六幕目 旅籠 丹波屋
貴方に本名はありますか。
旅籠 丹波屋
宿に着くと中松さんが早速部屋割りを決める。
自分を含めた六人が一部屋。中松さんが一部屋。町田と笹が一部屋。
女中さん達が桶に水を入れて持ってきて足元に置く。時代劇で見た事ある。初体験だ。
え、桶が四つのみ。迷霧と炎が中心になって隅におかれた桶で足を五人で洗っている。
奴隷だからか中松さん達を見ると女中さんに当然のように足を洗って貰っている。こういう事は普通なのかな。
主が挨拶に来た。
侍で一番年上の町田に挨拶をする。
一旦、自分達が泊まる部屋に全員が集まる。
「明日の競り市はどうします」
中松さんが質問。
「人は揃ったのですが、せっかくなので覗くだけ覗こうかと」
「大競り市は拙者も未見ですが」
町田様ナイスフォロー。
これ以上増やすのかと五人の殺意が無いはずの嫉妬が。
「確かに三人のように掘り出し者に巡り会えるかもしれません」
中松さん。迷霧と炎も掘り出し者ですが。節穴だ〜。
「では、明日十の刻(午前10時)玄関で、競り市に同行出来る奴隷は二人のみ。二人選んで下さい」
「解りました」
三人が退室したのを確認する。
部屋を見渡す。布団を入れる押し入れの襖は有るが後は壁で出入り口は一カ所だけ、襖だが中から簡単な鍵がかけられる。少し意外。日本の旅館の感じ。
「迷霧と真風。同行して」
「畏まりました」
迷霧 良い返事の子。
「あの、姫から離れるのですか」
真風 反抗した。
「主人に逆らうの」
「申しわけありません。只、姫が心配で」
真風は震えてる。
「凪様、申しわけありません。真風、姫には拙者が付いているから」
琥珀〜。
「二人共間違えない。和風はもう姫では無い。主人は寿 凪だ。自分が一番だ。そして他の者が二番だ。迷霧も炎も和風と一緒だ」
真風・琥珀しょんぼり。
「それに、和風。越後屋の女将さんへの挨拶は主人の許しを得てから、炎と迷霧を誘って行うべきだった。真風と琥珀が意見すべきだった」
「凪様。申しわけありません」
三人娘が反省している。
「姫をお止めしませんでした。私の責任です」
真風〜。
「姫は目立つから駄目」
「申しわけありません」
「あの〜。越後屋さんでも直せませんでした。いっその事、名前にしませんか。ひめ」
ナイスアイデア〜迷霧。
「名前は変えれる」
「奴隷商か公文所で出来ます。和風さんは、名が知られてますから、越後屋さんでは。森護の和風さんと知られると揉め事になるかも」
炎、質問に答えてくれてありがとう。
「ひめだけだと不自然です。平仮名でひめのでは。苗字みたいですが、名でも大丈夫かと縮めてひめ」
迷霧 気がつく子。
「どうだい、ひめのは」
和風は少し考える。
「迷惑をおかけします。名をひめのに変えさして下さい」
「穏やかに吹くそよ風の意味。春風の意で、和風」
「よくご存知で」
「自分も風の名だからね」
「風がやみ、波のない穏やかな海でしたね。凪様」
「風よりも波の感じですね」
迷霧は狐耳をピコピコしながら感想。
迷霧 可愛い子。
「自分もそう思ってた」
「あの、それと凪様。自分は拙者ですよね。人前では、使わない方がよろしいのでは」
「迷霧は気配り屋さんだね。気よ付けるよ」
「はい」
「迷霧は変わった名だけど意味は」
「狐族は、幻術を得意とします。獣人は魔道力が少ないので、魔道が使えない種族が多いのですが狐と狸族は別です。特に我の家系は、霧の幻を得意とします。迷うぐらい濃い霧で迷霧です」
「そういう意味」
「はい。狐族の幻術は他の幻術と違い、魔道力で幻そのものを作り見せます」
「ホログラフかな」
「ほろく?」
「幻を作り、見せるからくり」
「へー」
「話し変えるけど、真風と琥珀は名を変えなくて大丈夫かな」
「苗字は知れてますが、名はそれ程でも大丈夫かと」
炎が考えながら答える。迷霧も同意する。
「琥珀・真風・炎・迷霧。和風は、今からひめのに改名する。ひめでも良いが、なるべくひめのと呼ぶように」
「二人の為に、御手数をおかけします。申しわけありません」
真風が頭を下げ琥珀も続く。
「ひめのは諱は知ってるかい」
「はい。存じ上げてますが」
「やっぱり諱かな白い文字は。姓は剥奪され、字は変えられ。本名叉は諱は東風だね。ひめの」
ひめのにしか見えないよう、畳に指で書いて見せる。
「何故ゆえに諱をご存知なのです」
怯えながら、ひめのが聞いてくる。
「才と共に見えるから、諱が無い者は赤い文字で見えるらしい。炎の文字が解ったのはこの力。炎は諱は無いね」
「越後屋さんで文字が解った訳が、解りましたが。あの、いみめは何ですか」
「ハハハ」
「龍人族は呪術を毛嫌いしてますから」
ひめのが解説してくれた。
「諱。本名とも言う。名は字とも言う。自分なら姓は寿。字は凪。諱は瑞風。諱は死後の名でもあり。諱は呪術にも使われる。呪うなり操る事も出来る。諱が無い者は字で出来る。諱は確める為さん聞いた。白い文字で見えるのが諱だと解った。他に青い文字と黄色の文字があるけど意は解らない」
「諱が読める。凪様は・・」
「こちらにはあるか解らないけどね。日本では古い陰陽師の家系。自分で十代目。だけど諱があるのも忘れさられた時代でね」
「陰陽師様」
迷霧が憧れの目で見る。有るんだ陰陽師。
「諱は他人は知られないようにします。それが解る」
こちらはそうなんだ。少し違うな。琥珀、目が怯えてるよ。
「陰陽師様で諱が解るなら最強です。呪いも操りもいくらでも出来ます」
真風も興奮状態だけどね。ごめんね。
「でもね、自分は呪術は解らない。使えない」
「「はあ」」
炎以外絶叫。
「自分の家系は占いと防御一辺倒。呪術の業は無い」
「諱が読めるのに・・・勿体無い」
ひめのは愕然としていた。
「全て秘め事で」
「はい」
炎以外は疲れた感じがする返事。
それでも迷霧ちゃん復活。タフな子。
「あの、名はいつ変えますか、越後屋さんなら今日か明日でないと。三崎藩へ行くんですよね。それならお願いが有ります。越後屋さんの近くにある、矢上神家に行かせて下さい」
「迷霧じんやは何」
「神様の家です」
「神社かな。どうして行きたいの」
「それは、凪様に身請けして頂けたお礼詣りです。番頭さん達の付き添いがあれば、近所は散歩させてもらえました。その時にお詣りをさせて頂きました。凪様のように優しいご主人様に身請けして貰えるように。あ、後ですね、一番上の兄が我の忍び道具を隠してくれたからです」
「忍び道具」
其は是非回収しましょう。
諱の説明は少しづつ。
諱の設定から入りました。




