私が魔女になったワケ
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審問室から出て、閉じられた扉を一瞥してからシグネラは大きな舌打ちをして廊下へと目をやる。そこではルルルがしゃがんで配信をスマホで眺めていた。
「なんだ? まさか待っていたとか言うんじゃねぇだろうな?」
「そのような気色の悪いことはしませんよ」
「だったら良いが」
シグネラは壁に背中を預け、無意味になんとなく天井を眺める。
「どのようなことを訊ねられたのですか?」
「テメェに言う必要があるか?」
「ありませんが、一応は傾向と対策を得ておかなければ今後なにかしらで呼び出された際に困りますので」
「……俺の名前は知ってるよな?」
「シグネラ・アーケミア。確か、魔女候補生になってから『シグネラ』と改名したような気がしています」
「気がしていますってなんだ?」
「当時は全く関わり合いがありませんでしたので、あなたが今の名前を名乗るようになってからしか私の中に記憶がありませんから」
配信から目を離すことはなく、淡々とルルルは言葉を羅列していく。文章として成立しているかも怪しいのは意識が常に別のところにあるからだとシグネラは溜め息をつく。
「シグネラの由来は『デラシネ』。要は『根無し草』だ」
その一言でルルルが顔を上げてシグネラを見る。
「そのせいで、今回の『根無し草』が俺と関係しているんじゃないかって散々なくらいに疑われた。ついでにその『根無し草』は俺と同じぐらい再生力が高い魔女狩りだったみてぇでな。雑草を操る辺りも、俺が得意な木属性から起因してんじゃねぇかって。だから俺があの魔女狩りを最終的にはコントロールしてんじゃねぇのかと疑われた」
「被害妄想も甚だしいですね」
「ああ、俺が魔女狩りを操れるんならなんで地下に落ちたときに他の魔女狩りをボコボコにしなきゃならなかったんだよって話だ。しかも拳がぶっ潰れるまで殴り続けたんだぜ?」
そう言ってから、ルルルが視線を再びスマホに落としていることに気付く。驚きはあったものの、シグネラの調子が変わらなかったためにすぐに感情を鎮めさせたのだ。
「猫の仮面の魔女狩りもそうだが、ちょっとばかり仮説があってな」
「魔女の感情に共感したことで発生した魔女狩りがいるかもしれない」
言おうとしたことを先に言われ、シグネラは舌打ちをする。
「あり得なくはねぇんだよ。魔女だってなにを隠そう人間だ。しかも幸福不幸を問わずして悲惨な過去を持っている輩は大勢いる。そのマイナスの感情に触発されて、その感情を喰って膨れ上がった魔女狩りだってそりゃ出て来るだろうよ」
「観測はされてはいませんが、可能性はゼロではありません。いいえ、これまでもひょっとすると観測されていたのでは? ですが、あなたの思うような魔女から発生したと断定される前に討伐できているために、未観測という状態が続いていた」
「だとしたら、俺たちが魔女狩りを討伐した際に可能な限り回収しろと言われている魔女狩りの魔力塊はなんだ? 一体なんのために回収させられてんだ?」
ルルルはなにも答えない。配信を閉じて、スマホをポケットに入れて瞳に虚無を覗かせながら立ち上がる。
「真相は私たちでは追えません。とはいえ、身近に差し迫った問題として頭の隅に入れておかなければならないでしょう」
「ああ」
「そして問題はもう一つ」
「「ミイナ・サオトメ」」
二人の声が珍しく重なる。
「なんでも、ラスティーの『赤』を呑み下したとか」
「馬鹿げた奴だ。いいや、化け物か?」
「運良く刻印贈与において生存。しかしながら受贈されたのが運悪くもラスティーの刻印。プラマイゼロに見えてひょっとするとマイナスかもしれません。どうしますか?」
「知らねーよ。あいつが自分でなんとかするしかねぇよ」
「手を貸す予定は?」
