1977年10月前半Ⅱ
10月8日(金)
昨日の誓い通り、目が覚めたらひとまず居間に行って寝直した。ちゃんと12時前に起きられて、昼飯食いに外出も出来た。満足だ。
Rootsを貶してしまったことを後悔している。言葉では言い尽くせないほど素晴らしいドラマだった。だから、明日は三時間観るつもりだ。観ても後悔しない。
お袋に即席のうどんを買って来てくれと頼んでいたら、間違ってラーメンを買って来やがった。明日は土曜日の祝日なのに、珍しく豊田が来なかった。次男の賢二は今日も外泊しに行った。
10月9日(土)
1週間へばり付いて観たRoots、到頭終わってしまった。Rootsロス状態だ。今まで無数にドラマを見てきたが、これだけ感動し、後々まで余韻が残り、脳裏に名場面がありありと蘇ってくるドラマはなかった。今明け方の4時だが、Rootsの余韻を抱き締めながら寝ることにする。
It's Kunt Kinte
実に忘れ難い覚え易い名だ。寝る気になったのは古典の進行がぱっとしないためでもあるが、兎に角、今は寝る。
10月10日(月)
おかしい。身体が怠い。英熟語の瞑想確認が終わって昼寝した。まぁ根詰めて勉強していたらこんなこともあるだろうが、もうサボらん。後四ヶ月、死ぬ気で頑張る。本気だ。いくら身体が怠くても眠くても頭は絶えず働かせる。
俺が昼寝して1時間くらい経った15時に豊田がやってきた。エキサイトして喋っていたので、夜、お袋が、「何であげん喧嘩腰に話すんね」と文句言って来た。俺と豊田の仲じゃ。お袋には関係ない。
豊田の話に拠ると、古野は相当優雅な学生生活を謳歌しているらしい。今日は福大の女とドライブに行ったげな(そうだ)。
解説;古野は鳥巣高の同級生、三年のとき同じ31ホームルームだった。推薦で福岡大学に進学した。羨ましかったのは彼が単車の大型免許を持っていたこと。免許を取得して直ぐ、中古のDT250を手に入れた。一度彼の家に行き、DT250のエンジンを掛けさせて貰おうとした。「YMRに掛けきるかいの?」と、にやにや笑うので、簡単やろもんとキックしたら、物凄いケッチンが返ってきて大腿をしこたま打った。あの痛み死んでも忘れない。
このケッチン、セルスターターのついているバイクに乗っている人には縁のない言葉だ。バイクのエンジンを始動する場合、キックスタート方式とセルスターター方式がある。キックスタートのキックペダルをキックするときに、踏み込んだ後、エンジンが逆回転してしまってキックペダルが反対方向に跳ね上がる。これを俗に「ケッチンを喰らう」と言う。「痛ぇー!」で済めばいいが、いい加減にキックしてケッチンを喰らうとかなり痛い。酷いときには怪我する。
人生でたった三年間の貴重な高校時代にタンデム走行できる大型バイクを乗り回す、俺は憧れに憧れた。隻脚の俺は、数回、運転免許試験場に行ったが、どうしても上手く走れず諦めた。特に体育祭、買い出しや打ち上げとかに単車を持っている奴はかっ飛んで行けたし、女子を後ろに乗せることもできた。
卒業時にみんなで書いた文集「べらべら」に古野は書いていた。
次に印象深いことは体育祭での銀鳥での事件、このことは知っている人も多い…かな。あのときは◯◯さんと◯◯さんが、いろいろ失敗してとても笑かしてくれました。あのことは忘れられません。◯◯さん、もう一度バイクに乗りませんか。僕はいつでも乗せますよ。
銀鳥は鳥巣のスーパー。俺も隻脚でなく普通に単車の免許を持っていれば、女子に、「俺はいつでも乗せたるでぇ」と気軽に言えたものを。俺は青春を相当、損したように思える。
もう一つ、高校時代の古野は軟派だった。同窓生に中村けいこというかわいい女子が居たが、あるときその子に、「ふ~るの君」と呼び掛けられていた。クソ!羨ましい!
俺も抜け毛が気になっていたが、古野の髪は非常に細く、禿げ易いと思っていたが、想定通り俺より進行が早く、20代後半で見事に禿げた。この頃、古野も小倉に居て、行き付けのビデオ屋に行ったとき彼も来ていて、後ろから見てその後頭部の禿げ上がり方で直ぐ分かった。古野は暫くして転勤で小倉を離れた。
ただ、錯覚だったのかなと記憶がはっきりしないのだが、豊田の結婚式のとき、古野も呼ばれていた。そのとき見た彼の頭、禿げが完璧に治っていたのだ。禿って治るものなのと驚愕するとともに、俺だけ禿げのまま取り残されるのかと落胆した覚えがある。
10月11日(月)
一応、11時に起きた。焼きそばを買って来ようと思ったが、金が置いてなかった。12時20分に親父が仕事から帰って来て飯代をくれたが、もう焼きそば屋は客が多いと思い、Aコープにお握りを買いに行った。帰り、焼きそば屋を覗いたら、そうまで混んでなかった。Aコープにはスパゲッティもあった。
本屋もちょっと寄ってみたが、まだ昼だったので漫画本は来てなかった。
今、古典をやっているが、正直難しい。何より手が疲れる。只今、未明の3時47分。




