実際のところ職場じゃあ自由な時間貰っても神経すり減るんですよ
銃弾が的を撃ちぬく。
(こっちはできるんだけどな)
支部の地下にある訓練室、書類手続きを終わらせ新しい銃を受け取った私は銃の訓練をしていた。
今のは射撃、次は鉄糸だ。
新品の拳銃に付いている、もう一つの引き金を引く。
引き金を引いた人差し指が延長される感覚。そして銃口の下部から白輝鉄の糸が伸びだす。
的に狙いをつけ、指の感覚を頼りに糸を飛ばしてみるが明後日の方向に伸びていった。
(……やっぱ難しいな)
少し指先に疲労感がある、白輝鉄の操作は神経をすり減らすのだ。
「やっているな」
隊長の声だ。入口に立っている。
「グラドミスは帰った、街はずれにある貴族の館に滞在するそうだ。
「そうですか」
「レガリア、奴はお前を殺そうとしたんだな?」
「……はい」
部屋であったことは正直忘れたかったが、既に私は厄介な問題の渦中にいるようだ。
「グラドミス様は私が、彼が作らせた銃を持っていると……それとロス、ヴィルヘルム・ロスについてしきりに気にしていました」
「それはわかった、問題は件の銃がどこに行ってしまったかだ。奴が帰った後私も探したのだが、見つからない」
グラドミスが作らせ、ロスが私に手渡した銃。
(あの銃が見つかれば、このややこしい事態が解決するのかな?)
「それと少しグラドミスについて調べてみた。職人に直接話が聞けたわけではないが、工房で何かを作らせていたのは確かなようだ」
「それが例の銃で、ロスはそれを盗んだってことでしょうか?」
「そう考えるのが自然だろう」
隊長が手足を伸ばし、背伸びをする。あまり見たことない仕草だった。
「どうやら奴には隠したい目的があるらしいな。そいつを暴けば奴より優位に立てる。イストサインから出ていかせることもできるだろう。とにかく調査だ」
隊長が私に近寄ってきた。
緊張で無意識に背が伸びる。
「出来るようになったか?」
鉄糸の扱いについて聞いているらしい。
「ええっと、やってみます」
指先に神経を集中させ、糸を意識する。白い軌跡を残して白輝鉄の糸が手首に巻かれ……ない。
「もう一度やってみろ」
「はい……」
「もう一度、震えずにだ」
「はい……」
「もう一度、力むんじゃない」
「もう一度」
「もう一度」
時計は午後5時を回っていた。




