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54.エピローグ

「貴族だから小説のような恋愛結婚なんてできないと諦めていました。でも…アレス様と出会って、会話し、優しくしてもらって…たくさんの愛情を与えて貰えると知らない感情がどんどん溢れて…。ニル義姉様に相談したらこれは「恋」だと言われました。だからこの感情に気づかせてくれたアレス様と恋愛がしたいです」


シルから熱烈な告白を受け、初めて嬉しさで涙が流れた。

高ぶる気持ちを落ち着かせるのに、シルも俺も時間がかかり、ようやく落ち着いた頃に肩を並べてソファに座り、涙で汚れた顔を魔法で綺麗にしてあげる。

本当は流れ続ける涙を舐めて、自分の体内に取り込みたかったが、僅かに残っている理性で止めた。

ようやく相思相愛になれたんだ。今まで以上に気を付けなければいけない。失敗なんて以ての外だ!

そして改めて落ち着いたシルから、シルが想っていること、考えていることを聞いてまた泣きそうになる…。

泣いて全てを吐き出したのか、今は真面目に…だけど照れ臭そうに俯いたままもう一度告白してくれる。

可愛くて何度も抱き締めそうになるもギリギリ残っている理性で引き留める。

今さっきみたいに抱き締めたい。抱き締めて幸せを実感したい!


「それは俺からもお願いしたいことだ。でも忘れないでくれ。政略結婚であろうと俺はシルを女性として誰よりも愛している」


いやそれ以上の感情を抱えている。

だけど根本の「相手が好き」だと言う気持ちはシルと一緒。ああもうそれだけで嬉しい!

俺と同じように、俺を愛してほしくて愛情を伝えると、女の子の顔をして喜んでくれた。


「で、ですがようやく自覚したばかりの恋愛初心者です…。どうしたらいいか解らず、きっとアレス様にご迷惑をおかけするかと…」

「シルになら何をされても嬉しいから、そんな気にしないでくれ。シルはただ俺に愛されているだけでいい」

「ぅあ…! そ、そうなのですか…?」

「そう決まっている。まぁ俺もシルと同じ恋愛初心者だから一般的には解らないから、これから一緒に考えていかないか?」

「アレス様もですか?」

「シル以外の女性を愛したことなどない。シルと言う婚約者がいるわけだし、他の女に恋してたらおかしいだろ?」

「あっ…そう、ですよね…。失礼しました」

「………。ところで、シルは他の男を…?」


自分で言って苦しくなる。

シルの口から直接色々聞きたいから、シルの過去については調べていない。

もしいたらそいつを必ず殺してやる。


「な、ないです! 絶対にありえません! アレス様が初恋です!」


何度も何度も俺の心を救っては癒してくれる…!

しかも初恋?初めての恋が俺!?そんなことがあってもいいのか!?いや他の奴にシルの初恋を捧げてほしくないからいいけど!

相思相愛になった事実を思い出して、少し意地悪したい気持ちも芽生えてきた。

きっと嫌な顔をする。させたくないけど(しても可愛い)、もう一度しっかり俺が初恋だと言ってほしい。


「サルトラ・セヴァイス・カリュオンは?」

「―――ありえません。大嫌いです」


キッ!と睨みつけてくるシル。

凛々しくて格好いい表情もいいな…。そんな顔もできるのか。

そんな顔をさせるのがあいつだけなのは気に食わないが。


「それなら安心した。元婚約者候補だと聞いて少し焦っていたんだ」

「大きな声では言えませんが、あの御方を好きになるなんてこれから先絶対にありえません。私が好きだと思うのはアレス様だけです。初恋だってそうです。………信じてもらえませんか?」


上目遣い可愛いし、また好きだって言ってくれたし、俺が初恋だって…!

幸せを何度噛み締めても、もっともっとと望んでしまう。本当に今日は最高の日だ!

これからこの幸せが続くと思うとまた涙が滲んでくる。


「あの、話は変わりますがルールを作ってもいいですか?」


いいに決まってんだろ!

シルにだったらルールで縛られても嬉しい。シルを縛れる口実にもなる!とにかくシルの言うことは絶対に何でも従う!


「例えば?」

「まだ解らないことばかりなので徐々にですが…。とりあえずアレス様が辛い時は一番に私に頼ってほしいです」

「……っわかった…! 何かあれば一番にシルに頼る…っ!」

「ありがとうございます。何もできないかもしれませんが、頼って貰えると嬉しいですね」


この子の可愛さヤバくねェか?相思相愛になったからそう見えるのか?いやその前からシルはいつでも可愛い選手権殿堂入りだろ。

無理無理。こんな可愛くて優しい婚約者が俺のものだなんて無理!苦しい!

前にミリガンに言った通り、このままずっと一緒にいると浄化される…。本望だけどできればまだまだ先がいい…。百年後とか。

と言うか何かお願いする時必ず祈るように両手を握るのはズルくね?神聖的すぎ。俺がシルを拝みたいんだが?


