05.ドレスの小話
✿アレスとアティルナ兄弟✿
「と言うわけで、牽制も込めて俺は皇族としてシルをエスコートします」
「うえぇ…。相変わらず重すぎてドン引きだわ…」
「まぁシルの障害となる芽を予め摘んでおくことには賛成です」
「ありがとうございます。で、皇族は基本的に白と銀の服ですが黒にしようと思います」
「うーわ、またそういうことしやがる…」
「黒をベースに銀の装飾をつければ十分目立ちますよね」
「それはシルのドレスもですか?」
「勿論です。対にしたほうがいいかと」
「お前知らねぇの? 成人式…つーか社交界で黒のドレスなんてほぼ使われねぇ色だぞ?」
「だからこそです。それにシルにはあの髪同様、黒が似合う」
「シルがどう思うかが心配ですが、それはもう一番目立ちますね」
「どこにいても目立つでしょうね」
「だからっ。前にも言ったけどシルは目立つことが苦手なんだっつーの! 兄さん、俺は絶対に反対だぞ!」
「僕も基本的に反対なんだけど…」
「じゃあ!」
「シルが強くなりたいって言ってたんだ。力だけじゃなく、精神的にも強くなって立派な大公妃になりたいって」
「……っでもこれじゃあ逆に噂されるだろ! それじゃなくてもこいつの成人式で色んな奴らから噂されて落ち込んでたのに!」
「それに関しては今でも申し訳ない気持ちでいっぱいです。なので今回の成人式で俺達の姿を全員に見てもらろうと思った次第です」
「大公夫婦の仲はいいと、ね…」
「兄さん!」
「僕もシルには強くなってほしいから反対はしません。ですが、きちんと大公殿下の口からシルに伝えて許可を貰って下さい」
「解りました」
「だークソ! 最近シルと仲良くなったって聞いたけど、だからって嘘ついたり騙して丸め込もうとするなよ!? 誠実に対応しやがれ!」
「勿論です。俺はいつでもシルに誠実を心がけています」
「はぁ…。兄さん、やっぱシルが反対してもいいからあの時に婚約破棄しとけばよかったな」
「それを悔いても遅いよ。ではそのようにお願いします。それから一番大事なことですが―――」
「シルのドレスはカルラクールの有名デザイナーにお願いしました」
「……ハァアア!? おまっ、なんで…! あそこは帝国でも有名な…ッ」
「前にシルと約束していて俺が持ってるカルラクールの土地をシルに譲ってます。その時から既にデザイナーにお願いしています」
「…抜かりありませんね」
「抜かりあっていいものではありませんから。なのでご安心下さい。あ、勿論ウェディングドレスも」
「いや…ここまでくると気持ち悪い通り越して尊敬するわ、俺…」
「デザインにはシルが好きそうなレースや刺繍を刺してもらってます」
「安心しました。それと、最後に一つ宜しいでしょうか」
「どうぞ」
「僕達はまだ大公殿下を認めていませんが、シルが笑顔のままでいるなら成人式以降邪魔は致しません。お約束します」
「かなり不本意だけどなァ!」
「ですが、必ず節度あるお付き合いをお願いします。知っての通りシルは感情がすぐ顔に出ます。僕達の前ではそれが顕著です。結婚式もニ年後ですから何かあればすぐに解ります」
「そのニ年間もアティルナ邸で過ごすからな。絶対に変なことすんなよ!」
「解りました」
「ほんとかよ…。あー…もー…ほんとやだぁ…! 何でこんな奴が婚約者なんだよー…。ずっと俺の妹でいればいいだろぉ…! 俺だってシル守れるのに…」
「まぁまぁ。それと、大公殿下お得意の転移魔法をアティルナ邸とトラキア城にも設置して頂けますか? 信じていない訳ではありませんが、何かあったときには必ず必要になりますから」
「…。それは勿論です。既にアティルナ本邸にも設置しましたし、ここにもと思っていたところです。ああ、俺のタウンハウスにも繋げますので良ければ一度ご訪問下さい」
「ありがとうございます。シルの成人式が落ち着きましたらシルとテュールの二人を連れて訪問させて頂きます」
「(うへぇ…。腹黒同士の会話は疲れる…)」
✿
「兄さぁん…、シルがお嫁にいっちまう…」
「まだ先だよ」
「でも相手があいつなのが気に入らねー」
「って言いながら、たまに手合わせしてるじゃないか」
「そりゃあ…だってムカつくけど実際強いし…。それに俺より弱かったらシルを任せらんねぇじゃん!」
「僕も過去のことを許したわけじゃないけど、シルが幸せそうだし、何より大事にしていることは解っているからとりあえずは見守るしかないね」
「あーあ…。折角甘えるようになってきたのに、あっという間にとられちまった…。もっと小さいころから構ってやったらよかったなぁ」
「待ち望んでいた妹だもんね。でもそれより、僕はもう一人の可愛い兄妹が結婚できないんじゃないかと、そっちのほうが心配だよ」
「大丈夫! なんかしんねぇけどシルが紹介してくれるらしい!」
「シルの紹介なら安心できそうだ。にしても、面倒見ていたはずなのにいつの間にか面倒見られてるね」
「それは言わないでくれよ…」
「まぁ結婚できなくても僕が団長になったあとの席が空いてるから安心しなよ」
「実力で取りたいからいらねぇ!」




