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探求者の異世界美食行脚 ~異世界召喚でハズレ扱いされたゴリラ系男子、気ままなグルメ旅に出る~  作者: おまめちゃん
神造迷宮

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第139話 未知の遺跡と、クリームシチュー

通路を抜けた瞬間、思わず足が止まった。


第六十階層まで続いていた黒い火山岩も、赤い溶岩もない。


目の前に広がっていたのは、巨大な石柱と、幾重にも重なる石造りの建物だった。


天井がどこにあるのか分からないほど空間は高く、壁や床には石とは違う黒灰色の金属が埋め込まれている。


その一部には細い線が走り、淡い魔力光がゆっくり明滅していた。


第六十階層を越えた小広間で十分に身体を休めてから来たはずなのに、疲れを忘れるくらい目が離せない。


これまでに見てきた街とも、王城とも、オリエンス地下にあったアドヴァースの施設とも違う。


古いように見えるのに、完全に壊れているわけでもない。


何に使う場所なのか。


誰が造ったのか。


今も動いているのか。


もっと近くで見たい。


「フトシ?」


ベルの声で我に返った。


いつの間にか、俺だけ数歩先へ出ている。


「あ……ごめん」


足を止めて振り返る。


ベルだけでなく、キリコもこちらを見ていた。


メイとシルクもまだ後ろにいる。


自分から先へ行ったつもりはなかった。


ただ遺跡を見ていたら、身体が勝手に進んでいた。


俺の職業は【探求者】だ。


未知を探す行動そのものに強い補正があることは、最初から分かっている。


今回の感覚も、それと何か関係があるのだろうか。


それとも【直感】なのか。


だが、危険を感じた時の【直感】とは少し違う。


嫌な感じも、今は進むべきだという確信もない。


ただ、先を見たい。


その気持ちだけが、いつもよりずっと強かった。


「……勝手に先へ行かないように気をつけるよ」


「うん。一緒に行こう」


ベルがそれだけ答える。


俺たちは改めて六人揃い、遺跡の中へ足を踏み入れた。


第六十一階層は、巨大な石柱の間を縫うように通路が続いていた。


壁には用途の分からない円形の窪みや、金属でできた細長い溝がいくつもある。


壊れた石材の隙間から覗く内部には、細い金属棒や歯車のようなものまで見えた。


全部調べていたら、いつまで経っても進めない。


気になる場所は多いが、今の最優先は帰還することだ。


そう言い聞かせながら進んだ。


第六十二階層で、通路が三つに分かれた。


どれも同じような石造りで、床に刻まれた模様までほとんど変わらない。


ベルが少し先まで飛んで確認する。


「うーん。どれも途中で曲がってて、その先までは見えない」


ウンディーネも周囲の魔力を探った。


『特に変なのはないよ。どれも同じくらい』


俺も三つの通路を見る。


左。


中央。


右。


何か目印があるわけではない。


それなのに、ほとんど迷わず中央へ視線が向いた。


「……こっちに行ってみよう」


「何か分かったの?」


キリコに聞かれ、もう一度通路を見る。


「いや。特に根拠はないんだけど、こっちな気がする」


自分で言っておいて、随分曖昧だ。


それでも慎重に中央を進むと、その道はそのまま下へ続き、第六十三階層へ繋がっていた。


途中の高い場所から振り返った時、左右へ分かれていた通路の先が僅かに見えた。


片方は大きく崩れ、もう片方も途中で石壁に塞がれている。


「当たってたね」


「……そうみたいだね」


偶然なら、それでいい。


だが次の階層でも、似たことが起きた。


第六十三階層を塞いでいたのは、巨大な円形の石扉だった。


