ラングレーの攻防②
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一方、ダムに急行したヴェルザード達は身を潜めて、ダム周辺を注意深く見つめていた。
「どうだリオ?」
「……ダムに仕掛けられてる爆薬は五箇所。たぶん信号を受信して爆発するタイプだ。警備に四人。他にウィザードらしき奴らが三人。日が落ちたとはいえ、一気に制圧するのはちときついんじゃないかな?」
リオが鷹の目を使いながら静かに告げる。
「確かにリオの言う通り、相手の配置を考えれば不意をついたとしても何人かとは交戦になるだろうな。ダムに近い奴らから優先的に排除する。相手に気付かれたら、その瞬間から一斉に制圧に動け。味方だからやりにくいが、躊躇すればこちらがやられる。一気に片をつけるぞ」
「了解」
ヴェルザードの指示に全員が頷き静かに返した。
まずはヴェルザードやエルザ、リオ達がダムの最上部を目指し、駆けて行く。
ダムの最上部に到着すると、すぐさまそこにある制御室に突入する。中にいた兵士は驚き、すぐに腰にある銃に手を伸ばした。
だが先頭にいたリオが素早くナイフを手に取り相手の首筋にすっと刃を当てる。
「動くな。静かにしなよ。少しでも歯向かえばあたいは容赦なくあんたの首をかっ切るぜ」
冷たい瞳で静かに告げるリオに、相手兵士は何も言わずにゆっくりと両手を上げて降伏の意を示す。
「OK、いい子だ。暫く大人しくしとくんだな」
リオがそう言うと、エルザがすぐに相手兵士を縛り、拘束した。
制御室を制圧したヴェルザード達はダム最上部からダムを見下ろしていた。
眼下には暗闇の中、月に照らされた冷たい無機質なコンクリートの壁が広がっていた。
リオが覗き込みながら苦笑いを浮かべる。
「ここをロープを使って駆け下りて、爆薬を回収する訳だ。中々原始的だな」
「だが、それが一番確実だ。本当に行けるのか?」
ヴェルザードが静かに問いかける。
当初の予定では戦闘に不向きで体重も軽いエルザが爆薬回収に向かう筈だった。
だがリオが「自分なら爆薬の位置も把握している」として、エルザの代役を買って出たのだ。
「なんだ?あたいじゃ不安かい、旦那」
皮肉交じりの笑みを浮かべるリオにヴェルザードがゆっくり首を振る。
「いや、お前に何かあったら少佐に怒られるからな」
「ははは、それはそれで見てみたいな。じゃあ気楽に行くかな」
リオが笑いながら自身の体にロープを縛り付けていると、エルザが不安気な表情で歩み寄る
「リオ、ごめん。大丈夫?」
「はは、大丈夫さ。ヴェルザードの旦那の指示を的確に皆に伝えられるのはエルザなんだ。この隊のオペレーターはエルザしかいないんだから。危ないのはあたいが引き受けるぜ」
そう言って満面の笑みを見せるリオにエルザがそっと拳を突き出す。
「この隊の目はリオなんだよ。だからちゃんと帰ってきてよ」
「こういうのは慣れてるんだ、任せとけって」
リオは差し出されたエルザの拳に自分の拳を合わせると、ダムの縁に立つ。そこに灰色の壁の先に広がる、不気味な暗闇が広がっていた。
リオは大きく息を吐くと、颯爽とダムの壁を駆け下りて行く。
垂直に立つダムの壁は、駆け下りると言うより、落下に近かった。
それでもリオはロープを掴み、ダムの壁を蹴りながら難なく一つ目の爆薬へと辿り着く。
「へへ、頼むから今爆発とかするなよ」
リオが呟きながら爆薬をダムから外していく。
「リオ、マーベリック大佐は自分の作戦を部下や他人に任せるはずがない。この作戦の肝であるダム爆破は自分でやりたがるはずた。我々の動きに警備が気付いても、彼らが自分の判断で爆破する事は恐らくない」
リオの呟きにヴェルザードが通信で答えるが、リオは苦笑いを浮かべていた。
「その恐らくが怖えって。少佐が今頃、マーベリック大佐を抑えてる事を祈るかな」
リオはぼやきながら一つ目の爆薬を外し終えた。
まだ静寂に包まれたダムでは、闇に紛れてリオは静かに次の爆薬に向かっていた。




