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ラングレーの攻防③


――

 フェリクス隊がラングレーでマーベリック大佐達と静かな攻防を繰り広げている時、ラングレーに向けて進軍しているセントラルボーデン軍に帰還したクリスは司令部を訪れていた。


「この大事な時に、指揮を執る私に面会を求めるとはいい度胸だな少尉。余程重要な話なんだろうな?」


 腕を組み、鋭い眼光を向けるアイリーンを前にして、クリスは気圧されつつも、膝をつき報告していた。


「はい、私がラフィン軍と戦闘になった時にラングレーの指揮を取るマーベリックという男がダム爆破を企てている事を偶然知りました」


「……ほう、ダムをか。奴らが考えそうな愚行だな」


「はい、私もそう思います。私は軍に報告しに戻るには時間が無いと考え、単独で動き、奴らのダム爆破計画を阻止しました」


 膝をつき、頭を垂れながらもしっかりと報告するクリスに、アイリーンは笑みを浮かべながらゆっくりと近づく。


「ほほう。中々勇敢だな。ひょっとしてそれで隊への帰還が遅れたのか?」


「……はい、その通りです」


 頭を垂れるクリスの頬を冷たい汗が一筋流れ落ちる。


 上手く話が繋がった。フェリクス少佐、お願いだからそっちも上手くやってよ。じゃないと私もただじゃすまないんだから――。


 胸中の不安を必死に抑えながら下を向くクリスの前に、アイリーンが立つ。


「顔を上げろ、クリスティーナ少尉。ダム爆破を阻止したならこのまま進んでも問題ないのではないか?」


 もっともなアイリーンの言葉にクリスは唾を飲み込む。アイリーンは静かにクリスの事を見据えていた。


「確かにおっしゃる通りです。しかし、ダム爆破なんて事を企てる相手です。向こうの指揮官マーベリック大佐も拘束出来た訳ではありません。それに、我々がここまで近付いているにも関わらず、向こうが静かすぎます。まだ何かあるかもしれません。ここはルートを変えるとか、一旦止まって作戦を考えてはどうでしょうか?」


 クリスの進言にアイリーンは何も言わずにじっとクリスの顔を見つめていた。重い沈黙の時間が訪れる。

 息が詰まるような静寂。

 クリスにはこの数秒がとてつもない時間にも感じられた。


「……なるほど。確かに少尉の言う事にも一理ある。どの道、奴らがどんな手を使おうが叩き潰すだけだ。少し足を止め、奴らの出方をうかがってみるか。その間、兵士達にもちょうどいい休憩にもなるだろう。少尉ご苦労だった。お前も下がって休んでいろ」


「はい、ありがとうございます」


 クリスは敬礼し、すぐさま部屋を後にした。


 外に出て、一人になると、ラングレーのある方角をみながら微かに笑みを浮かべて息をつく。


 ひとまずこっちは上手くやったよ。そっちは頼んだわよ、フェリクス少佐。今更ダム爆破なんてされたら私の嘘がばれるんだから。そして願わくばそこから上手く撤退しといてね。出来れば会いたくないから――。


「……戦場ではね」


 最後に小さく呟き、夜空を見上げて微笑んでいた。

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