周囲には意味の分からない紋様が何重にも刻まれ、大小さまざまな突起や窪みが並んでいる。


適当に触る気にはなれない。


床や壁を確認し、危険な仕掛けがないか六人で調べていく。


その途中で、俺の視線が一つの突起へ何度も戻った。


ほかと形が違うわけではない。


光っているわけでもない。


それでも、そこだけが妙に気になる。


全員に少し離れてもらい、俺は慎重に手を伸ばした。


手のひらを置く。


ゴゴッ。


扉の奥から、重いもの同士が噛み合うような音が響いた。


円形の石扉がゆっくり回り始める。


「……開いた」


思わず自分の手を見る。


【直感】で危険を避けた時とは違う。


これが正解だと分かっていたわけでもない。


ただ、そこへ手が伸びた。


第六十四階層では、床も壁も動いた。


一定の間隔で床の金属板が沈み、別の場所が持ち上がる。


壁の一部も回転し、通路そのものが何度も組み変わっていた。


最初は動きを確認していた。


だが、何度か見ているうちに足が自然と一つの方向へ向く。


少し待つ。


目の前の床が動き、離れていた通路同士が繋がった。


そこを進む。


次の分岐では右。


その次は一度戻り、回転した壁の向こうへ入る。


気づけば、一度も行き止まりへ入らず先へ進んでいた。


「今日、すごく順調だね」


ベルが俺の横を飛びながら言う。


「順調というか……」


俺は背後でまた形を変えていく通路を振り返った。


「遺跡の方から道を見せられてるみたいな感じがする」


口にしてから、自分でも変な言い方だと思った。


当然、遺跡が俺たちを案内している証拠なんてない。


だが、それくらい迷わなかった。


第六十五階層へ入っても、俺はそのまま先へ進もうとした。


そこで、ふと後ろを見る。


キリコが肩を軽く回している。


ベルも少し低い位置を飛んでいた。


メイとシルクにも大きな疲れは見えないが、遺跡へ入った直後より動きはゆっくりしている。


ウンディーネも全員の様子を見ながら歩いていた。


俺は足を止めた。


そういえば、いつから休んでいない。


普段ならもっと早く気づいていたはずだ。


第六十一階層へ入ってから、先が見たいという気持ちに引っ張られ続けていた。


仲間を忘れていたわけではない。


それでも、休憩を考えるのが明らかに遅い。


「……一回、飯にしよう」


キリコが少し驚いたように俺を見る。


「ここで?」


「うん。俺も少し落ち着いた方がよさそうだ」


近くにあった広い石室を調べ、出入口と周囲に危険がないことを確認する。


そこへ魔導携帯テントと調理設備を展開した。


料理の匂いが遺跡の奥まで流れるのも避けたい。


セバスからもらった匂い漏れ防止の魔導具も調理区画の入口へ置いておく。


今日使う肉は決まっていた。


昨日倒した灼天巨鳥(イグニス・ロック)だ。


保存していた肉を取り出し、改めて状態を確認する。


脂は多くないが、肉そのものはしっとりしている。


その中から比較的柔らかな部分と、少し弾力の強い部分を分けた。


柔らかな方はシチュー。


弾力のある方は唐揚げにする。


まずはクリームシチューからだ。


灼天巨鳥を食べやすい大きさへ切り、大玉葱も切り分ける。


鍋へノース・グラン産の発酵バターを溶かし、大玉葱を焦がさないようゆっくり炒めた。


透き通って甘い香りが出てきたところで小麦粉を加える。


粉っぽさが残らないよう混ぜながら火を入れ、陽冠鶏のガラ出汁を少しずつ注いで伸ばしていく。


一度に入れればダマになりやすい。


木べらで鍋底をさらいながら状態を見て、滑らかになったところで次を加える。


黄金色の芋も加え、形を崩さない程度の火加減で煮ていく。


芋へある程度火が入ってから、灼天巨鳥を鍋へ入れた。


鳥肉とはいっても初めて使う肉だ。


煮込めば煮込むほどいいとは限らない。


