14 悪夢の遊園地
柔音の化け物じみた本気が見れます。
カチャリ。
数分後、それっぽい音がなった。
「柔音、行けたか?」
柔音の元へ近づく。
柔音は横になって脱力していた。
「こういう作業は私も得意じゃないから一般人レベルなんだけど…?
まぁなんとか空いたっぽい〜」
その途端、見ていた人達から歓声があがる。
柔音は満足そうな表情だ。
連我が柔音を治癒で少しでもと癒していると、
柔音が話す。
「このドアノブ、除いたらA〜Zのダイヤルが
4つついてて。えーとだいたい…45…6976通り?ぐらいのばけものだった…」
そう言われて柔音の隣に転がる懐中電灯を持って覗いたが、何も見えない。
「…何もないぞ…?」
「多分普通はそもそも見えない大きさのやつ。
私目と観察力だけはいいから」
「…お前最後の方懐中電灯使わずにやってたよな…
なんかキャラ変わってねぇか?」
「連我にバレたからねー。
もうわざわざ隠す必要ないかなー、と思って!
終盤は作りもほぼわかってたし音で暗記してたから使わなかっただけ!」
「ま、とりあえず皆さん、脱出しましょーっ!」
と、次の瞬間。
連我、柔音達の目の前、ドアとの間に壁ができる。
「ちょっ…なにこれ!?」
「皆!見てみあれ、あそこ頂点で半円状の結界できとるで!」
弾が指さす方向を見ると―…たしかに、結界のようになっている。
不規則なアミアミで、完全に外が見えないわけでもなさそうだ。
「これ…無理やり突破できないのか?」
そういってピッキングの針金を一本とって触ってみようとした瞬間。
「駄目っ!近づかないで!」
柔音が止める。
「よく見たら…乗り物…ジェットコースターの乗り物が走ってる、先端に刃物ついてるし当たったら終わりだよ!
線路もグチャグチャだし不規則だから離れて!」
皆慌てて身を引く。
「そこにいるのは誰や!気配はしとるで!」
弾が言うと、男が姿を現す。
「マジック兄ちゃんに言われたとおりやったのに…
見つかるとはなぁ…」
「お前は何が狙いだ!」
「俺の仕事は至ってシンプル。
こうやって送られてきた人質の皆様を我らの戦力として使えるか、人身売買に売り飛ばすか判断するのさ。
本来なら俺から鍵を奪い取れるか俺に気絶させられるかの勝負なんだが、まさか開けるやつが出るとは。
ま、全員脱出できればクリアにしてやるよ」
「…それで連我、なんかできそうなこと思いついた?」
「柔音、体力大丈夫なのか?」
「うん、連我と強乃さんの強化パワーでほぼ回復した! …けど、こんなの私たちは行けても一般の商人もいるのに…結界が…うーん…」
「あ、そうそう、鍵開けてたボーナスで教えるけど、俺を倒そうって考えはやめな。
俺は精神面は生きてるが、肉体は死んでる。
肉体をどれだけすり潰しても死ぬことはない。」
「…何だと!?」
…初めから逃がす気のないゲーム。
「《乱脚木馬》」
男が唱えると、次々と馬が現れ突撃してくる。
その時、柔音が連我に耳打ちする。
「…そんなことできるのか…?」
「わかんない…というか普通に考えたら無理…だけど本気でやってみる!」
「くそ、柔音!話し合ってる時間がない、俺が脱出できればいい!そうすれば全員脱出できるから1人分頑張ってくれ!」
「…わかった」
『コンクリの力を使いたい』
地面から出た柱が、馬を突き上げ地面に落とす。
それは地面に落ちると粉々になった。
「柔音!こいつらは木で出来てる!壊れやすいから敵はあしらう程度でいい!」
「ワイを忘れられたら困るで2人!」
《重々跡》
弾の輪ゴムで馬3頭の首を1つの大きな輪ゴムで縛り一網打尽にする。
「《幽霊屋敷》」
馬が片づいた瞬間、今度は何十ものお化けが飛び出す。
『牛の化け物の力を使いたい』
それを次々と殴り飛ばしていく。
幸いなことに一体一体は殴るとすぐ消える。
だが、このお化け軍団は柔音の方にも接近していた。
「…5…13…18…27…もう!せっかくゴーストタウン避けたのに…やだ…ホラー嫌い…」
キョロキョロと色々なところを観察しながら戦っていた柔音は、いつの間にかすぐ後ろが結界になるまで追い詰められていた。
「…嘘…やばっ…」
前を見ると、お化け軍団が一斉に飛びかかってきている―…が、ギリギリではあるが矢が飛んできてすべて撃ち抜いた。
「柔音、大丈夫か!?」
「うん…ながらはこれだから好きじゃないの」
「安心しろ、俺がどっからでも守る」
「2人!見ろあれを!」
ハッと男の方を見る。
男の真上には、巨大な観覧車が生み出されていた。
他の客はー…強乃が避難させてくれている。
なら俺らが避けるだけ―…が、体が動かない。
「気づきました?観覧車の力。」
いつの間にか男がそばに来ている。
「観覧車は範囲内の人物だけを遅くする。
範囲に入った時点で負けだ」
「まずい、ギリ避けられるかー…」
「やばい、けどゆっくりまとめる時間ある…
考えて、把握して―…こんがらがるけど多分行けた!
