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ラングレーの攻防⑤


――

 ラングレー司令室で睨み合うフェリクス達とマーベリック。

 マーベリックは手にした銃を撃ち抜かれた手を握り締めながら憤怒の表情でフェリクスを睨む。


「フェリクス貴様、軍法会議ものだ、反乱罪だぞ」


「どうぞお好きに。俺はお前がしようとしていた虐殺行為を止めただけだ。軍上層部がこれで俺が間違ってると言うのなら、俺は軍とも戦ってやるさ。俺は兵士だ。殺戮者になるつもりはない」


 フェリクスが言い切ると、マーベリックは強く歯ぎしりしフェリクスを睨みつけていた。


 そんな時、司令室に通信が入る。

 近くにいたマーベリックはすぐに通信機を手にした。


「マーベリック大佐。ダムが何者かによって襲撃されています。既に爆薬もいくつかは解除されました。このままでは爆破出来なくなります」


「なんだと!?」


 通信を聞いたマーベリックはすぐに自らの机に行き、爆破スイッチに手を伸ばした。

 だがその刹那、フェリクスの剣が空気を切り裂きマーベリックの腕が宙を舞う。


「うわぁぁぁ、腕が、私の腕がぁ……」


 肘から先を失い、流れ出る血を必死に押さえながらマーベリックが叫ぶ。


「させると思うか?出来ればお前は軍事裁判にかけたいんだがな」


 剣を手にしながら冷たく言い放ち、ゆっくりと歩み寄るフェリクスを見て、マーベリックは腰を抜かしながら必死に逃げる。


「だ、誰でもいい、今すぐ司令室まで来い!フェリクス・シーガーを討て。命令だ。討った奴には特別報酬を与える」


 マーベリックが通信機で基地全体に放送を入れるが、むしろ放送を聞いた兵士達は戸惑っていた。


「何が起こった?」

「フェリクス少佐を?」

「討てるかよ。あの黒い死神だぞ」


 基地全体に戸惑いが広がる中、フェリクスが通信機を手にする。


「ラングレー基地の兵士に告げる。俺はフェリクス・シーガー少佐だ」


 司令室の空気とは裏腹に、その声は穏やかで、まっすぐだった。


「知っている者もいるだろうが……マーベリック大佐は、セントラルボーデン軍を止めるためにダム爆破を企てていた。これは作戦ではない。“虐殺”だ」


 兵士達のざわめきが徐々に静まっていく。


「俺は独断だが、それを止めるために動いた。ダム爆破を支持する者は容赦なく排除する。だが、俺の行動に賛同してくれる者は、俺が必ず守る。命令違反にはさせない。君達が自分の良心に従って行動することを祈る」


 フェリクスが話し終える頃には、基地内の戸惑いは落ち着き、ダムでの戦闘も終わりを迎えていた。

 ラングレーの基地全体がフェリクスに賛同し、逆にマーベリックは殺戮を企てたとして拘束された。


 暫くしてダムでの戦闘を終え、爆薬を全て回収したヴェルザード達がフェリクスの元へと戻ってきた。


「少佐、この度は作戦成功おめでとうございます」


 そう言って胸を張り、綺麗な敬礼を見せるヴェルザードの顔はどこか誇らしげだった。


「ヴェルザード、お前達もよくやってくれた。そっちは被害はどうだ?」


「レスターが少し負傷しましたが、全員無事です」


「そうか」


 ヴェルザードからの報告を聞き、フェリクスもようやく顔をほころばせる。


「少佐、ここからどうしますか?」


 ヴェルザードの問いに、フェリクスは少し考えたが、首を振って苦笑いを浮かべる。


「ダム爆破という最悪のシナリオは回避したが、マーベリックがそれ以外の手を用意してなかったせいで他に打つ手がない。今から本国や周辺の基地に援軍を頼んでも間に合うとも思えんしな」


 そう言ってフェリクスは頭を掻きながら俯く。


「ではやはりここを手放しますか?」


「仕方ないがそうなるな。今更徹底抗戦しても兵士をいたずらに消耗するだけだ。不本意ながらラングレーから撤退し、一度引くしかないな」


 その後、ラフィン軍はラングレーからの撤退を始めた。

 数日後にラングレーにセントラルボーデン軍が進軍した頃にはラングレー基地はもぬけの殻になっていた。


 あまりにも鮮やかな引き際にセントラルボーデン軍を率いたアイリーンは思わず笑いが込み上げてきた。


「はっはっは。まさか逃げられとはな。久々に暴れるつもりだったが慎重に来すぎたか……ふん、つまらん」


 歯噛みするアイリーンだったが、クリスは空を見上げて安堵の表情を浮かべていた。


 しかしこのラングレー基地奪還が、この戦争の転換点となってしまう。

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