表面の色と弾力を確かめながら、中心へきちんと火が入るところまで煮る。


最後にフレッシュチーズを少しずつ溶かした。


白い煮汁へ乳製品のコクが加わり、とろみも少し強くなる。


赤塩で味を整えれば完成だ。


次は唐揚げ。


こちらの肉はシチューより少し小さめに揃える。


天然醸造生醤油と自家製日本酒を合わせ、切った灼天巨鳥へ馴染ませた。


味を複雑にする必要はない。


今日はこの肉自体をしっかり食べたい。


下味が馴染んだら表面の余分な汁気を切り、小麦粉を薄くまぶす。


調理油を熱し、一度に入れすぎないよう数個ずつ揚げた。


肉の大きさを揃えてあるので火の通りも見やすい。


油の音を聞きながら温度を調整し、中心まで火を通してから最後に少しだけ温度を上げる。


衣の表面がからりとしたところで引き上げた。


皿へ盛った唐揚げと、白いクリームシチューを並べる。


改めて見る。


「……献立としては、あんまりまとまってないな」


思わず口から漏れた。


クリームシチューに唐揚げ。


どちらも食べたかったから作っただけだ。


「おいしければいいんじゃない?」


ベルは特に気にしていないらしい。


「今日は俺もそう思う」


全員へ取り分ける。


メイとシルクにも同じシチューと唐揚げを、量と大きさ、温度だけ調整して渡した。


まずシチューを一口食べる。


陽冠鶏のガラ出汁の旨味が土台にあり、その上へ発酵バターとチーズのまろやかなコクが重なっている。


牛乳を使ったものとは少し違うが、十分に白く濃厚なシチューになっていた。


灼天巨鳥の肉も硬くなっていない。


柔らかい中にほどよい弾力があり、噛むと鳥肉らしい濃い旨味が出てくる。


黄金色の芋には出汁と乳製品の味が染みていた。


続けて唐揚げを食べる。


薄い衣が軽く割れ、その下から熱い肉汁が広がった。


生醤油の香ばしさと日本酒の風味はあるが、肉の味を隠してはいない。


こちらはシチューより歯応えがあり、噛むほど灼天巨鳥の旨味が強く感じられた。


「こっち、全然違うね」


キリコはシチューを一口食べた後、そのまま唐揚げへ手を伸ばしている。


「同じ肉なのにね」


「部位も火の入れ方も違うからね」


ベルも温かなシチューを飲んでから、唐揚げを一つ持ち上げた。


メイはシチューの器を綺麗にした後、すぐ隣の唐揚げへ鼻先を向ける。


シルクも唐揚げを前脚で押さえ、少しずつ齧っていた。


ウンディーネも特に何か言うでもなく、シチューと唐揚げを交互に食べている。


俺ももう一口シチューを飲んだ。


温かい。


鍋の中身を見て、揚がる音を聞いて、みんなが食べている様子を見る。


いつもやっていることだ。


その時間を過ごしているうちに、遺跡へ入ってからずっと続いていた妙な高揚感が少しずつ薄れていった。


未知の場所を見たい。


先へ進みたい。


その気持ちは変わらない。


でも、急ぐ必要はない。


「……今日は少し急ぎすぎてたな」


誰に言うでもなく呟く。


食べ終わった後もすぐには動かなかった。


片付けを済ませ、それぞれ十分に身体を休めてから探索を再開した。


第六十六階層から先も、状況は変わらなかった。


回転する石輪が通路を塞いでいても、なぜか俺が目を留めた場所に動かすための機構がある。


複数の道があれば、選んだ方が先へ続いていた。


第六十七階層では、壁一面に並んだ金属板の一つが気になり、ウンディーネの水とベルの風で内部の埃を除きながら動きを確認すると、その奥から通路を開く操作部が現れた。


第六十八階層では、進もうとした足を何となく止めた直後、目の前の床が大きく移動し、別の場所から新しい足場がせり出した。


危険を感じて止まったわけではない。


ただ、今は待った方がいい気がしただけだ。


第六十九階層まで来る頃には、さすがに俺も気になっていた。


(偶然で片付けるには、ちょっと続きすぎてるな)


