21 混戦
「なんなんですかこの人!?敵みたいですけど…」
入口は1つしかない避難所—というよりもシェルターという表現がただしいほど暗く狭いが—そこから住民を逃がすこともできそうにないため後ろに下がらせつつ
強乃が弾に問う。
「俺もわからへん、町中でいきなり襲撃受けて今凌ぎつつ逃げてたんや…!
『跳多弾』…っ!!」
返答しつつ手で銃のような形を作り唱える。
指先から小さな輪ゴムがいくつも飛び出し瓦礫にバウンドしつつノルマに命中する。
が、服に砂はついてもダメージは0のようだ。
ノルマがはぁ、と面倒くさそうにそれを見てため息をつく。
「そんなんじゃダメージなんて通るわけないだろう。
たかが冒険者に憧れただけの何の才能も信念もない凡人の薄い考えで立ち向かおうだなんて普通じゃない。
それじゃただの異常者さ」
「頂点に立つ者の力でねじ伏せてあげよう。
『絶対平均』—…」
そうノルマが発した瞬間、空気が張り詰め、キーンとした音が脳内に響く。
地下にある避難所から上を見上げる形で応戦していた弾と強乃は、ノルマの後ろに半透明な天秤が浮いているように見えた。
頭が打ち付けられるような音が何度も響きズキズキと痛んで何も考えられず意味もなく耳をふさいでよろけながらなんとか立っておくことしかできない。
やがて耳鳴りが収まり、意識が戻ってくる。
だが何故か外傷もなければ感覚もいつも通りだった。
「さて、上がっておいでよ。君達が僕に挑むというのなら、ね。
そこにいる低脳達を守りながら戦われた所で勝負は見えすぎているからね。せめて条件を揃えなきゃ」
それを聞き、崩壊した入り口の瓦礫を登っていく弾。
「弾…行くの…?」
できる限り意識していた敬語に意識を向ける余裕がなくそのまま尋ねる。
「…ああ、誰かが足止めしな全員死んでまうんやから。この場で唯一前線張れる俺に任せとけ!」
そう言い軽くグッドサインを見せた後、最後の瓦礫を登って外に出る。
「さ、ノルマって言ったか、やれるとこまでやってみよか」
と、拳を胸の前で突き合わせ覚悟を決めて言う。
「1分程度は持ってくれよ、凡人君」
対して余裕そうなノルマは煽るように返答した。
◆◇◆
「瞬飛と光を返せっ!」
01の大振りの攻撃は空をかすめる。
一時も気を抜けない冒勇隊とペタトラの戦いは依然両者一歩も引かず、と言ったところだ。
「最っ高に良い、最高の攻撃…!
とても激しく高威力で醜いこと。
貴方達が誇れる唯一の取り柄を存分に見せつけるために頑張っているのね」
ペタトラのテンションが上がり、それにより攻撃力が増す—…その最中攻撃を避け隙を狙って攻撃を仕掛けを繰り返しながら示が問う。
「お前の目的はなんなんだペタトラ!
新7教が何の用があってここに!!」
「言っているでしょう、私の役目は貴方達の足止めであると。
それ以上でもそれ以下でもないことよ?」
「…なら、この場から俺らが撤退すれば2人を自由にしてくれるってのか?」
「いや、それは不可能よ」
「…やっぱ別の目的があるんじゃないのか!!
答えろよペタトラ!」
その時、突然ペタトラは攻撃をやめた。
5メートルほどの距離、お互い警戒しつつもその場に立つ。
数秒、睨み合いが続いた後ペタトラが口を開く。
「私は戦えればそれでいいんだよ。
戦って勝ったやつが正義で絶対で、
だから強い者に挑んで勝って私の正義を証明する。
それが目的だ。これで満足か?」
「なんだよそれ。戦闘狂にかまってる暇はねぇんだよ」
「戦闘狂…たしかにね。
けど考えてみなよ。圧倒的な強者、勝てないと分かる相手に挑む馬鹿がどこにいる?いないよねぇ?じゃあさ、戦いで勝ち残った強いやつが絶対で王なら反逆なんて起こらない。戦争なんて戦いなんてなくなるんだ。
400年前の人や君たちの望んだ平和への道さ。
戦い、殺し合い、勝ち残ったやつが正義で王でそれ以外は下僕で奴隷、反逆も戦争も起こらない。
素晴らしいよねぇ?」
と、語りかけるように話すその顔はだんだん狂気に満ちていく。
「それのどこが平和だよ。
武力行使の押さえつけは国一個滅ぶ跳ね返りが来るって能力戦争の話知ってて学ばなかったかよ低脳が。
俺ら冒勇隊はそういう危険思想排除して平和に必死に近づけてんだ。
アホみたいな考え持って凸ってくんなどけよペタトラ。」
「平和に近づける?私達のことを平気で殺しておいて自らを棚に上げて人のこと危険思想だのほざかないでもらえる?
