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09.プロポーズの小話

「はー…たくさん踊れました」

「楽しそうだったな」

「はい、それはもう!」


大好きなアレス様と踊れた。テュールお兄様とセティお兄様と踊って両親に立派な姿を見せることもできた。

久しぶりに会えたヴィッツィエル様と昔から約束していたダンスも踊れたし、とても満足のいくデビューだった。


「寒くない?」

「はい、涼しくて気持ちいいぐらいです」


他の方からは誘われなかったし、さすがに疲れたからアレス様の元に戻ると、外で休憩しないかと誘われ承諾した。

向かった先は二回ほど来たことがあるあの庭園。

今日はいくら皇城を自由に歩いていいことにはなっているが、さすがに皇后陛下の庭であるここへの侵入は禁止だ。

そう言ったけど、アレス様が事前に許可を貰っていたらしく問題ないとのこと。


「夜の皇城もここも…。何だか幻想的ですね」


夜空を眺めると丁度雲から満月が顔を出した。

春の満月の日に行われる成人式。本当に本当に嬉しい一日だ。

満たされた気持ちでエスコートされたのは見覚えがある東屋。

この間も来たけど懐かしいなぁ。

10歳の頃、ビクビクしながらアレス様を待っていたのに結局来なく、私ではなく皇帝陛下がお父様にビクビクしていたのも今となればいい思い出。


「シル」

「はい」

「出会うべきだった場所で出会わなかった過去をやり直したい」


東屋を見ながら物思いに耽っているいると、いつになく真剣な声で名前を呼ばれた。


「どうしてもここで君に伝えたいんだ」

「…はい」

「四年間も君を放置していた最低な人間だけど、誰よりもシルフレイヤを愛している。これからも…死ぬまでずっと俺の傍にいてほしい。俺と結婚してください」


月光が降り注ぐ中膝をつき、真剣な眼差しと真剣な声でプロポーズ。

私の両指先を握る手が少しだけ震えていて、いつになく穏やかな気持ちで彼の言葉を聞くことができた。


「……一つだけ…お願いしたいことがあります」

「何でも聞こう」

「私は過去のことを気にしていません。ですからこれから先は過去は過去として思い出にしまい、一緒に未来だけを見ませんか? アレス様の気持ちは十分伝わっております」

「―――ああ、解った」

「ありがとうございます。では私の答えは簡単です。アレス様、是非私と結婚してください」

「勿論だッ!」


待ってた!と言わんばかりに抱き抱えられる。

まるで相思相愛になったあの時のようだと思わず笑ってしまい、そのままアレス様に抱き着いた。

ああ…今日は本当に素晴らしい日だ。

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