11 マジック・サーカスピエロハウスへようこそ
レンガの力、まさかの進化―。
療大の埋葬を済ませ、墓の前で手を合わせながら連我は考える。
―療大、守らせてごめん。
3人とも死ぬのを防ぐために、あの時俺と柔音に
治癒を少しでも施しつつ攻撃を己の身で防いだんだよな。
…もう2度と仲間に辛い思いはさせたくない。
俺が命をかけて、柔音だけでも守ってやる。
「…行こうか」
「…うん、そうだね…
あ、荷物…」
―あの大きなリュックを見る。
少し前まで、3人でワチャワチャやってたんだよな。
思い出として、ここに置いて行きたくはない。
「持っていきたいなら持っていけばいい。
疲れたら俺が持ってやる」
―そうして、また次の街に向かう。
今までひたすら北へ進んできたが、
今度は南西方面へ少し折り返してみることにした。
と、いうのもこれ以上北に行くと幽霊町
と呼ばれる所に行き着くそうで、そこが四六時中薄暗く、住民も皆暗いということでそんなホラーチックな街は避けようと決まった。
歩いている最中、ふと気になる。
―先ほど、柔音から聞いた話だと四肢に触れたり
毎回見たりせずとも能力が使えていたという。
「柔音、ちょっと能力の色々試してみてもいいか」
「いいけど…私がリュックに負ける前に終わらしてね」
連我は地面に手を置き、唱えてみる。
「兄ちゃんの能力が使いたい」
その瞬間、なんと地面からあのコンクリの柱が出現したのだ。
…これは、本当に能力が『進化した』と言えるかもしれない。
…なら、どこまで自由度が高いのか。
「切信さんの能力が使いたい」
だが、今度は何も出ない。
―いろいろ試してみた結果、
どうやら一度でも見たことがあれば無制限に使いまくれるらしい。
だがそもそも見たことがない切信さんの力などは使えないようだ。
だが依然能力を混ぜたりすることは不可能で、
使用は1つずつに限られることもわかった。
色々試していると隣で柔音がぼやく。
「いーなー、そんなんチートじゃん。
私の能力も使用制限なくなったりしないかなー…」
「別に俺が守るから大丈夫だぞ…?」
「私だってちょっとは役に立ちたいもん…
あと連我だけに任せてまたさっきみたいに正気失われるのも怖いもん…」
「さっきはほんと心配かけてごめんな。
俺はただ柔音を守りたい、療大の敵を討つんだって強く思っただけで、本当に記憶とか一切ないんだよな…」
「ほら、それだよ。
今回はたまたま元に戻れたけど、
私も殺されるんじゃってヒヤヒヤしたもん
記憶飛ぶなら尚更やばいよっ」
「ま、ヤバそうになったら一旦能力使うのやめるから、そん時はサポートしてくれ」
「うーん、わかった…それならいいけど」
まだ不安そうだが、何とか納得させられた。
…が、今回結局俺が臆したから出遅れ、
結果療大が命を落とした。
たとえ自分を失ってでも、能力は使い続ける。
どうなろうと次は守りきる。
心のなかで、連我はそう考えていた。
3日後。
「…まだ次の村つかないのー…?」
あれから3日、次目指す村―ユグド村はまだ見えてこない。
…確か、最初にいた切信たちのあのプロロ村とは
割と近い村だったはずで、村民達はまともなのか、
ちゃんと受け入れてもらえるか不安だ。
「あ、なんか建物見えてきたよー」
柔音が指差す方向を見ると、そこには大きなテントのようなものがある。
黒と白で縦にしましま模様で、
形からもまるで移動式サーカスだ。
「…ちょっと興味あるんだけど…だめ?」
「俺も気になったし、ちょっと行ってみるか…!」
近くで見ると、本当に大きかった。
そして入口らしいところに回り込むと、
入口の上に木の看板で
「マジック・サーカスピエロハウス」と赤いインクで殴り書きしたものが貼ってあった。
肝心の入口はというと黒いシートが仕切りになっていて、くぐらないと中がわからない。
「…ちょっと入ってみるか」
そう言って入ろうとすると、
「まってください、やめたほうがいいかもですよ」
後ろから呼び止められる。
振り返ると、見たことのない3人組がいた。
その服装と持ち物から冒険者だろうということがわかる。
「どういうことだ?」
問うと、1番右にいた笑顔で優しそうな少女が口を開く。
「知らないんですか?『マジック・サーカスピエロハウス』。
今この辺りで有名の、日替わりで色々な場所に急に現れる移動式サーカスです」
それに続けて、真ん中のヤンチャそうな少年が続ける。
「こいつのヤバいのが客の中から指名してサーカスやらマジックするらしいんやけどな、
どうやらその指名された客が忽然と消えてショーが終わっても帰ってこんらしいんや。
しかもそれで相談に来た人も次の日にはその帰ってこん人の存在すら忘れとる。
大事な家族や、友人やと言うとったのに、や。」
そして、1番左にいた迷彩服の正義感の強そうな少年が話す。
「そこで俺らが解決しようと来たんだが、
できるだけ失敗した時用に被害は少なくしたい。
だから注意喚起ってことや」
…そんなやばいところだったのか。
ここはこの人達に任せるべきか―…
「気になる」
…は?
「なんか怖いけど楽しそう、気になる」
…柔音さん、目が輝いてますけど。
「私たちも一応冒険者なの。
神隠し的なの興味ある、私もついていきたい」
「あんたらがか?やめといたほうがええで。
あんまりなんも情報もないし、
ワイらも無事でいられるか怪しいんや。
面倒事に首突っ込まんほうが―…
「柔音が行きたいって言うなら俺も行く。
ずっと俺の生きたい方向についてきてもらってたしな。
ま、お互い健闘を祈ろうぜ」
「…私は止めませんけど…こんなとこに自分も来といてあれですが、大丈夫なんでしょうか…」
「ま、本人らの意向に合わせるほかないな。
俺は木三、能力は『木』。よろしく」
「私は強乃です。能力は『強化』。
よろしくお願いします!」
「ワイは弾。能力は『輪ゴム』や。
よろしゅうなー」
「俺は連我、能力は『コピー』。
よろしく頼む。」
「私は柔音、能力が『セメント』。
よろしくねー」
「じゃ、全員自己紹介は済んだし入るか。
何が異変あったら伝え合おうな」
そう言い、木三から順に入る。
中はひんやりと涼しく、真ん中の赤い舞台を囲むように観客席が並ぶ。
そしてその観客席にはパッと数えた限り30人ほど人が居た。
服装や持ち物からして冒険者や商人がほとんどだ。
連我達が1列に座ると、
ほどなくして会場の電気が消え、
真ん中の舞台にスポットライトが当たる。
「Ladies and Gentlemanー!」
瞬きした一瞬、気づけば舞台に男が立っていた。
男は深々とお辞儀をしており、黒いシルクハットに
黒いスーツで身を包んでいる。
「私の名前はMr.パーティーと申しマース!
さて、」
男がゆっくりと顔を上げる。
その顔は、全体的に白く、そして右目のところには星の形に赤く塗られていた。
その印象は、口を開けて笑っていることから不気味な口の裂けたピエロのように感じられた。
「SHOWを始めましょうか」
新しい冒険者が3名登場。
次回、行方不明のカラクリと能力だらけのバトルが勃発…
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