連我!結界に向かって!多分…あと12秒!」
遅い空間で、連我の目と鼻の先を観覧車が過ぎる。
普通に動けるようになる―9、8、7。
そのまま真後ろへ走り、結界に向けてスピードを上げる。
6、5、4、3―…
直前でスライディングの体制になり、そのまま突撃する。
「連我!結界は危ないってさっき…」
後ろから弾の声がする。
振り返らず、勢いのまま滑り―…
2、1―
0。
この瞬間、結界の壁を行き来する何十ものジェットコースターが、ちょうどすれ違って近くに向かってきているものがなくなった。
そこを軽やかに通り抜ける。
連我は、結界を抜けることに成功した。
「こいつ…そんな運任せなことで!!」
「運じゃねぇよ」
連我が答える。
「どんだけ複雑な線路でも、形が変わることはない。
だからジェットコースターの1つをずっと見張って
その敷き詰められた何千もの交差をどう曲がるか、
それによって線路全体の形はどうなのかを把握する
で、全列車のタイミング計算すれば穴を見つけられるってわけ」
あとに続き、自慢気に柔音が説明する。
「…は…これ全部脳内にどっちに曲がるか暗記したんか…?」
よこで聞いていた弾が唖然とする。
「うん。そうなるね…もう忘れちゃいそうだけどね」
男は声も出ないと言った様子だ。
さっき木馬から逃げる時、耳打ちされて連我も意味不明だった。
―たしかに柔音を天才だとは言ったが、これはもう能力と言えるレベルで凄い。
…とにかく、急がなければ。
連我は、その扉を開ける。
一面紫だった空間に、四角くくり抜かれたように穴が開く。
扉の先は光でよく見えない。
だが、その先へ連我は臆せず進んだ。
そのころ。
1人でピエロを逃さず殺さずで留めていた瞬飛は限界だった。
舐められない程度にスカして生かす。
そうしてまた弓を引く―瞬間。
ピエロの目の前に連我が現れる。
連我はすかさず、ピエロのポケットに手を突っ込む。
そして人質カードを取り出すと、
弾から事前に貰っていた輪ゴムでバラけないように縛り、観客席へ投げる。
それをすかさず木三がキャッチした。
それを確認すると、連我は唱えた。
「解除―。」
その頃、人質空間では狂ったようにお化け軍団と
木馬が柔音たちを狙っていた。
「柔音さん!なんかいい案でもないんか!?」
「ごめんもう無理考えられない!もう脳というか体力が限界…!」
人質も守りながらなので、強乃の強化があっても大変だ。
と、その瞬間体が光り始める。
「連我…!」
そして皆順番に転送されていく。
「待て!!まだ終わってないぞ!!」
男が言い終わる頃には、もう誰もその空間にはいなかった。
現実では、皆次々と帰ってきて観客席へと倒れる。
連我もセメントで着地し、皆のもとへ向かう。
「連我…ギリギリセーフだったよ、ありがとう!」
柔音が抱きつこうと起き上がるが、起き上がりきれず
また倒れる。
「ごめん体力がもう…最後転送されるとき皆の荷物抱えたので限界なってるや」
エヘヘ、と笑う柔音を優しく撫でる。
「大丈夫、十分助かったからあとは見といてくれ。
木三、準備できてるか?」
「あぁ、俺もようやく本領発揮だ」
連我と木三が皆を守るように前に立ち、
ピエロを見上げる。
「あとはあのピエロをボコボコにするのみだ!」
ちなみに柔音は暗記・計算中に話しかけられると怒ります。
連我だけはなんか許してるそうです。




