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01.エピローグ後の小話①

「これでも一応領主の娘なので今回は前回のような中途半端な変装はできません。しっかり変装しようと思います」

「(邪魔されたくないし)賛成です」


用意された朝食を一緒に食べながら、オススメしたい場所を口頭で伝えてくるシルにお腹一杯になりつつも、時間が惜しいのでサクッと終わらせる。

そして慣れた手付きで侍女にお忍び用の服を持ってこさせ、俺が変装する男性服をテュールの部屋から自ら持って来た。

ちょっと嫌だけど騎士団の制服のままでは歩けない。

張り切っているシルに服を渡され、別室で着替える。少しきつかったがなんとか着れた。

服装は南部の一般的な平民の服らしく、生地が薄くて涼しかった。


「あとは髪の毛だな」


前のように田舎の祭りであれば「銀髪=皇族」と気づく人間は少ないが、ここでは確実にバレてしまう。

できれば目立たず、シルとのんびり観光したい。


「アレス様、着れましたか?」

「ああ、大丈夫だ」


ノックのあとにシルの声が届き、すぐに返事をする。


「……コルセットは…?」

「あ、南部の平民服はコルセットをつけません。他の方からしたらみっともないと思われますが、暑さと動きやすさを重視してこういった服に落ち着いたのです。…似合いませんか?」

「似合う」


似合わない服なんてこの世に存在しないが、無防備すぎないか!?

白いロングのワンピース。コルセットらしきものは一応あるが、通常のコルセットではなく緩い感じで……とにかく危ない。

可愛いけど!可愛いことは間違いないんだがハラハラする!


「アレス様もよくお似合いです。その……も、元がとても素敵だから…!」


聞こえるか聞こえないかの声量だったが、俺にはしっかり聞き取れた。

いいや、何かあったら俺が守ればいいだけだし、ドレス着て目立つほうが嫌だ。

にしてもこの愛しの婚約者。恥ずかしい癖に一生懸命好意を伝えようとするのズルすぎない?そんなこと言われるたびに心臓がとんでもない速さで動くんだが。

嬉しいことには間違いないんだけど、いきなりの供給に思考が停止してしまう。情けない顔してないよな…?


「あ、あのっ。それとお願いしたいことがあるのですが」

「な、なに?」

「髪の色を魔法で変えてほしいです」

「ああ。それは俺も思ってたんだ。ここまで大きい都市だと髪色でバレるからな」

「そうです。なので私の髪を白に変えてほしいのです」

「白?」

「……えっと。アレス様の銀髪に憧れてて…。でも銀髪は皇族の証ですので、せめて近い白に染めたいな、と…。ほ、ほらそれに私は真っ黒なので正反対の白にしたら絶対にバレないです!」


相思相愛になった瞬間、滅茶苦茶積極的じゃねェか…!

なんだもう死ねって言いたいのか?本当は俺のことが嫌いで殺そうとしてる?告白されただけで寿命どころか、来世分の寿命まで削られたのにまだ足りないって!?


「…じゃあ俺は黒にしよう…」

「っ! 交換ですね、嬉しいですっ」

「……」


よし、来々世分の寿命も捧げよう。この笑顔だけで十分だ。でもまだ死ねない。

なんとか心に落ち着きを取り戻し、魔法で自分の髪の毛を黒に、シルの髪の毛を白へと変える。


「アレス様は黒髪だと普段以上に逞しく見えますねっ。あ、でも勿論普段の髪色も素敵です」

「―――」

「私も白になってますか?」


黒い髪が白へと変わる。

どの髪色であってもシルは可愛いから楽しみにしていたが、白い髪に碧眼のシルは心臓に悪かった。

思わず出てそうになった悲鳴を飲み込み、シルに聞こえてないことを確認。大丈夫、聞こえてない。

天使だ、女神だと思っていた彼女がまさに現れた。現れてしまった…!

純粋純潔純白。真っ白な存在に可愛い、美しいと思うことすら許されない。


「シル…」

「はい」

「俺の心臓が持たないから別の髪色でいい?」

「に、似合いませんでしたか?」

「似合いすぎて心臓が止まりそうだった。悪い、勝手に変える」

「あっ」


南部で多い茶髪の髪色に変更すると、少し残念そうな顔をされたがマジで俺が無理。

でも似合ってた…。もっと眺めていたいから二人っきりのときにしてもらおう。

なんなら俺と同じ銀髪にして、聖女っぽい服を着させて拝ませてもらおう。

そんなシルに高い位置から命令もされてみたい。許しを請いて許されたい。いや許されなくても全然いい。

はぁ…。もう観光とかどうでもいいから部屋で二人っきりになってイチャイチャしたくなってきた…。

そうは思ってもシルが楽しそうなので今日は我慢して、手を繋いで街へと向かった。

✿髪の毛の色を交換する二人の心境✿

アレス:銀髪・青目のシルは本当に天使で今にもどこかへ消えていきそうなので気が気でない

シル:黒髪・赤目になったアレスはワイルドになって格好よさが増した気がして惚れ直す

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