10 あの丘で、また
2つ目の町、さあ新天地!
ところが狙われているようで…
―あれから2日。
無事、新たな町に着いた連我達は物資を買い揃えた。
今は所持金確保のため、色んな人の手伝い何かを引き受けていた。
特に人気だったのが療大の治癒商売。
壊れた物やついでにちょっとした怪我なんかを治すだけなのだが、これが超人気で稼ぎの8割はこれで得たと言っても過言ではない。
溶けるんじゃないかと思うぐらいぐでーんと疲れていた柔音もなんだかんだ昨日には完全復活し、
また街を出て先へ出発しようとしていた。
「…買い込みすぎじゃないか…?」
柔音が背負うリュックが、明らかに尋常じゃない大きさをしている。
「私料理担当だし?あとは旅を楽しむための色々、うんちょっと色々を…
大丈夫、自分で持てる量にしたから!」
「僕は荷物少ないほうがいいかなーと思うけど…」
「ま、いいけど俺は別に疲れたって言っても持たないからな?」
「うっ…」
作戦がバレたか、といった表情。
「荷物、減らしてきたら?
どうせ定期的にこの街には立ち寄るだろうし
預け屋にでも頼みに行ってきたら?」
「…というかこれ何が入ったらこうなるんだ…?」
連我が回り込んで開けると、
中にはゲームだのやけに大きいぬいぐるみだのが詰め込まれている。
「なんでゲームなんて持ってこうとしてんだよ!」
「んー、夜寝れない時の暇つぶし用?」
「…ぬいぐるみは?」
「かわいいは正義だから」
「はいはい、そんなこと言ってないで預けに行くよー」
それを見た療大が後ろから押して連れて行く。
「見逃してくれたり…」
「今こうして話してる時点で足プルプルしてんのバレてるから文句言わずに減らしに行くよー」
そう言ってどんどん押して連れて行く。
「じゃあ俺は飲み物でも買っとくわー」
連我が目を離した瞬間。
「うわああっ!!」
療大の叫び声―見れば、鳥が療大を持ち上げようとしている―いや、違う。見た目は茶色く、羽があり、その風貌は完全に鷹だ。だが、それは大きかった。
鷹などではない。立派な人間だった。
そしてあっという間に療大の右腕をガッシリと掴み、5メートルほど上空に留まる。
「連我!…私そっちいくから合流…あこれ走れない…来て!」
連我と柔音は合流を計る―が、矢の雨のように羽が降り注ぎ阻まれる。
「僕をどうする気だ!!」
療大が問う。
「我の目標はお前にはない。さらば」
そう言い鷹男は手を離す。
「あ、ちょまっ―」
だが療大は柔音のセメントでしっかりと受け止められる。
が、それが不覚だった。
正直落下は怖くないと3人とも安心していた面があった。
その一瞬、隙ができた―
連我の目の前で、療大と柔音は音もなく、唐突に血を出して倒れる。
「…は?」
何も見えなかった。
だが考えつくのは1つ―…
あの鷹が
ザシュッ
左肩が裂ける。
「ぐあああっ!!」
森で受けたあの体当たりさえ、今なら痛く感じないだろう。
あれより何倍も痛い、受けたことのない想像を絶する痛み。
連我もそのまま倒れ込む。
空に、あの鷹男が再び飛び立つ。そして止まり口を開く。
「我の名はホーク。連我を殺さず痛めつけて誘拐。
その他邪魔者2名は殺害。
これが我の使命だ。我に下された命令だ!」
そう言うと、療大と柔音の方へ急降下する。
「やめ…ろ…」
だが、セメントでできた盾が瞬時に2人を守る。
柔音が立ち上がる。よかった、まだ生きてる。
「この服…お気に入りなのに…邪魔者って一方的に…そんなのないでしょ…」
「僕らに交渉したり何かやり方はなかったんですか」
療大も立ち上がり、その右手の先には魔方陣が出ている。
が、すぐ異変に気がつく。
「治らない…」
「我の攻撃は羽を使い体内に枝分かれ、いやヒビ割れのような細かい傷をつけながらえぐり取る。
だからそう簡単には完治しないんだよ!!」
言い終わると共にセメントの盾を蹴破り、そのまま足で前にいた柔音を蹴り飛ばす。
その衝撃で、2度、3度地面で軽くバウンドし、連我のすぐ近くで止まる。
「柔音!!」
「だい…じょうぶ…わたしは…いきてるよ…」
力ない返事だった。
その時、不意に気配を感じる。
後ろを振り返った瞬間、またしても強烈な痛みが襲う。
高く蹴り上げられたのだ。
唾か胃液かわからないものを吐き出す。
―気持ち悪い。
が、更に羽が何十と飛んでくる。
なすすべなく空中で次々と刺さった。
ドシャッ
セメントに受け止められることもなく、
そのまま力なく落下する。
―目がぼんやりして何も見えない。
体中が痛い。
足の指先の感覚がない。
じわじわと死んできているのか…
「ゃ…」
声が出ない…終わった。
ぼんやりとしたまま、近くにころがっている柔音に手を伸ばそうとした。
その腕は、手首の所でありえない方向に曲がる。