「アレス様からも何かありますか? 初心者の私でもできることならいいのですが…」


シルにお願いしたいこと?んなこと沢山あって言い切れない。

まず俺だけを見てほしい。その瞳に他の男を絶対に映さないでほしい。それが例え家族であっても嫌だ。

それにシルから誰かに喋りかけないでほしい。触らないでほしいし、触らせないでくれ。相手が女でもシルが汚れてしまうから嫌だ。

ただひたすら俺だけを求め、頼り、喋りかけて、常に俺を想いながら生きてほしい。

いっそのこと俺なしでは生きていけなくなればいい。だから俺しか知らない場所で、俺しか知らない状況になってほしい。


「アレス様?」

「(なんて言えるはずもなく…)そうだな…。何かあったら抱え込まず、今日みたいに全部俺に話してほしい。泣いてるシルの顔も可愛いけど、できるだけ笑顔でいてほしいから悩んでほしくない。悩みができても俺に言ってくれ、一緒に解決しよう。あとはもっと我儘言ってほしいかな? 謙遜が悪いとは言わないけど、俺はシルを笑顔にしたいから遠慮せず何でも言ってくれ。あ、文句も可。戦場育ちで無作法なのは自覚しているから文句を言われても仕方ないと思っている。何より俺自身がシルの望む男になりたいから是非とも遠慮せず言ってくれ。あと最後にこれだけは守ってほしいことがある。異性と二人っきりにならない、触れない。―――じゃないと俺が壊れちまう」


できる限り抑えた願望を口にするつもりが、話せば話すほど欲望が顔を出してくる。

シルが他の男に触れた想像をしただけで殺意が芽生え、つい無感情に脅しのような言葉を出してしまった。

言った瞬間すぐに後悔する。また前みたいな最低最悪のプロポーズに近い事を言ってしまった…。

駄目すぎる…。シルのことになると黒い感情が抑えきれない。


「はい、気を付けますね! えっと、悩んだらアレス様に話す…。それから―――」


それなのにシルは全てを受け入れて頷いてくれた。

忘れないように俺が言ったことを繰り返し胸に刻んでいく姿に、申し訳ない気持ちと、まだ言っても許されるだろうかという愚かな考えが浮かぶ。


「(駄目に決まってんだろ、落ち着け)俺も他の女と二人っきりにならないから安心してくれ」

「解りました。あ、でも公の場や、最低限の挨拶などはお許し下さい」

「(シルは)許すよ。他には何かある?」

「いえ、今はこれぐらいしか思い浮かびません」

「ならさっそく相思相愛の婚約者…。いや、その前の恋人してお願いしたいことがある」

「こ、恋人っ…! な、なんでしょう」

「デートをしよう」

「…デート?」


前に行った祭りや、マルスの必需品を購入した日以来二人で外に出ることがなかった。

相思相愛になったんだ。もっとシルのことを知りたい。って言うかイチャつきたい!

未成年だけど婚約者なわけだし、相思相愛なら多少は許される。許してほしい!それに南部にはうるさい兄二人がいない!

仲を深めるには持ってこいの展開だ。絶対に何が何でもデートがしたい!


「南部に来たのは初めてだし、シルの故郷を知りたいんだ。案内してくれないか?」


そんな下心を出すことなく、シルが優しいと言ってくれる紳士的な俺になりきって誘うと、パッ!と笑顔を咲かせる。

はぁ…今までよりキラキラ輝いて見えるのは絶対に気のせいじゃない。なんだあの可愛さ。知能低下するわ。


「お任せ下さいっ。帝国一の観光都市デオンには負けますが、我が領地もとても賑やかで楽しいですよ!」


は?可愛すぎてキレそう。今なら隣国の王国も消せる。

そうか、こんなことではしゃぐのか…。いやはしゃぐシル最高すぎじゃね?

そうだよなぁ…。シルは身内が大好きだから俺に見て欲しいんだよな。自慢したいんだよな…。


「浄化される…」

「ではさっそく朝食を済ませて向かいましょう! 泣いたのもあってお腹ペコペコです」


ペコペコって言葉すら可愛く聞こえる…!

落ち着け。落ち着いてミスを犯すんじゃないぞ!


「食べたらまた変装だな」

「アレス様の服はテュールお兄様のあるのでご安心を!」

「テュールかぁ…」


ああ本当に最高の一日だ。これからの生活が光り輝いて見える。


『ごめんなさい、アレス様』

「―――?」

『貴方と結婚して一度も貴方を愛したことはないの』

「(う、っぐ…!)」

『私、昔から貴方のことが大嫌いなんです。だから―――』


幸せを噛み締めていると視界が歪んだ。

鮮やかな夕日に強く目を奪われる。

あまりにも綺麗で隣に寄り添うシルに「綺麗だな」と語り掛けたかったのに、それができない。このまま時が止まってほしい衝動に駆られる。聞きたくない。


「アレス様?」

「……」

「どうかされましたか?」


夕日とは対照的な青い目が俺を下から覗き込む。

よかった。彼女の目は青いままだ…。


「何でもない。テュールの服を借りるのかと思うと寒気がしただけだ」

「ふふっ! 本当にお二人は仲良しですね」


違和感が残るものの、待ちわびた今を優先することにした。

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