「ない。つーか、そこまで面倒は見切れねぇ。ラスティーに盾突いて目を付けられるのも勘弁だ。そういう頭の堅い連中に目を付けられて色んな妨害を受けた末に死んでいった魔女を幾らでも見ているからな」
「ですよね。火中の栗を拾う道理はありません」
どこか一安心したようにルルルは息をつく。
「ミイナ・サオトメはどのように立ち回るでしょうか」
「好き勝手にすりゃいい。だが、仲良しこよしで『魔女の大釜』で過ごすのはもうできねーだろうな。俺だったら三月まで引きこもるが」
「『根無し草』などという難敵に接触したがゆえの決別が続くでしょう。しかし、これは別に彼女に限った話ではありません」
「ああ、俺たちだっていつかは『根無し草』みてぇなヤバい魔女狩りと戦うことになる。そうなったときは、テメェを見捨てさせてもらうぜ? ルルル」
「ええ、私もこの手で切り刻んであげますよ、シグネラ」
互いに不敵な笑みを浮かべて、鼻で笑ったのち歩調を合わせて二人は長い長い廊下を歩き出した。
*
「大丈夫……私ならやれる、私ならやれる」
自分自身に言い聞かせながら私は執務室に入る。いつもと変わらずアイリスは書類の束と格闘し、パソコンへ入力するためキーボードを叩いている。
「どうした?」
視線を向けることなくアイリスは私へと訊ねる。
「報告することがあるなら早くしろ。でなければわざわざ二週間も待ってやった理由がなくなってしまう」
二週間。
それがセルバーチカが死んでから経過した日数。イマイチ実感が湧かない。私はこの二週間をどうやって過ごしていたのかの記憶が不鮮明だ。通夜や葬式、そういったものがあったはずなのに強烈に残っているものが少ない。
思い出すのはいつだってトラウマばかり。失敗だと思ったことばかり。その失敗によって悲しんでいる人たちの顔ばかりだ。
「『根無し草』は、私を標的にしていました」
「貴様を対象とし、貴様に関わる全ての人物への無差別攻撃。その特異能力は必ず対象に決別を与える。非常に難儀な魔女狩りだよ。その発生条件は未だに不明で、必ず一人が死ぬ。滅多に発生しないが、発生しないわけではない。そのタチの悪さは貴様が味わった通りだ」
「どうして私が標的にされたのでしょう」
「思うところは?」
「……ありません」
「本当に?」
「はい」
アイリスは追及をやめて、紙を私へと手渡してくる。
「これは?」
「小野上 徹についての報告書だ」
紙に目を向け、黙読するも耐えられずに小さく悲鳴を上げる。
「なんで、なんで……なんで!?」
「言っただろう、対象に決別を与えると。必ず一人が死ぬが、一人の犠牲だけで済むというわけでもない」
私に突き付けられた紙にはその詳細が載っている。その全てを正確に読み解いたわけではないけど、小野上は『根無し草』の影響によって死亡したとある。
「全部、私のせい……」
「何度も言わせるな。『根無し草』は対象に決別を与える。貴様がどれほど正確に立ち回ろうと犠牲が出る魔女狩りだ。そこに責任もなにもない」
「でも私がいたから」
「貴様じゃなくとも、別の誰かが標的に定められたなら同じように誰かが死ぬ。運が悪かった。そのように考えろ」
「……運? 運が悪いからって、セルバーチカが死ななきゃならなかったんですか?」
「そうだ」
ああ、やっぱり私はどこまでも魔女と共感することができない。
「『魔女の大釜』を抜けます」
「ニャーシィが悲しむぞ?」
「構いません。多分ですけど、師匠はなんにも言いませんし」
「……そうか。魔女となるべくして『魔女の大釜』に来て、シグネラ・アーケミアに求められて、魔女になることが確定している未来を捨てるか。人の期待をそのように簡単に裏切るか」
「裏切る? 裏切るもなにも、あなたたちは私に期待なんてしてない」
そもそも魔女が他人に期待を向けているようにはとてもじゃないけど思えない。使えるか使えないか、利用できるか否か。その観念から離れてくれない限り、私たちの間に協力関係はあっても信頼関係は永遠にない。
