢良く戦い挑んどいてこれは無様だね。

愚かな凡人の典型例って感じだ。

まずは煽り散らかしてくれた君から死のうか。」


そう言い弾の胸元をつかんで持ち上げる。

弾は力が入らず睨むことしかできなかった。


「これでわかったろ?君は凡人で取りえのない普通の人間で、僕の言っていることが正しいってこと。 始めっから僕の下について大人しく奴隷にでもなってくれりゃこんなことにはならなかったんだけどねぇ。

さよなら—…」


「待てよ」


「まさか…矛盾コンビより先に…こんな所で遭遇とは…」


「そいつらを殺す前に俺ら殺しな、重要指名手配中の7人の1人だよね、ノルマさん」


「次から次に何人僕の邪魔をすりゃ気が済む!?

予定が狂うノルマを果たしていない普通じゃない展開………あー…最高に気色悪いよ」


「そうかい、そりゃ褒め言葉ありがとう。

こちとらさっき町はずれでお前のお仲間さんと一戦してきて疲れてるんでね。

さっさとお前も撤退してもらってもいいかな?」


「いいわけ無いだろう邪魔をしておいて!!

あの逃亡負け犬野郎と一緒にするなよキチガイ集団!

この尊大な僕の優秀で完璧な計画を狂わせた罰だ、全員ぶっ殺してやるよクソども!!」


「冒勇隊、矛盾コンビ救出部隊、全力で迎え撃つ、ってな。

その怒りが焦りに変わらないように注意しなよ、ノルマくん」

計画を狂わされ怒りをあらわにするノルマに対し、

冒勇隊が武器を構え戦闘態勢をとった。



そろそろお別れの用意を。

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