結果君達のやってることだって私達みたいな違う意見の持ち主を排除して支配するってことだ。
私の言ってることと変わらないじゃない。
認めなよ冒勇隊さん。武力行使しか平和の道はない、ってさぁ!」
言い終わるやいなやハンマーを振りかざし示に飛びかかる。
ハンマーが当たる直前、示は少し俯いたまま唱える。
『通行止め』
またもや禁止マークが、今度は標識を使わない大きなマークが、盾のように出現し攻撃を受け止める。
まるで空気に弾かれたかのようにペタトラは弾き返され着地する。
「俺は、俺らは認めねぇよ。
能力使うしお前らの言う通り殺人だってするけどよ、決して俺らから手出しはしない。
お前らが犯罪行為を犯し、誰かの大切なものを狂わしたとき初めて武力で攻め入ってるんだ。
俺らは善人じゃない。どっちかと言えば俺らも立派な犯罪者だ。けど、お前らみたいな奴らの排除なんて善人には到底不可能だ。だから俺らがここで少しでも平和を思って異常者を排除することで未来のために1%でも役に立つんだ。
そんでいつかきっと平和にたどり着く日が来る。
平和をつかみ取る奴がでるさ。
—できればその時をこの目で見られるように、
笑って皆でその時を迎えられるように死ぬわけにはいけない。仲間を失いたくない。
だからお前に連れ去られるのも殺されるのも勘弁だ。
もう一回言うぜ。どけ、ペタトラ。」
そしてペタトラには聞こえないよう聞く。
「両刃さん、そろそろ行けるか?」
「うん、いつでも」
「頼んだ」
瞬間、ズババババという音とともに一直線にビームが通ったような焦げ後がつく。
地面には細かい切り傷のような跡がついており、
それはその一直線上のペタトラも同じだった。
浅く、しかし細かく切り傷のつけられたペタトラは
まさか…と思いつつポケットを確認する。
そこに圧縮したはずの光と瞬飛の立方体はなかった。
「さ、お前がどかないならこれでこっちは容赦なくぶっ潰せるけど、どうする?」
「なるほど、これが冒勇隊のトップなのね…
わかった、望み通り引くとしましょう。
次拳を交えるとき、あなた方の取り柄全てをへし折ってやるから覚悟することね…」
そう言い指をパチンと鳴らす。
「私の作戦は失敗、仲間は返してやる。
相手全員を叩きのめし屈服させない限り私は私が勝ったと認めないから。」
そう言うとペタトラは町に向かわず撤収した。
◇◆◇
「やあ、見つけるのに苦労したよぉ」
コツリ、コツリと荒廃した町中で1人余裕そうな男が歩いてくる。
「…矛と盾、あんたらの言うこと、正しいみたいだな。
やっぱ俺狙いか?」
建物の影から連我が1人で姿を現す。
物陰からは矛と盾、そして柔音が様子をうかがう。
連我が気を引き柔音が逃げ道を塞いで足止め、
動きを封じた時に実力者の矛と盾で一気に決める作戦だ。
「そうさ、話が早くて助かるよ。
これから君を僭越ながら半殺しにしなきゃあならないからね。
無駄に死に行く人会話したくなんてないんからさぁ。
こうしっかりと状況理解してくれてると楽だね」
「なんで俺1人狙ってんのに町全体めちゃくちゃにしたんだ?
町の人々は関係ねぇだろ?」
男は足を止め、さも当然という口振りで満足気に答える。
「そうかぁ、それぐらいは教えてあげる。
人々が僕一人の力で恐怖や痛みに顔を歪め必死に逃げ惑うそれが見たいからさ。
わからない?僕一人がこの町にいる大勢をコントロールしてるんだ、って、僕が、圧倒的上の立場に立ってるってそう感じれるからさぁ!」
「ま、碌な動機じゃないとは思ったが思った以上にお前クズだな…
…お前、何されても文句言う権利ねぇぞ?」
「そうかな、そうかもねぇ。
それは僕を倒せたらの話だけどねぇ。
今や僕の腐敗は町中に広がってる。
僕らの共同研究によって生み出した腐敗せず生物を襲う奇形植物が町を蔓延ってる。
君は何かできることがあるのかな?
それとも、」
男は勝ち誇ったように続ける。
「その物陰に隠れてるお仲間さん方が、何かおもてなしをしてくれるのかな?」
この戦いもあと3、4話続きそうです。
次回あたり少し内容重くなりそう。




