救援⑤
「弾薬は残り少なく、全員の疲弊も凄まじい。このまま逃げ切るのは至難の業だ。そこでリオ、この先待ち伏せに適した場所はないか探してくれないか?」
フェリクスからの問いかけに、リオは苦笑いを浮かべる。
「逃げずに叩く気かい?いいね、あんたらしい。どんな所だい?身を隠して待ち伏せ出来そうな所かい?」
「いや、出来れば敵があまり広がらずに追って来るような、少し狭い所がいいんだが」
フェリクスの言葉を聞き、リオは小さく頷き目を閉じる。
「……OK、ここから東に二、三キロの所に岩場のせいで狭くなる所がある。そこならどうかな?」
「よし、そこへ向け」
フェリクス達はリオが鷹の目で見つけた場所へとハンドルを切る。
フェリクスはその場所に着くと、車を停め一人外へと降り立った。
「おい、まさかまた一人でやるつもりじゃないよな?」
リオが降りて来てフェリクスに詰め寄るが、フェリクスは柔らかな笑みを向ける。
「一番安全な策さ。ただ、不安がない訳じゃない。リオ頼みがある」
「な、なんだよ」
珍しく頼ってくるフェリクスに、リオは戸惑いを見せる。
「俺の様子がおかしいと思ったら、すぐに引きづってでも連れて行ってくれ」
「は?どういう事だ?」
「俺もどうなるかわからないんだよ」
そう言って笑みを浮かべた後、フェリクスは追撃部隊が来るであろう箇所を静かに見つめていた。
リオは何も言わずに傍らで立ち尽くす。
「……少佐、来るよ。たぶん後、二、三分だ」
「了解した」
フェリクスはバトルスーツを面部まで装着すると、静かに息を吐き、集中を高めていく。
集中しろ。やれる筈だ――。
フェリクスが自分に言い聞かせる。
このクリスタルを使い魔法を使うようになってから奇妙な感覚に苛まれていた。
だが同時に自信もあった。
このクリスタルは、とてつもない力を授けてくれると。
「少佐、来たぜ!」
リオが叫ぶが、フェリクスは目を閉じ、じっとしていた。
ここを乗り切らなきゃどうしようもないんだ。夢でも幻覚でも見せてくれていいから、力を貸してくれよ――。
フェリクスの想いに呼応するように背部に装着されたクリスタルが不気味に輝きだした。
フェリクスの頭の中に、不思議と言葉が流れ込む。
『……光集いし汝の力を持って彼の者達を焼き払え……』
頭の中に流れ込む言葉を唱えると、フェリクスの前には赤く輝く光球が現れる。
追撃して来た車両が迫る中、フェリクスがそっと腕を前に突き出す。
『殲滅光焔矢』
フェリクスが唱えると、赤い光球は追撃してきた車両に向け放たれた。着弾すると轟音と共に半径十メートル程の爆炎がドーム状に広がり全てを飲み込む。
爆炎の中は、高温で焼き尽くされ、鉄で出来た車両や武器さえもドロドロに溶かしていた。
数百メートル離れていたフェリクスやリオの元まで爆風に乗り熱波が押し寄せる。
「マジかよ!」
咄嗟に身をかがめたリオを、フェリクスが抱きかかえる。
「お、おい!」
リオが照れたように声を上げるが、フェリクスはそのまま岩場に身を隠した。
熱風をやり過ごし、リオが岩場から身を乗り出し確認すると、そこには焦土と化した惨状が広がっていた。
原型を留める事なく車両は溶け、岩場も半分消失していた。まだ熱が残る地からは煙が立ち上り、地表は焼け焦げ、えぐられていた。
焦げた不快な匂いが辺りに立ち込める。
「すげぇな」
リオが思わず口にし、フェリクスに目を向けると、フェリクスは何も答えずうずくまっていた。
「……おい、少佐?」
リオがフェリクスの肩を揺すると、フェリクスはそのままリオの方へと倒れ込む。
「え?ちょっと待てって……」
少し顔を紅潮させ、戸惑いながらフェリクスの肩を叩くリオだったが、フェリクスは何の反応も返さなかった。
「……おい、少佐!」
異変に気付き、リオがフェリクスのバトルスーツの面部を外す。
フェリクスは既に意識を失っている様だった。




