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赤字領地を押し付けられた無能文官、数字と仕組みだけで静かに成り上がる  作者: 蒼野湊


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第93話 残す理由

 会議室に、沈黙が残っていた。


 誰も正しくない。


 その言葉は、

 否定ではなく、

 前提になっていた。


 午後。


 レインが、新しい案を出す。


「判断記録の保存期間を延長します」


 短い提案。


「すべての記名判断を、

 一定期間、参照可能にする」


「検証のためですか」

 若手が問う。


「それもある」


 レインは、少しだけ間を置く。


「だが、それだけではない」


 沈黙。


「忘れないためだ」


 静かな言葉。


 誰も、すぐには反応しない。


 ルカが、低く言う。


「現場は、忘れない」


「中央は、忘れる」


 レインは即答する。


「だから、残す」


 合理ではない理由。


 だが、必要な理由だった。


 俺は、何も言わない。


 彼が、自分で言葉にした。


 それで十分だ。


 夕方。


 報告書の形式が再び変わる。


> 判断記録保存:必須

> 閲覧可能期間:延長

> 検証用途および教育用途に使用可


 数字ではない項目が、

 制度に組み込まれていく。


 夜。


 レインが言う。


「基準は、再現のためにある」


「そうだ」


「記録は、継承のためにある」


「そうだな」


 彼は、ゆっくりと息を吐く。


「……私は、間違え続けると思います」


「そうだろう」


「それでも、残せばいい」


 それが答えだった。


 完璧な判断はない。

 正しい選択もない。


 だが、

 残すことはできる。


 残せば、

 次がある。


 帳簿には、

 数字と、

 名前と、

 言葉が並ぶ。


 それは不完全だ。


 だが、

 消えない。


 成り上がりは、

 正解を残す物語ではない。


 **間違いごと、

 残し続ける物語だ。**


 窓の外は静かだ。


 制度の中に、

 “忘れない仕組み”が、

 静かに組み込まれていた。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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