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13 柔音:心境

柔音の色々が見えてくる回です

「発射!!」

連我がそう発するとともに、羽が飛んでいき

ピエロに何本か突き刺さる。

それを見ながら連我はセメントで擬似的な滑り台を作り、滑ってステージに降りる。



「ぐう、まだ観客の残りがいたのか。

ちょっと運良く残ったからって強いって勘違いしちまったか?現実見せてやるよォ!」


そう言い、パチンと指を鳴らす。

目の前には、先程火の輪くぐりの際にいた虎が再び現れていた。


「そんなんじゃ…

コンクリの柱で撃退しようと手を前に出す。

が、目にも留まらぬ速度で瞬飛と名乗った男が守るように走ってきて、連我の前に立ちピエロに弓を構えて牽制する。


「すまないが君は下がっていてもらえるかな。

こいつは一般人が倒せるような獣とは違うんでね」


《水勢矢(アクアアロー)》


虎に水のエフェクトを纏う矢を打ち込むが、ジュッという音を残して消える。



「下がっていろって、あなた1人で倒せるんですか?

冒勇隊、とおっしゃいましたよね、確かに俺はその隊よりは弱いかもしれない。ただ、作戦ぐらいならあげれますよ」


「くっ…俺は…1人で十分だ」


「そう意固地にならないでくださいよ。

ならあいつを仕留める手順くらいわかってるんですか」


連我はピエロを指差す。

ピエロは、天井から降りてきた鉄のポールを持って

数メートル上まで逃げていた。


「それは…だな、人質を取り返してカードから解放させた後、あいつを倒す…だろ」


「あたってますが半分不正解ですよ。

考えるんです。なぜ召喚した獣に任せて逃げるのか。

正直こうして話せるのも獣の動きが単調だからです。

この隙にあのピエロに回り込んだりされればヤバいんですよ。なのに来ない。

そしてカードに閉じ込められた人々は、

皆同じタイミングで交互にドンドンとこちらに向かってカードの面という透明の壁をたたいているような様子でした。

つまりタイミングが同じな以上、人質たち本人があのカードに表示されてるわけじゃない。

カード内で何か起きていると考えるべきです。」


「そんなの君の勝手な妄想だ。どこにも確信はない。

…が、観察眼は凄いな」


「…ありがとうございます。

なら、その確信を見せましょう。

『あの能力が使いたい』―…さて、と。

解除―。」


「…なんだ…?何も置きないぞ」


「これが確信です。俺のコピーであいつの力をコピーしました。あのカードのは間違いなくあいつの能力だ。

だが、コピーして俺がカードの効果を解除しても

解除されない。つまりあれはなにか条件を満たさないと開かない、ってことです。

単に人質を取るためだけにです。変だと思いませんか」


「…君が能力コピーをミスった可能性はないのか?

正直、コピーなんてチート聞いたことがない。

能力が本当なのかすら少し怪しいけど…」


「…ない、と思いますよ。今まで不発はないので。

それにもう一つ。

あの人質の中には俺の仲間の柔音って少女がいます。

旅する中でたまに戦闘のこと話し合ってるんです。

それでさっきの敵の観察なんかのコツを教えてもらったり。

…そんな凄いのが、あんなたかが1つの技から抜け出せてない。正直、俺は無邪気さで隠してるけど柔音は

作戦だの状況把握が上手い天才だって思ってます。

なのに、戻ってこない。そんだけ把握能力が強いのに。だから何かギミックがあるはずです」


「俺はその子を知らんから何とも言えんが、随分と信頼してるようだな。

正直俺は考えすぎかと思うが。

例えば気絶させられればどんな天才だろうが詰む。

結局のとこあいつの口から直接解除の二文字を言わせなきゃなんとも言えんな。」


「…ま、そうかもですね。

とりあえず俺が万一戻らなかった時用にあなたに予測だけ伝えておきたかったので」


「…何をする気だ」


「表面コピーして解除不可なら、直接見てみるほかないでしょう。

どうせ回りに人質捕まえるようのカードがビュンビュン飛び回ってんだ。

あなた、流石にここで敗北しないでくださいね。

それと、わかってると思いますが殺すのも駄目っすよ。耐えてください。」


「わかってる…お前は何者なんだ…?」


「俺は連我。柔音と一緒に冒険者として旅してる人っすよ」


「…正気か、中で生きてる保証も生きてでられる保証もないというのに…」


「…俺は柔音を守ると誓いました。

危険かもしれないなら尚更助けに行くまでです。

じゃ、しばらく頼みました―


そう言い終わると、連我はカードに自ら当たり、

フッと消える。


「…あいつまじかよ…正気か!?」

観客席から見ていた木三はため息をついた。




ゴウン


連我は独特な音が鳴るとともに不思議な空間へ連れてこられた。

目がだんだん見えるようになる。

そこは一面紫で、地面に立っているけど浮いているような、どこまでが横でどこからが上なのか、

どこまでこの空間が続いているのかも一切わからない異様な空間だった。


「連我っ!」

突如誰かに抱きつかれる。

それは柔音だった。

奥に他の客達もいるようだ。


「助けに来てくれたの?

