決断
横に立つジェーン達に視線を走らせ、クリスは苦笑しながらフェリクスを見つめた。
「圧倒的に不利。だけど私は兵士だし、引けない時だってある。何より今の話が本当なら……私は全力で阻止する」
そう言って見つめるクリスの瞳からは強い意志が感じられる。横に立つジェーンやキャスパーの引き金に掛けた指が微かに力む。
そんな中、フェリクスは小さく息を吐いた。
「……全員肩の力を抜け。そしてよく聞くんだ」
フェリクスが声を低くして言うと、全員の視線がフェリクスに向く。
フェリクスも全員の顔を見渡した。
「まず、リオさっきの話は本当なんだな?」
「ああ、間違いないよ。あたいが鷹の目を使ってダム周辺で指示を出していたマーベリック大佐を見つけたんだ。そしてダムに仕掛けられてる爆薬も見つけた」
リオが話し終わると、更にキャスパーも口を挟む。
「加えてヴェルザード大尉の話ではウィザードも配置しているようです」
「なるほどな。爆薬だけじゃなく、上手くいかなかった時の保険でウィザードを使ってダムを爆破するつもりか」
フェリクスは頷くと、リオを見つめた。
「それで、リオ。ヴェルザードは何か言ってたか?」
「ああ、なんか『準備はしておきます少佐』って伝えろって言われたよ」
それを聞いたフェリクスは口端を上げ、ニヤリと笑った。
「上出来だ。さてクリスティーナ少尉」
フェリクスがクリスの方に向き直ると、クリスは力強く見つめながら笑みを浮かべていた。
「何?フェリクス少佐」
「君は解放する」
「なっ、少佐、ちょっとお待ちください」
フェリクスの言葉を聞き、思わずジェーンが叫ぶ。ざわめきが全員に伝わっていく。
だがフェリクスは更に続けた。
「リオ、マーベリック大佐はどのタイミングでダムを爆破するか、ヴェルザードは何か言ってなかったか?」
「ああ確かヴェルザードの旦那が言ってたのは――」
リオが落ちていた小枝を拾い土に簡易的な絵を描いて説明を始めた。
「――セントラルボーデン軍がこの辺りに来た時に爆破する気じゃないかってヴェルザードの旦那は予測してたぜ」
それを聞いていたクリスの顔が険しくなる。
「私達はその手前で集合して、そこを通って進軍するルートのはず」
「まぁ大部隊ならそこを通るルートになるだろうな。マーベリックもそこを狙うつもりだった訳だ。そこでクリスティーナ少尉。君は軍に戻って軍の足を止めてくれないか?進軍を遅らせてほしい」
フェリクスの頼みにクリスは思わず苦笑いを浮かべる。
「私みたいな一兵士がセントラルボーデンの大部隊を止めれると?」
「それでもやってみてくれ。遅らせてくれるだけでもいい。俺達はその間にマーベリックの作戦を阻止する。いや、作戦なんてものじゃない。俺達の誇りに反する虐殺だ。ダム爆破なんてしたらラングレーに住む、一般人何万人も巻き込む大量虐殺になる。なんとしてもやめさせる」
フェリクスが力強く言い切ると、全員が静かに頷いていた。
「やるだけやってみるわ。予定通り軍が行動してたら恐らくあと半日程でそこを通るわ」
クリスはそう言って踵を返し歩き出したが、数歩歩いた所で立ち止まり、顔だけ再び振り返る。
「フェリクス少佐、信じてるからね」
そう言って微かに笑みを浮かべると、返事も聞かずに再び前を向き歩き出した。
「少佐、監視とかはしなくていいのかい?」
リオが静かに尋ねるが、フェリクスは去り行くクリスの背を見つめながら笑みを浮かべて首を振った。
「いいさ。俺達も彼女を信じよう」
フェリクスが言うと、リオも笑みを浮かべて頷く。
そのままフェリクス達はラングレーへと急いで戻って行く。




