最終防衛ライン ケセラン・ハルト⑥
笑みを浮かべて立ちはだかるアイリーンに対して、フェリクスが仕掛ける。
左手を突き出し構えると、フェリクスの手元には四つの光球が現れた。
「ほう、早速光魔法か。フェリクス・シーガー。ソルジャーだと認識していたんだがな」
アイリーンが笑みを浮かべ、呟く。
「先手必勝だよ。光熱矢」
フェリクスが唱えた瞬間、光球は放たれ、光の矢となりアイリーンに迫る。
それと同時にクリスも地を蹴り、アイリーンに迫った。
しかしアイリーンは微かに体を左右に振って一本目、二本目の光の矢を躱すと、迫る三本目の矢を剣で弾く。
だが四本目の矢が眼前に迫り、背後からはクリスが剣を振り上げ迫った。
もらった!――。
完璧な挟撃。
フェリクスもクリスも確実に捉えたと確信した。
しかしアイリーンは眼前に迫る光の矢を左手一本、素手で受け止めると、背後から迫るクリスの刃を手にした剣で受け止めた。
「いい攻撃だが、惜しいな」
アイリーンはニヤリと笑い左手で受け止めた光の矢を握り潰し、受けた剣でクリスを薙ぎ払う。
アイリーンの眼前では、握り潰された光の矢が、光の粒子となり漂い消えていく。
振り飛ばされたクリスが膝をつき、苦笑いを浮かべていた。
「ちょっと化け物過ぎないかしら?」
「光熱矢を握り潰すのは反則だろう」
フェリクスも苦笑しながら呟く。
アイリーンは笑みを浮かべて、まるで自らの庭でも歩くかのように、戦場を闊歩しながら近付いて来る。
「はっはっは。フェリクス・シーガー。いい攻撃だった。速さも威力もあった。受け止めた私の手が痺れたぞ。だがクリス少尉。貴様の攻撃は軽い。速さはあるが、弱いな」
「ははは。それはすみませんでした。普通は軽かろうが刻めるわよ」
クリスが顔を引きつらせながら呟いていた。
ゆっくりと近付くアイリーンにフェリクスも、剣を握る手に力が入る。
何が効く?光熱矢は効きそうにない。殲滅光焔矢なんか唱える隙は与えてもらえんだろうし、銃なんか簡単に躱すだろうな――。
「……だったら剣しかないか」
フェリクスが剣を握り締め一歩踏み出す。
だがまさにその時。
アイリーンの背後から剣を振り上げ、イアンが飛びかかった。
「死ねぃ!アイリーン!」
飛び込みざま、剣を振り下ろすがアイリーンは簡単に剣で受けると、気だるそうに眉根を寄せた。
「なんだ?貴様。人が楽しんでいる時に」
「私はイアン・コール将軍。サダハラで散った部下達の無念ここで晴らしてやるわ!」
イアンが叫び剣を振り上げる。
更に左手には炎を灯した。
「くだらんな、老兵。『その身を焦がし地に伏せよ、雷槍撃』」
アイリーンが唱えると、まばゆい閃光が走り、雷撃がイアンを直撃した。
バチンと音を立ててイアンが弾かれるように吹き飛ばされる。
アイリーンは飛ばされたイアンに冷たい視線を送ると、笑みを浮かべてフェリクスの方へ向き直った。
「さて、続きといこうかフェリクス・シーガー」
笑みを浮かべてアイリーンが剣を握り締める。
しかし次の瞬間、弾き飛ばされたイアンが再びアイリーンに飛びかかった。
「貴様の相手は私だと言っているだろ!アイリーン!」
イアンが叫び剣を振り下ろす。
アイリーンはひらりと躱すと怪訝な表情を浮かべた。
「直撃したはずだ……貴様そのバトルスーツ絶縁処理してあるな?」
「ふん、貴様への対策は抜かりないわ。私の一撃躱したな?受けるのは余程怖かったと見える」
そう言って笑うイアンを見て、アイリーンの目つきも鋭くなった。
「躱せるから躱したまでだ。躱せるものをわざわざ受ける馬鹿がいるか」
「ふん、強がりおって。フェリクス少佐!こやつは私が引き受ける。貴様はとっとと、他の援護に行け」
一瞬戸惑ったフェリクスだったが、視線の先ではキャスパー達も苦戦を強いられており、頷くと駆け出して行く。
「将軍、すいません。すぐに戻ります」
「ふん、必要ない。私が片付ける」
イアンが強気な笑みを見せると、去って行くフェリクス達を見つめアイリーンが力強く一歩踏み込んだ。
「老兵、私の楽しみの邪魔をしたんだ、責任を取ってもらうぞ」
冷たく言い放ち、イアンを睨む。