「フトシ、やっぱり何か分かってるの?」


キリコに聞かれた。


「いや。俺にもよく分からない」


それしか答えようがない。


【探求者】なのか。


【直感】なのか。


迷宮自体に何かあるのか。


答えは出ないまま、第六十九階層の奥へ到達した。


そこには、これまでとは明らかに違う巨大な金属扉があった。


扉が開いた先は、広大な円形の空間だった。


壁も床も石より金属の方が多い。


床には何重もの円が刻まれ、壁には細い魔力光が走っている。


そして中央。


巨大な人型が、片膝をついていた。


最初は像かと思った。


だが、一歩近づいたところで低い音が響く。


ウゥゥン――。


目にあたる部分へ光が灯った。


肩。


腕。


胸。


脚。


順番に淡い光が走っていく。


巨大な身体が、ゆっくり立ち上がった。


俺は金剛棒を構えながら【鑑定】する。


【機巧守護巨兵(マキナ・ガーディアン)】

詳細:神造迷宮内に存在する巨大な機械式ゴーレム。強固な金属装甲と魔力によって駆動する内部機構を持ち、巨大な腕による打撃や胸部機構から高密度の魔力を放出して攻撃する。内部には強い魔力反応が存在するが、製造方法や詳細な構造は不明。


機巧守護巨兵が一歩踏み出す。


床全体が重く震えた。


振り下ろされた腕を避け、側面へ回る。


まずは硬さを確かめる。


金剛棒を脇腹へ叩き込んだ。


ガァン!


