1977年10月後半Ⅰ
10月16日(日)
俺にとっては恐怖の日曜日。家にみんな居るから当然、昼飯代をくれない。出来ることなら目を覚ますために外に食いに行きたい。調子が狂う。
10時に起きてちょっと居間に行ってみたが、またそのまま13時過ぎまで寝た。それがいけなかった。外に出たりしてみたが、全く目が覚めない。頭にきて、10月後半の気温なのに、扇風機を掛けて寒さの中、英熟語の瞑想確認をやった。あんまり効果はなかった。昼飯は、時間がなくて、食わずに勉強しました。
10月17日(月)
単語を知っていても長文読解が出来るとは限らない。大学入試の場はある程度ではダメだ。完全でなければ。
ちゃんと12時に起きたのに、やってきた眠気は凄かった。お陰で英語がほとんどできなかった。仕方なく、古典を終えてからやろうとしたが、やっぱり出来なかった。
今日の「華麗なる刑事」は良かった。俺が求める愛の形をちゃんと具現化していた。
10月18日(火)
今日はいささか満足な気分だ。昨日、KGI大学の古文の過去問をやって慣れておく必要があると思い、13時半まで問題集を漁った末、やっと気に入ったのを見つけて夜やってみたが、嬉しいことにほとんど解った。ただ、論述問題が今一つだ。これをどうにかせねば。
只今、夜明け前の5時、今から風呂に入るつもりだが、寝るにはまだ早い。うどんも食いたいし。
入試に対する自信が漸く付きつつある。この調子でやったるでぇ。
10月19日(水)
今日の眠気は今までにない独特のものだった。初めはそんなに眠くなかったが、ちょっと寝て少しでも睡眠を補えば、必ず襲ってくるであろう眠気を抑えられるんじゃないかと考えたのがまずかった。甘い考えは捨てねばならない。
16時頃、眠気覚ましに外に出たら、下川のおんちゃんが鉄道宿舎の畑を弄っていた。咲いているコスモスを愛でていたが、俺に気付いたおんちゃん(おじさん)が話し掛けてきた。話さないでいいことまで調子に乗ってぺらぺら喋ってしまった。
また福山書店本店に行って二時間費やした。行った序に、「GORO」を買って、「あぶさん」を立ち読みした。
解説;小学館が1974から1992に発行していた20歳代をターゲットにした総合男性誌。女性グラビヤや新車情報、女性の口説き方のノウハウ、漫画まで、多彩な情報を詰め込んだ内容となっていた。このため、1970年代~1980年代の若者の流行や風俗、考え方を知る上で貴重な資料となっている。篠山紀信(ご冥福をお祈りいたします)の激写シリーズは、この雑誌に掲載されていたものである。毎号、アイドルのポスターが付属していた。
10月20日(木)
18時頃、豊田が大学の帰りに俺の家に寄った。
おい(俺)が宏美しゃんのアルバムば買ったかもしれんけん楽しみにして来たげな(そう)。今500円しか持たんとに買える訳ねぇ。豊田は程なく帰ったが、明日は友達と天神(九州一の繁華街)に行くそう。
奴が帰ってから気付いたのだが、今日は国鉄の給料日だ。もしかしたら親父から小遣いを貰えるかもしれない。そしたら宏美ちゃんのレコードが買える。
親父は今年高校を卒業して国鉄に入った若い者に送って貰ってお袋に給料を渡しに帰って来た。俺と同い年のそっちは21時頃まで居たので小遣いのことを言い出せなかった。
結局、1万預かってお釣りを返すことになった。小遣いは期待通りゲットできたものの、宏美ちゃんの「思秋期」を聞くと気が引けてしまう。買おうと思っていたのはこの10月発売のアルバム、「思秋期から・・・男と女」。俺としてはシングルの「思秋期」自体は嫌いではなかったが、好きでもなかった。バラード調は宏美ちゃんには合わない気がする。だから、二の足を踏む。糞阿久悠(ご冥福をお祈りいたします)が!
解説;高卒で国鉄に入社した1年目の新人を見て俺は思い出したことだろう。障害者になったために親父の後を継いで国鉄マンになるという夢が潰えたことを。鳥巣高卒業者にも、俺が知る限り、二世の国鉄マンが二人居た。森永と西山だ。子供の頃は親父と同じ職業に憧れる。俺も例外ではない。蒸機機関車で罐を焚く機関士の親父は本当に格好良かった。高倉健の鉄道員を観ると親父を思い出す
10月21日(金)
やっと宏美ちゃんのアルバムを買いに佐藤電器に行けた。ここでポスターをどう催促するか悩む。あげく、「ポスターはダメですか?」と言うことにした。返って来た店員の返事は無情にも、「もうありません」げな。くそ~!
12時半には家に帰ることができたので、A面だけ聴いてみた。宏美ちゃんのアルバムに関しては聴き始めはお世辞にも良いとは思えない。「WITH BEST FRIEND」もそうだった。でも今度の「思秋期から・・・男と女」は今までと毛色が違う。果たして好きになれるかどうか。
目覚ましに14時から30分ほど哲美とキャッチボールをしたが、中指の突き指は痛いオマケだったぞい。