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最終防衛ライン ケセラン・ハルト②


 フェリクス達がケセラン・ハルトに到着して三日が経つ。

 フェリクスはイアンのクリスタル内蔵バトルスーツの訓練に付き合わされていた。


「流石ですね、イアン将軍。まさかもう簡単に火球を操れる程になるとは思っていませんでした」


 フェリクスがにこやかにイアンを褒め称えると、イアンは得意気な笑みを浮かべる。


「ふん、年老いたとはいえ、戦闘に関してのセンスには自信を持っておる。無駄にふんぞり返っているだけではない」


 イアンがそう言って笑う顔を見て、フェリクスも苦笑いする。


 本当は俺も自分のバトルスーツを調整したいんだけどな――。


 あの日、グランディアスで『殲滅光焔矢(メギド)』を使用した時、その後の副作用のような幻覚に襲われる事はなかった。

 むしろここ最近は力を授けてくれてるような安心感さえ感じている。

 しかしそれがフェリクスにとって逆に不安でもあった。


 フェリクスがそんな不安を抱えながらイアンの相手をしている時だった。

 突如警報が鳴り響く。


「緊急警報!緊急警報!先日陥落したサダハラ及びグランディアスより世界連合軍の出撃を確認。早ければ二十四時間後にはここケセラン・ハルトに達する模様。総員戦闘準備に移行せよ」


 警報が鳴り響く中、イアンはニヤリと笑う。


「遂に来たか世界連合軍。待っていたぞ。私の恨み、晴らす時が来たのだ。フェリクス少佐、すぐに隊員達を集めろ!」


 狂気に満ちたイアンの表情を見つめ、フェリクスは一瞬躊躇ったが、仕方なく従い隊員達を集める。


 集められた隊員達を前に、イアンが腕を組み立つ。

 

「いいか諸君。時は来た。憎き世界連合軍はすぐそこまで来ている。今こそ諸君らの力を解き放つ時だ。奴らに思い知らせてやるのだ、我々ラフィン共和国の力を。そして後悔させてやれ。この地に足を踏み入れた事を」


 イアンの演説をフェリクスは横で静かに聞いていた。


 完全に私怨だな。何があったか詳しくは知らないが……しかし部下全員を失えばそうもなるか――。


 フェリクスは呆れながらも、イアンに対して、同情にも似た気持ちを抱えてもいた。


「では私は準備に入る。諸君、明日戦場で会おうではないか」


 そう言ってイアンは去り、フェリクス達だけが残された。

 微かにざわめく室内で、フェリクスがゆっくりと皆の前に立つ。

 隊員達は静まり、フェリクスに全員の視線が集まった。


「皆すまない。俺からも少しだけ伝えたい事がある。明日には過去最大の戦いが始まるだろう。将軍はああ言っているが、皆もわかっている通り戦局は極めて厳しく、今回の出撃が最後の戦いになる可能性は高い。本当は隊長である俺の口からこんな事は言うべきじゃないのかもしれないが、皆無理はしないでくれ。ひょっとしたら皆が夢見た未来とは違うかもしれない。だが、この戦いが終われば新たな未来が訪れる。その未来を君たちと共に歩める事を願ってる」


 語り終わると、隊員達は全員綺麗な敬礼をして、真っすぐにフェリクスを見つめていた。


「全員、二十時間後には配置に着けるよう各自準備しろ。では解散!」


 ヴェルザードの力強い声が響くと全員が慌ただしく部屋を後にして行く。


 その様子をフェリクスが見つめていると、クリスが横に来て微笑みかける。


「ちょっとフェリクス。皆無理はするな、か。とても隊長が出撃前に言うセリフじゃないわね」


 笑いながら言うクリスに、フェリクスも苦笑いを浮かべる。


「わかってるさ。だからちゃんと前置きしただろ?」


「ふふふ、でもそれが貴方らしいんだけどさ」


 そう言って二人で笑いあっていると、背後にヴェルザードが歩み寄る。


「少佐、少しだけよろしいでしょうか?」


 形式ばって声をかけるヴェルザードに、フェリクスは苦笑し、クリスは薄笑いを浮かべる。


「ねぇヴェルザード大尉。あんまり邪魔しないでよ。妬いてんの?」


 クリスの軽口に、ヴェルザードは口角を上げて笑みを浮かべる。


「ふっ、まさか。私も一応人間だからお二人の気持ちはわかるつもりだし、邪魔はしたくないさクリス」


 予想外の返答にフェリクスとクリスが目を丸くさせていると、ヴェルザードは再び姿勢を正して敬礼する。


「ですが作戦開始前に少しだけ打ち合わせをさせて下さい。少佐、全員が配置に着く一時間前に来ていただけませんか?」


「ああ、もちろんだヴェルザード」


 フェリクスが返すと、ヴェルザードは綺麗な敬礼を崩さず一礼し部屋を後にした。

 その時フェリクスの目にはヴェルザードが微かに笑みを浮かべていたようにも見えた。

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