「野良魔女になれば制約も発生する」
「私が魔女になることをやめてしまえば、問題ないんじゃないですか?」
憧れた、夢見た、頑張った。けれど、私は魔女に向いていないことが分かった。だったら素直にこの道を歩むことを諦めるべきだ。やっぱり向き不向きはある。合わないなら離れるべき。未練はあるけど、後悔になることはきっとない。だって私が努力した日々のどこにも嘘はないから。そこには真実だけがあって、ひたすらに憧れを目指した。そりゃ生活の中に怠慢はあった。だけど、魔女狩りや魔物との戦いで私は一度だって手加減したことはない。いつだって本気だった。本気であったからこそ、捨てられる。
「なりませんわ」
後方からの声を聞き、私は振り返る。
「あなたが魔女をやめることは絶対に許しません」
「ジルヴァラが決めることじゃない」
「いいえ、わたくしが決めることです。あなたは魔女にならなければなりません。必ず、絶対に」
「うるさい」
「うるさくもなります。セルバーチカの『赤』を呑み下したあなたをわたくしは絶対に魔女へと仕立て上げなければなりません」
は? なにそれ? 無意味な強制力を私に押し付けてこないで。
「まるで自分が正義みたいな言い方をしないで」
「ラスティーの『赤』は独自色。『銀』よりもずっとずっと気高きプライドによって成り立つ色。それを呑み下したあなたが、魔女にならないなどテイラー家として認めるわけにはまいりません」
「……あのさぁ、家柄とかプライドとか私はどうだっていいの。いらないんだよね、そういうの全部全部全部」
「刻印を贈与したセルバーチカを裏切ると?」
「セルバーチカだってそれを望んでいる」
「いいえ」
「なんでセルバーチカのことを知った風な口を、」
「あなただって同じことをしていますでしょう?」
ジルヴァラと口論して勝ったことはない。彼女は弁舌だ。まともに話し合って論破はできない。感情論を押し付けても全部を跳ね除けられる。分かっているから、まともにやりあっちゃ駄目だ。
「捨てるということは、セルバーチカが託した色を捨てるということ。彼女の目指した魔女への憧れを捨てるということ。あなたがそれで良くても、セルバーチカの想いに対して正しくないのでは?」
「…………あなたはあの場にいなかった。あの場にいなかったからそんなことを言える。私はセルバーチカに押し付けられたの! 私は、私は!」
「本当にただ押し付けられただけですか?」
「そうだよ! 私は押し付けられて、」
やがて魔女になるあなたへ――
「なんで、なんで……なんでなんで」
頭を掻き、髪を乱し、頭の中に響くセルバーチカの声に感情が乱れる。
「なんでみんな私を責めてくれないの!? あの状況で精一杯の努力、正しい選択をしたみたいな! そういうことばっかり言うの!? しょうがないとか仕方がないとか、そんな区切りの付け方ができるの!? 人が! セルバーチカが! 私の友達が死んだんだよ?!」
「だからこそ」
ジルヴァラが自身の右手を左手で握り込み、強く強く力を込めている。
「あなたは生きなければなりません。この魔女の世界で」
「私は本気で魔女になりたいわけじゃない」
少なくともセルバーチカほどの欲を私は持ってない。あの子は本当の本当に、魔女を目指してた。私みたいに師匠に言われたから『魔女の大釜』に来てなし崩し的に物事が進んでしまっているわけじゃなくって、なりたいから『魔女の大釜』に入った。憧れの大きさが違う。どうして彼女よりも憧れが小さい私が生きてなきゃいけないの?
「セルバーチカが生きるべきだった」
「……違います」
「違わない!」
「セルバーチカも生きるべきだった。あなたと共に」
嘘だ。なんでそんな顔してるの? あのジルヴァラが、どうして泣いてるの?