「ぁ…ぐ…」
最後の思いで手を伸ばす。
療大はどうなっただろうか。
こうしている間にすぐ近くで死んでいっているかもしれないのに。
あれだけこの二人のことは優先すると誓ったのに。
兄ちゃん、村の人と和解できたかな。
もしかしたら助けに…無理だ。
行っている方向が逆のはずだ。
それに来たところでまた死人が出るだけかもしれない。
ここは街のはずれ。人なんてこない。
考える時間はあるのに体が少しも動かなくなった。
―ごめん、皆、俺―…
目の前に影ができる。
「ちなみに我は生かして捕らえる気など、ない」
羽の矢がホークの後ろに並び始める。
それが発射されて―…
ザシュッ
…死んでない。
…やった、何かに目覚めたんだ。すごい力に。
いや、そもそも夢だったんだ。
そう思って目を開ける。
…不思議と、それだけははっきり見える。
体中穴だらけになった療大が、そこに立っていた。
ぐらりと体が揺れ、連我の上に倒れてくる。
触れたその皮膚は、生きている人にはない、
不快でゾクリとする冷たさだった。
脳内に記憶が蘇る。
たった1ヶ月程度だ。それだけ。
その、それだけが、あまりに大きかった。
「僕は療大」
「能力は治癒―人や物を治せる力です」
「1つだけ、最後の作戦があります」
「人格は、そう簡単に変わりませんから」
「僕は、あなたみたいな人になりたい。」
「たまにはこういう昼寝みたいなことするのも気持ちいね、僕ら3人、あの丘でまた昼寝しよう!」
全てが頭の中で再生され、崩れていく。
何度も、何度も。
繰り返し、繰り返し。
「一人目始末、と。
変な仲間意識出さなけりゃ最後までアイツも生きれたのに。
さて、今度こそ眠りな」
再び羽を装填する。
連我と柔音のもとに降り注ぎ―…
《硬質之盾》
防ぐ。
連我がゆっくりと立ち上がる。
左腕は骨が見え、右手首は折れ、あちこちに骨が見えそうなくらい大きく深い傷がある。
「お前…何がしたい?
自分で苦痛を味わって楽しんでいるのか?」
そう言い、ホークは蹴り飛ばそうとする―
蹴りが当たる。
連我の肉が飛び散り、内臓がむき出しになる―
なった瞬間、すぐさま治る。
「…治癒」
連我の表情は見えなかった。
ただ、底なしに憎悪で動いた。
「…治癒」
もう一度呟く―今度は深い傷がすっと治っていく。
「治癒、治癒、治癒、治癒、治癒―…」
淡々と呟く。
折れた手首も、むき出しの骨も、全てが治った。
気づけば柔音の傷もふさがっている。
「我の聞いた情報では一度しか使えないはずでは…
それに治癒の使い手は既に殺したはずだ…
おいタイム、何が起きている!!」
焦り、連絡を試みながら上空に飛び立つ。
「…ん、なんか嫌な夢を見たような…
連我…どうしたの?」
柔音が起きたようだ。
「連我…?なんか変だよ…?」
連我はゆっくりと、ハッキリと呟いた。
「鳥の能力が欲しい」
その瞬間、連我の背中から同じ鷹の羽が生え、
足先も鋭い獲物をえぐり取れる足へと変わる。
「連我…?それっ…なんで…」
勢いよく飛び立つ。
「我の力…四肢は触っていない筈!!」
逃げようとしたホークの顔をガッチリと掴む。
「…死ね」
鷹の能力で得た筋力を使い、ホークの頭を握りつぶした。
「いやっ…!!」
それを見て柔音が悲鳴を上げる。
「柔音…すぐ終わらせるから待ってて」
振り返らず、冷たい話し方で告げる。
潰れた頭を持ったまま、体を捻って蹴りを入れ続ける。
やがてボロボロになったホークは首が千切れ、
ボトリと体だけが落ちた。
そこにさらに羽の矢の雨を浴びせる。
「死ね、死ね、死ね、死ね!!」
地面に降り、原形すらなくなった肉片を踏みつけすり潰す。
「もうやめて!!」
柔音が叫ぶ。
「その人はもう死んでるよ…連我、おかしいよ、なんで、なんでぇ…」
―俺、なにしてんだろ。
泣き出す柔音を見て、ふと正気に戻る。
「はっ…俺…」
「連我…大丈夫なの…?療大は…」
柔音が生きている。
間に合ってよかった、よかった。
連我は走って、柔音に抱きつく。
「連…我…?なにがどうなって…怖い、怖いよ…?」
「後ろを見たら駄目だ」
…療大の死体は見せたくない。
「なんで…なにかいるの?」
「何もない、大丈夫だ、俺がお前を守るから大丈夫だ」
「待ってよ連我落ち着いて、状況を教えて、療大は…」
「落ち着いてるよ、大丈夫。君が正気に戻してくれた。取り乱さずに聞いてくれ」
「どうしたの…?」
連我は、一呼吸する。そして覚悟を決めて静かに言う。
「療大は…死んだ」
療大―町はずれ、ホーク戦にて死亡
死亡理由 ホークの羽の矢の雨に貫かれたことによる失血死
療大が、死にました。
これが、冒険です。これが、知己戦線レンガです。
刺激を求める方はブックマークで待っててくださいな




