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想い


 クリスを迎えて三日間、フェリクス達第十四独立機動隊はサリア近郊で待機していた。

 それはサリアの病院に預けた隊員数名の帰りを待つ為でもあった。


「お待たせしましたフェリクス少佐。ウチの部下達と共に今戻りました」


 ライデルが敬礼しながらフェリクスに報告すると、フェリクスも笑みを浮かべてゆっくりとライデルに歩み寄った。


「よく帰ってきてくれた。暫くは綺麗な看護師に診てもらうのかと思ってたんだがな」


 冗談めかしてフェリクスが言うと、ライデルは微かに口角を上げ、凛々しい笑みを浮かべながらフェリクスをまっすぐ見つめる。


「少佐に助けてもらった命です。一刻も早く少佐のお役に立とうと必死でしたよ」


 真剣な眼差しを向け、はきはきと答えるライデルに対してフェリクスが右手を差し出すと、ライデルはしっかりと握り返し固い握手を交わす。

 そんな中、ライデルの後ろに控えていた隊員が顔を覗かせ呆れたように語り出す。


「ライデル大尉、看護師の人にしつこく付きまとうから鬱陶しがられて、さっさと退院させられたんじゃないですか」


 隊員の言葉を聞き、ライデルは苦笑いを浮かべるが、フェリクス達は寧ろ納得するような笑みを浮かべて頷いていた。


「どうあれ、しっかりと帰ってきてくれた事に意味があるさ」


 フェリクスが声をかけると、ライデル達は姿勢を正して敬礼していた。

 そうしてフェリクス達はライデル隊を指揮下に置き、ラフィン共和国内へと一度撤退する事となった。


 その後、戦場はラフィン共和国内へと移っていき、フェリクス達は国内に侵攻してくる世界連合軍を迎え撃つ事になる。ラフィン共和国内を転戦し善戦するフェリクス達だったが、情勢は徐々に世界連合側が有利になっていった。


 戦争の舞台がラフィン共和国内に移って三ヶ月あまりが過ぎたN.G.197年十一月。

 フェリクス達は最前線から少し下がった中規模都市でたまの休暇を与えられていた。


 フェリクスとクリスは街の洋食店に入り、二人っきりのディナーを楽しんでいた。


「まだこの辺りは戦争の気配は少ないけど……」


 クリスがグラスを傾け、辺りを見渡しながら呟く。

 辺りは銃声等も聞こえず静かではあったが、寧ろ静まり返り、街ゆく人々の表情からも笑みは消えていた。


「……ああ、確実に戦争が影を落としてるな」


 フェリクスも静かにワイングラスを口に運ぶ。

 そんなフェリクスを見つめクリスは微かに笑みを浮かべた。


「まぁ私は貴方とまたこうして飲めてるからいいんだけどね。まぁ早く終わってほしいのが本音かな」


「ああ、そうだな」


 フェリクスも少し笑いながら頷いていた。


――

 その頃、リオとエルザは街にあるバーを訪れ、テーブルで対面しながら酒を酌み交わしていた。


「相変わらず強ぇなエルザ」


「ふふ、これでも結構酔ってるよ」


 頬を僅かに赤くしたエルザはそう言いながらも、アルコール度数の高いカクテルを一気に飲み干す。


「飲み過ぎんなよ。何か嫌な事でもあったか?」


 エルザに問いかけながら、リオが空になったグラスを掲げ、店員におかわりを催促する。


「ふふ、何もないわよ。たださすがにちょっと疲れちゃったなって。こうやって呑んで楽しめる時はさ、楽しまないと……明日になれば私達は最前線に立たされているかもしれないんだし」


「はは、それはそうだな」


 店員が新たに酒が注がれたグラスを持って来ると、互いに手にした。


「乾杯」


 二人がグラスを合わせると、カチンと小気味よい音が響いた。


 グラスを傾け一口飲むと、エルザが眉根を寄せて少し身を乗り出す。


「ねぇ、リオ。一つだけ聞いていいかな?」


 眉尻を下げ、少し困ったような笑みを浮かべて問いかけるエルザを見て、リオは苦笑し身構える。


「な、なんだよ。怖ぇな」


 少し引きつって笑うリオを見て、エルザは微かに笑みを浮かべた。


「私はさ、クリスの事も好きだよ。明るいし美人だし気も回るし。だけどリオも好きなんだ。あっ、変な意味じゃないよ。私はちゃんと男の人が好きだから」


 そう言って笑うエルザを見て、リオはエルザが何を言いたいかはすぐに理解した。


「……リオさ、少佐の事いいの?私は少佐の事尊敬してるし、人として好きだけどさ……リオは少佐と結構、距離近く見えてたから大丈夫なのかなって」


「ははは、面白れぇな。あたいもクリスの事は好きだぜ。もちろん少佐の事もな。だけどそれはエルザが少佐に対して抱いている感情と同じようなもんさ。少佐は居場所を作ってくれて、こんなあたいを一人の人間として扱ってくれた。正直凄い恩に感じてる。そんな少佐が幸せそうなんだからあたいも嬉しいに決まってるだろ。それに……あたいみたいな女は駄目だって」


 あたいみたいな汚れた女が少佐の横なんて……自分が一番わかってるさ――。


 リオが目を伏せ、小さくため息をつくと、エルザが声を上げる。


「そんな自分を卑下しない。リオはすらっとしてて背も高いし、モデルみたいで美人じゃん。そして意外に優しいし」


 そう言ってエルザが笑うと、リオは笑みを浮かべてそっとエルザの頬を撫でる。


「なんだよエルザ。本当はあたいの事狙ってんのか?」


「な?ち、違うってば。私はちゃんと他に……」


「えっ?他に?誰だよ?」


「あ、いや、違う違う」


 エルザが慌てて否定するが、リオは笑みを浮かべて詰め寄っていた。

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