17 全てを腐らすモノ
第1部で1番気持ち悪い敵がでます。
―脱衣所で話し込むわけにもいかないので風呂場に入り、露天風呂に浸かりながら改めて聞く。
「…で、なんで兄ちゃんがここに?」
「俺はあの後村に行ってな。
初めは襲われると避けられたが村の警備をし始めて今ではすっかり打ち解けたんだ。
で、ちょっと羽伸ばしにと村の連中数人と来たんだ。」
―あの村の人達。
優しかったのは上っ面で、依頼を断ったら罵るような人達。
連我は許してはいないし会いたくもなかった。
「…村の奴らは?」
「夜の絶景を見に行く、ってよ。
俺は疲れたから別行動で温泉でゆっくりしに来たが…で、なんで連我はここに?
てっきりもっと遠くに行ってるもんだと…
それに、その人達は?こないだ一緒だった少年は別行動なのか」
「落ち着け、1個ずつ説明する。
まずこないだの少年―…療大は、あの2週間ほど後に闘いの中で死んだ。
更にここに来る途中変なサーカスに巻き込まれて
あれ以降2度もたたかってる。
ちなみにそこにいるのがその時であった弾と
木三だ。
途中冒勇隊ってとこの人に、会ってこれ以上は組織?に狙われかねないから戦いに首突っ込むなって言われた。
俺は今、あてもなく行きたい方へ進んでる。
ただ、心の奥でひっそりと療大を殺した組織を潰したいって思ってる。
あんまり遠くに行かないのはこの地で療大の敵が撃てるかもしれないからだ。
これで一通り伝わったか…?」
状況を飲み込めていない硬介の横から、聞いていた弾が口を出す。
「…そゆことやったんか。
たしかに言いたいことはわかった。ワイらも知れて良かったわ。
…けどな、療大って人は知らんけども、
きっと敵を討ってほしいとかは思ってないんとちゃうか?
ワイから見たらお前は今自らの生き方が間違ってないと必死になって見せてるようにしか思えへんわ。
まだこの1日過ごしただけやけどな、
どんな状況でもなんか顔に力入っとるんや。
療大の思い汲み取るならこれっきり戦いだのは忘れて冒険者として遠くに行ったがええと思うで」
「…けど…それは…」
…それは、自分の進んだ道が全て間違っていたと受け入れることになる。
村を飛び出したのも、必死に療大の敵討ちだと奮闘したのもすべて。
そしてなにより―…ホーク、あいつをこの手で俺は殺したんだ。
療大の敵と言っていれば正当なものになる。
とっくにこれは俺の仕事じゃないってわかってた。
けど、正当化しないと俺はただの殺人犯でしかない。
「…連我。俺も同意見だ。
療大…その少年のこと、気軽に質問してごめんな。
連我がどんな地獄を突き進んだか、俺は全く知らない。
けど、今の連我より前俺を助けてくれた時の連我の方が力が抜けていてやりやすそうだった。
もう少し楽に考えていいんじゃないか?」
木三も続く。
「お前にはあの天使がついてるんだからよ、
堕天させたら許さんからな大切にしろよ!」
その後、体を洗って部屋に戻る直前までずっと考えた。
ドアを開けると、今戻りました感満載の柔音がいた。
「あ、同じくらいだったねー、おかえり!
そうそう、この旅館弾たちも泊まって―…
…そこまでで連我はもう言葉が入ってこなくなった。
自分でも気づかず涙が出ていた。
…そうだ、自由でいいんだ。
気楽に色々探索するのが冒険者だ。
さっきトランプして楽しかったのは気が楽だったからだ。
次の瞬間、連我は柔音に抱きついていた。
「お風呂で強乃さんと会っ―て、え!?