「わたくしはあなたを許しません」
声を震わせ、グズりながらジルヴァラは必死に発声する。
「誰もあなたを責めないのであればわたくしがあなたを責めます。あなたがいて、あなたほどの人がいて、どうしてセルバーチカが死ななければならなかったんですか? どうしてセルバーチカが死ななければならなかったんですか? あなたがいながら、あなたが傍に! あなたが、あなたが!」
だからこそ、と彼女は続ける。
「わたくしはあなたを絶対に許しません。どれだけの人があなたを許そうと、わたくしだけはあなたを生涯許すことはないでしょう。そしてもしも、今この場で本当の本当に『魔女の大釜』を抜けると仰るのであれば」
銀色の感情の波が溢れる。
「わたくしは『赤』を――セルバーチカの色を力尽くで奪わせていただきます。わたくしから逃げ『魔女の大釜』から離れようとも、必ずあなたを見つけ出します。その身に宿す『赤』を、この手で奪ってみせます。テイラー家の名のもとに生涯を懸けて、あなたを追い詰めさせていただきます」
天井を見上げる。
私がどうするべきか。もう答えは出ている。出ているけど、怖くてその選択を取ることができない。とても怖い。怖くて怖くてたまらない。
また私の前で誰かが死ぬんじゃないか。私のせいで、誰かが犠牲になるんじゃないか。私が誰かを死なせる原因になるんじゃないか。そういったことが頭をよぎり続けて、目の前が真っ暗になってしまう。
「……笑わせないで」
強がる。
「そのときは私があんたの色を奪ってやる」
馬鹿だな、私。売り言葉に買い言葉じゃん、こんなの。付き合う必要はないし、さっきも口論は避けるべきって思ったじゃん。なんで乗っちゃってるの? なんでまた頑張ろうと思っちゃってんの?
最悪、終わってる。私の人生って終わってばっか。
「親友になりましょう、ミイナ・サオトメ」
「あんたが親友? 冗談言わないで。ただ利用されるだけでしょ」
「だったら、あなたもわたくしを利用しては?」
「テイラー家だのなんだのと言っている人を利用できると思う? 私の方が立場が弱いのは見えてるでしょ」
私はジルヴァラを抱き締める。
「だから、利用するだけ利用して? 使い物にならなくなったら、捨てていい。殺してくれて構わない」
「ええ、分かりました。このわたくしが、あなたの心臓を食べて差し上げます」
とんでもない子と、とんでもないことを約束してしまった。
一番嫌っている子が、一番傍にいてほしいと思うようになることってあるんだなって。
「やがて魔女になるあなたへ」
「え?」
「セルバーチカが私に言ったの。だから、私たちの共通の言葉にしよう。ジルヴァラだけじゃない、アミューゼやエリナ、アンテオとの」
「……はい。『やがて魔女になるあなたへ』」
今にして思えば、ここが私の分岐点――
ここでジルヴァラに引き止められることがなかったら、私は多分、魔女になってない。
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「まったく、魔女になって二日目で弟子を取ったのは『魔女の大釜』史上、貴様が初めてだ。それでいてホムンクルスまで返却せずに保持したがったのも史上で貴様が初めてだよ、ミイナ・サオトメ」
「申請は通ったんですか?」
「通る通らないではなく、通した。この私に頭を下げさせたんだ。その価値、くすむまで『魔女の大釜』で働いてもらうぞ」
アイリスは物凄い疲労感を露わにした溜め息をつく。
「私たちの世間では貴様について『ラスティーから『赤』を奪った魔女』となっているが、そこのところに申し開く部分はあるか?」
「ありません」
「即答するのか?」
「はい」
「……つまり、その汚名を着せられたまま生きると」
「はい」
その方が私はずっとセルバーチカの意思を引き継ぐことができる。汚名から逃げたら彼女のことを私はすぐに放り出してしまうだろう。そうなるとジルヴァラにすぐに殺されてしまう。