私たちで出る方法探してたんだけどわからなくて…

一応あらゆる面をいろいろ探ったりしたけど無理。

唯一あったのは皆集まってるとこにあったドアノブ。

なんだかドアノブだけ浮いてる感じで不思議なんだよねー」


「おーい柔音さん!はよ続き取りかかってくれんかー!」

遠くで呼ぶ声が聞こえている―弾の声だ


「…柔音、なんかやってるのか?」

皆の元へ向かいながら聞いてみる。


「一応でかバッグごと転送されたし、中に入ってた針金で適当にピッキングしてみてる!

けど多分最後の1ダイアルが合ってない」


「…ちょうど思ってたから言うけどさ、お前多分天才に分類されるよな」


「ふぇ…?」

ピクリと体が揺れる。


「柔音、もっかい言うけど多分天才だよな。それもかなりの」


「ん゛っ!?なんで!?何が根拠でっ!!」


…明らかに驚く。多分隠してる気だったのだろう。


「だって敵の観察するとことか凄い的確だし、

だいたいいつも俺が気づく前に建物とかいろいろ見つけるし。

それにバードの時も村でついていきたいと言ったときも、その時俺がこう言ったら落ち着ける、

こう言ったら連れて行こうって無意識に決めてた模範解答出してくるし。

兄ちゃんと戦ったときも体力マナ切れフラフラで頭回ってないくせに俺が作戦言った瞬間理解してたし。

実際さっき冒勇隊って人が気づかないとこお前の観察ポイント追ったら気づけたしな」


「それは…ほら目がよかったりたまたまで…」


「なら、追加するけど森で迷った時地図あるって言ってたけどお前地図見ずに案内しただろ。

それも半分寝た状態で。

というかそもそも森で化け物に襲われてつぎ目が覚めたら知らない家のベッドで隣の部屋で知らない男ら三人が会話してりゃ普通誘拐だなんだってなるだろ。

それを話してる内容数秒聞いて状況把握、

その後会話に平然と参加とかどうかしてるよ」


「う、うぐぐぐぐ…

んー、その、まあ勘、かな…」


―事実、柔音は昔から頭がよかった。

というか人の分析やその場の状況把握が上手く、

この人はどんな答えを求めているだとか、

前の信号もその前の信号も秒数がこれだったから

このまま歩くだけで止まらず青で渡れるな、だとかの

読みはうまかった。

しかし、親を失い日雇いの手伝いと奴隷の中間みたいな日々では考えることは一切必要とされず、

必死に考えて行動していても手を止めるな、ぼーっとせずに手を動かせばかりだった。

特にその必要はなくても、結果信号の待ち時間で到着時間は全く同じだと自分ではわかっていても走らされた。

―だから、なるべくその考える癖を出さないのが自分にとっての最善手だと、相手が皆そう望んでいると気が付き、連我にもバレないように接してきた。

はずだったのに。


…いい言い訳が思いつかない。

その得意な人の分析による模範解答が思いつかないのだ。

…全部の例に言い訳できない。

柔音は観念した。

「…私は、天才でもなんでもない。

ただ、他の人より少し考えすぎるだけ。

…怒る?」


「なんで怒る必要があるんだ。確認で聞いただけだ。

お前に作戦とか任せたくてな。俺はそう言うの駄目だし」


「連我だってコンクリの人の時私が思いつかなかった作戦立ててたくせに…」


「あれはコピーで複数の能力の1から10までわかるからできるもんだ。

…というか、その熟知して思い浮かんだのを3言程度聞いて完璧に分かる人に言われたくねぇよ…!」


「能力の説明、1秒程度で滝のように流れてるだけって言ったのに全部理解してるくせに」


「人より読むのが早いだけだ。

昔からずっとそれだしな。

能力使う時以外に役に立つこともない、悲しい特技だよ」


「それと多分それ関連で、お前俺への最適解予測して年齢も誤魔化してるだろ」


「あっ…その…バレてましたか」


「大丈夫、今更置いてったりしないから。

で、何歳だ?」


「…12、半分奴隷みたいな生活嫌で送り返されたくなくて嘘ついた」


「そっか…ってやっぱ未成年じゃん!!」


「もっかい法改正されて12歳成人になんない…かな」


「ま、いいよ。お前がついてきたいって言ったんだし」

…そしてさよなら、俺の告白目標。


「ま、いいや。とりあえず脱出しよ!」


そう言って人混みの中に柔音が入っていく。

…ま、1番不安だった要素が解消できたしいっか。

一緒に旅できるだけで幸せだ。

あとは脱出するまでだ。

人混みの隙間から少し見える、

鍵穴を覗き込む柔音を見て思った。

ちなみに療大も2人ほどじゃないけど機転はききます。

ガウモウ(牛の化け物)の時突破口見いだしたの療大だし。

やっぱ良くも悪くも同じレベルの人どうしが1番話し合うんですね。

これが良いに限界突破してた例です。

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