どうしたの!?」
「…ごめん、ごめんな柔音…俺、やっと気づいた。
ここ数週間、なんかずっと生き急いでた。
ほんと…ごめん。度々戦闘に巻き込むし、振り回してばっかで…」
「…そんなことないよ、大丈夫。
私は連我の現実味のない、けれど的を得た柔軟な作戦が好き。
私は私を認めて褒めてくれた連我が好き。
だから一緒に何かに向かってるだけで嬉しいし楽しい。
ちっとも謝る必要なんてないよ。
…次からは私もちゃんと進む道、決めるね。
地図の範囲外になってから任せてばっかで、私こそ負担かけちゃった」
「…俺も全然大丈夫だ。
ついてきてくれててありがとう。
きっと1人なら今頃立ち直れてない、いや生きてなかった。
ほんとに、ありがとう。」
…やっと望んでた答えを言えた。
これからはのんびり進みたいように進もう。
10分ほどポツリポツリと会話した後、落ち着いた。
「…さ、柔音、髪の毛乾かしてやるよ」
「…へ?い、いや自分でやるし!できるし…」
「…いつもテントで寝る日めんどいとか言ってサボってるだろ。
ほら、座れ座れ、やるぞー」
…いくら天才でも幼いものは幼い。
んで多分精神年齢はもっと幼い。
多分ちょっとした礼として喜んでくれるはず―…
「…なんで急に…長いし時間かかるしいいのに」
「いいんだよ、俺はこんなことだけど少しずつお礼をしていきたいしゆっくりしたいからな…!」
…そうして、あとは楽しく遊んだ後、気持ち新たに楽に眠りにつく。
今夜は久々に何も問題もなく安眠できそうだと思った。
ドライヤーが嬉しかったらしい柔音が1人は嫌だとベッドが2個あるのにわざわざ連我のベッドに入ってきたこと以外は。
どうか木三にバレませんように。
多分俺そうなったら呪われるよ?ああ怖い。
◇◆◇
昨晩の和みとはうってかわって最悪の異臭で目が覚める。
慌てて起き上がると、壁が緑がかったカビに覆われている。
それどころか机なども腐敗し崩れ落ちカビに食われ、
床も穴が空いたり緑がかったりしていて部屋の隅には明らかにヤバいキノコが生えている。
目に見えて分かりそうなカビの胞子で一気に気分が悪くなりつつ、ついに悪臭の元凶を見つけた。
冷蔵庫の食材が腐り、何か緑色の液体が冷蔵庫からポタポタと落ちている。
ベッドも端にカビが生え始めており時間の問題だ。
そうだ、柔音は―…
隣を見ると、こんな状況だと言うのにすやすやと小さい寝息をたてて眠っていた。
「柔音、起きろ、おい柔音!!」
体をゆすってみるが、ふにゃあとしか反応がない上また寝始める。
「おい柔音起きろ!!なんか色々ヤバい助けてくれ!!」
更に大きく揺すってみるとようやく片目を開けた。
「ごめん朝は無理なの…朝風呂ならどうぞぉ…」
また目を閉じる。
「まじで起きろってヤバいぞ俺らの体も腐りそうだ!!」
再び体をゆすってみると嫌々目を開ける。
「うるさいなぁ…もうちょっとだけ…」
そう言って頭だけ起こして―…
「うわぁぁぁっなにこれ!!くさっ!」
ようやく飛び起きる。
掛け布団を握りしめて怯えている様子だ。
「無理…無理悪夢だよきっと…」
見れば涙目になっている。
どうやら朝弱いのは頭すら回らないという意味らしい。
「落ち着いてまずは外に出よう、範囲を知らないとどうにも…うっ、それに俺そろそろこれ吐くかも…」
そういいながら連我がベッドから出る。
昨日まで新居のように綺麗だった床は今や腐りきって
連我が立っただけでギィ、と軋む。
明らかに嘔吐の気配がしたので慌てて口を押さえる。
「いやっちょ吐かないで!わかった出るから!」
柔音も恐る恐る後に続こうと足を出して…
「ごめんやっぱ無理ほんと無理!」
すぐ足を引っ込めて掛け布団をかぶる。
「足元のキノコ…そういうのほんと嫌い…見れないし靴下で踏むとか論外却下…」
今にも泣き出しそうな柔音を見て連我は自分の足元を確認すると確かに木の隙間からヒョロリと紫の細長く小さなキノコが何本もでてきていた。
「…ごめんだけどおんぶ…私歩けない無理…」
とにかく脱出したい一心の連我はコクリと頷き背中を差し出す。
が、人2人分を支える耐久値が床の腐りきった木にはなかったらしく、そのまま床が崩れる。
腐った木材は簡単にパキリと大穴が空き、下の階へ2人は落ちていった。
腐らせる能力、気持ち悪いです自分で書いておいて。
特に野生キノコ無理なのは筆者がガチなので書いててほんとに嫌になります。
ちなみにこの敵、昔家族で旅行言った夜に見た夢の内容7割で作られてます。