「覚悟があるのならもはやとやかくは言わない。だが、貴様は特例中の特例となった。不祥事はやめてくれ。貴様の師匠でこちらもかなり懲りている」
「あの師匠の弟子ですよ? 普通なわけないじゃないですか」
「以前は師匠より真っ当だという顔をしていたがな」
呆れて再度、アイリスは溜め息をつく。
「小野上の妹だが兄の死亡から自暴自棄となり家出失踪したところを貴様が保護。状況を鑑みて貴様が保護……ここまでは良いか?」
「はい」
「どうして気に掛ける? 貴様にとって過去の男でしかない小野上 徹の妹など拾わずともいいだろうに」
「私なりの責任の取り方です。あと、過去の男とかいう誤解を生むような表現をしないでください」
小野上とはなんにもなかった。
「どうにも気色の悪い取り方だ。それに肯ってしまった私も私だが……テイラーに脅されては、どうにもならなかったところもあるのだが」
「それで、これからどうする?」
「どうするもなにも、魔女として『魔女の大釜』に尽くしますよ」
「言うだけならタダだからな」
「ええ、タダです」
「タダより怖いものはない」
「ですがタダより安いものもないので」
アイリスとのやり取りで屁理屈を捏ねるのはこれで何度目だろう。最初こそ恐怖の象徴だったけど、十月ぐらいにはもう砕けた感じで接することができるようになった。彼女にとっては迷惑なのかもしれないけど。
「弟子とはいえ、魔女になったばかりの貴様では教えられることも少ない。少ないがゆえに、妙なことを学ばせるな?」
「気を付けはしますが、燈夜が勝手に学んだ場合は私にはどうすることもできないので」
「ニャーシィに困らされ、ニャーシィの弟子に困らされ、ニャーシィの弟子の弟子に困らされるときが来ると? 私の人生はニャーシィに振り回されているではないか」
「面白い人生ですね」
「他人事のように言うな。だが、奴とのパイプとして貴様がいるのはありがたい。神出鬼没で捉え切れんが、貴様を通せば奴を引きずり出すこともできる。『百日魔宴』の真相も未だ闇の中だ。注意しろ」
「はい。でも私は目下のところ、」
「『根無し草』か?」
「はい。『根無し草』は再起不可能なレベルまで痛め付けました。きっとその経験からあの魔女狩りは私を標的にすることはないでしょう。だとすれば私は共感できる点からも雑草の『根無し草』に対して特効を得たとも言えます。だから、再び報告として出てくるようだったら私に回してくれると助かります」
だが、これはただの推測であってひょっとするとまた私は決別を与えられるかもしれない。そうならないように私を取り巻く人たちへの事前連絡ぐらいはしなきゃなとは思ってる。それに別の『根無し草』が発生した場合は静観が求められる。
「好きにしろ。『魔女の大釜』から離れん限りは面倒も見てやる」
私が肯いてみせるとアイリスは鼻で笑う。
「緩々と『根無し草』を一網打尽にできる好機を待ち続けるだけの日々など貴様は求めていないだろう?」
「なので当面は猫の仮面の魔女狩りについて調べようかと。あれにも煮え湯を飲まされたので」
「目撃情報や相応の噂話を収集した際には貴様にも回そう。だが、他の魔女が討伐してもとやかくは言うな」
「ありがとうございます」
「……随分と納得するのが早いな」
「思えば昔の私は生意気だったなと」
「……? 今も変わらず生意気なままだが?」
人が反省しているのになんだその言い草は。
「これから貴様には夢のような毎日が待っていることだろう」
「それほど期待感に溢れた世界じゃないことぐらい知ってます。なので、私は期待なんてしません。常に抱くのは、傷付く覚悟です」
「生意気な魔女だ。しかし、その生意気さは捨てずに生きてみろ」
「はい」
私は小さく礼をしてから執務室を出た。




