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グランディアス④


 フェリクス達がグランディアスに到着して二週間が経つ頃、グランディアス全体に緊張が広がっていた。


「情報は間違いないか?」


 司令室でカイルが声を張り上げオペレーターに尋ねる。


「はい、間違いありません。ここグランディアスに向けて世界連合が進軍を始めました。その数およそ三万」


「こちらの倍か。だがこちらには精鋭部隊が揃い、地の利もある。世界連合の奴らにこのグランディアスは簡単に抜けさせん」


 カイルは力強く言い切り、モニターに映る進軍してくる世界連合軍を見つめていた。


 数時間後。

 フェリクス達は基地内の一角で静かに準備を進めていた。


「いよいよか。情報では相手はこちらの倍はいるそうだ。だが悲観的になるなよ。グランディアスの後ろにあるケセラン・ハルトからも援軍が来るはずだ。ここには精鋭部隊も揃ってる」


 フェリクスが隊員達に語りかける。

 フェリクスの言葉は若干楽観的にも感じられた。

 だがそれは隊員達の不安をやわらげる為でもあった。


 フェリクスの言葉を聞き、ヴェルザードが歩み寄る。


「敵は三万ですか。結局奴らはサダハラではなく、ここグランディアスを攻めて来た訳ですね」


「そういう事だ。選択を間違ったと思い知らせてやるさ」


 フェリクスが笑った時、基地全体にけたたましいサイレンが鳴り響いた。

 それと同時に第一陣の部隊が次々と出撃していく。


「俺達は第二波を任されている。命令があるまで全員戦闘態勢で待機だ。いいか、もし撃ち漏らしても俺達の後ろにも他の部隊が控えてる。各自、目の前の敵に集中するんだ」


 フェリクスが言うと、隊員達は静かに頷いていた。

 ラフィン共和国軍はグランディアス防衛を完全に立てこもるのではなく、ある程度まで世界連合軍を呼び込み攻撃力のある部隊で波状攻撃を仕掛ける作戦に出た。


「まぁ防衛戦はあまり得意じゃないから指揮はヴェルザードに任せる。リオも鷹の目(ビジョンズ)を使って的確に情報を伝えてくれ」


「まぁ任せてくれ。皆を上手く導くから」


 リオが笑って応えると、ヴェルザードが力強く頷く。


「お任せ下さい。どうかご武運を」


 後方に待機する事になるヴェルザードとリオに護衛部隊を残してフェリクス達は配置に着いた。


 程なくしてフェリクス達にも出撃命令が下された。


「行くぞ!! クリス、ライデル行けるか?ついて来いよ」


「当然!」

「お任せを」


 フェリクス達は出撃すると迫る世界連合軍に向けて一気にトップスピードまで加速する。

 敵陣の先端まで辿り着くと、先に出撃していた第一陣の仲間達が世界連合軍と激しい戦闘を繰り広げていた。その光景を尻目に、フェリクスは更に奥へと突っ込んで行く。

 そうしてやや進んだ所でフェリクス達は敵に取り囲まれた。


「あれは間違いない。黒い死神フェリクスだ!奴を殺れば特別報奨金がでるぞ!! 皆一気に――」


 敵の部隊長と思われる者が指示を出し、声を張り上げた次の瞬間、彼は喉から血を流し地面に転がった。


「指示を出す前に敵から目を切るなよ」


 倒れてもはや聞こえるはずもない彼の傍らに立ち、フェリクスが呟く。

 フェリクスの動きに敵部隊が警戒し一瞬場が静まり返る。その僅かな好機を見逃す事なく、ライデルが率いる隊が敵部隊に襲いかかった。


「貴方達、いつもこんな無茶してる訳?」


 素早くフェリクスの背後に立ったクリスが、少し呆れるように問い掛けた。


「今回は特別さ。今回ばかりは先手必勝で流れを取らなきゃまずい」


 フェリクスが剣を握り締め前を見つめる。

 視線の先からは銃や剣を手にした兵士達が、次々と押し寄せて来ていた。


 さすがに多いな。使いたくはないが、出し惜しみしてる場合でもないか――。


 フェリクスは笑みを浮かべて覚悟を決める。


「クリス、少しだけ持ちこたえてくれ。詠唱に入る」


「こんな戦場のど真ん中でクリスタル使うつもり?貴方が意識失ったらどうすんのよ?」


「その時は引きずってでも後方まで下がって、そして叩き起こしてくれ」


「ちょっと荒くても文句言わないでよ」


 クリスがそう言う頃にはフェリクスは詠唱に入っていた。


 『……光集いし汝の力を持って彼の者達を焼き払え……』


 頭の中に流れ込む詠唱を唱え、フェリクスの前には赤く輝く光球が現れる。


「ライデル!下がって!」


 クリスが叫ぶとライデル達も察してすぐに下がった。


 『殲滅光焔矢(メギド)


 フェリクスが唱えると、赤い光球は敵陣に向かって放たれ、着弾すると同時に真っ赤なドーム状の炎が立ち上がり、数千度の炎が敵を包み込む。

 辺りに熱風が吹き荒れ、砂塵が舞う。


 身をかがめて熱風をやり過ごしたフェリクスとクリスの前に焦土と化した地が広がっていた。

 焼けた匂いが立ち込める中、クリスがフェリクスに詰め寄る。


「ちょっとフェリクス!今の魔法、近距離で使っていいやつじゃないでしょ!」


「悪い、加減すればいけると思ったんだがな」


 視線の先に更に迫る世界連合の部隊を見つめ、フェリクスは苦笑いを浮かべていた。

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