今まで岩系のゴーレムを殴った時とは全く違う音が響く。


装甲はへこんだ。


だが、それだけだ。


「硬い……!」


しかも、今の一撃を受けた瞬間、内部で装甲が僅かにずれた。


完全に固定された板ではない。


衝撃を受けた部分が動き、力を逃がしているように見える。


巨兵が腕を横薙ぎに振る。


キリコが魔力壁を出した。


真正面ではない。


斜めに作られた壁へ巨大な腕が当たり、そのまま僅かに上へ滑る。


俺たちは下を抜けて距離を取った。


「全部止めなくていい。その方がいい!」


「うん!」


巨兵の周囲を動きながら、何度か攻撃を避ける。


肩が回る。


腰が捻れる。


膝が曲がる。


そのたびに、装甲板同士の間へ細い隙間ができていた。


当然といえば当然だ。


全部が一枚の硬い金属で覆われていたら、身体を動かせない。


「関節を狙う!」


ウンディーネがすぐに動いた。


細い水流が巨兵の膝へ入り込む。


装甲全体を濡らすのではなく、曲がった瞬間に開いた隙間だけだ。


「メイ!」


「ワフッ!」


水だけが一気に凍った。


膝の奥で回っていた何かが鈍い音を立てる。


巨兵の片脚が僅かに止まった。


だが、完全には止まらない。


ギギッ、と内部から強い力が掛かり、氷に亀裂が入る。


その前に俺が踏み込んだ。


膝関節の装甲へ金剛棒を打ち込む。


金属板が歪み、隙間が少し広がった。


直後、氷が砕ける。


巨兵が大きく身体を起こした。


今度は胸部の装甲が左右へ開いていく。


「フトシ! 胸、光ってる!」


上空のベルが叫ぶ。


開いた装甲の奥へ、強い魔力光が集まっていた。


「離れて!」


キリコが複数の魔力壁を出す。


一枚で正面から受け止める形ではない。


斜めに角度をつけた小さめの壁を何枚もずらして並べる。


次の瞬間、胸から太い魔力光が放たれた。


最初の壁へぶつかり、軌道が僅かに上へずれる。


二枚目。


三枚目。


完全に曲げることはできない。


それでも、俺たちへ直撃する軌道からは外れた。


轟音とともに魔力光が頭上を抜け、遠くの壁へ激突する。


胸部から熱を逃がすように、白い蒸気が噴き出した。


俺は開いた胸を見る。


さっきより内部がよく見える。


攻撃する時には、どうしても装甲を開かなければならないらしい。


「……あそこだ」


閉じている時に無理やり壊す必要はない。


向こうから開く瞬間を使えばいい。


全員へ短く狙いを伝える。


もう一度、胸の攻撃を使わせる。


シルクが走った。


キリコがその進行方向へ小型の魔力壁を出す。


一枚目を蹴る。


二枚目。


白い身体が一気に高度を上げた。


そこへベルの風が重なる。


「キュイッ!」


シルクの蹴りが巨兵の頭部へ入った。


倒すための一撃ではない。


注意を上へ向けるためだ。


巨兵が身体を起こし、シルクを追う。


その間にウンディーネの水が再び膝関節へ入った。


メイが凍らせる。


片脚が一瞬だけ鈍る。


巨兵の胸が開いた。


魔力光が集まり始める。


「来るよ!」


ベルの声。


シルクが離脱する。


キリコもすぐに足場の壁を消し、俺たちの前へ斜めの魔力壁を並べ直した。


魔力砲が放たれる。


壁へぶつかり、今度も軌道が上へ逸れた。


その瞬間、俺は走った。


胸部装甲が大きく開いている。


魔力を放った直後で、内部も完全には閉じていない。


金剛棒を振り上げる。


だが、殴らない。


左右から閉じようとする胸部装甲の隙間へ、そのまま金剛棒を差し込んだ。


「ぐっ……!」


装甲が棒を挟み込もうとする。


俺は金剛棒を少し伸ばし、重量を増した。


破壊不能の棒が支えになり、左右の装甲が途中で止まる。


巨兵の胸が開いたままになった。


奥に、強い光を放つ機構が見える。


「キリコ!」


呼ぶ。


それだけで十分だった。


キリコはすでにこちらを見ていた。


手のひらの前へ、小さな魔力が集まる。


大きな魔力弾ではない。


訓練で何度も使ってきた、狙った場所へ当てるための小さな一発。


放たれた魔力弾が、金剛棒の横を抜ける。


開いた装甲のさらに奥。


最も強く光っていた一点へ命中した。


バチッ!


巨兵の内部で光が乱れた。


全身が大きく震える。


俺はすぐに金剛棒の重量と長さを戻し、胸部から引き抜いて距離を取った。


巨兵が一歩下がる。


もう一歩。


膝が落ちた。


目の光が消える。


続いて肩。


胸。


腕。


脚。


身体を走っていた魔力光が、一つずつ順番に消えていった。


最後に低い駆動音も止まる。


誰もすぐには近づかなかった。


しばらく警戒し、完全に動かないことを確認する。


「……終わった?」


キリコが小さく息を吐く。


「うん。たぶん大丈夫」


まずは全員の状態を見る。


キリコにも怪我はない。


ベル、メイ、シルク、ウンディーネも大丈夫そうだ。


俺も大きな傷はなかった。


そこでようやく、停止した機巧守護巨兵へ目を向ける。


胸部装甲。


関節。


内部に見えた光。


分からないことばかりだ。


近くで見たい。


できれば中も確認したい。


さっきまでなら、そのまま近づいていたかもしれない。


だが、一度足を止める。


周囲を見る。


仲間を見る。


それから、ゆっくり巨兵の向こうへ視線を移した。


奥の金属扉が、低い音を立てながら開き始めていた。


その先には、見覚えのある小広間がある。


第七十階層を越えたらしい。


「先に休もう」


今度は迷わずそう言った。


六人揃って小広間へ入る。


第七十一階層へ続くらしい道もあるが、今日はまだ踏み込まない。


未知の遺跡。


理由の分からないほど順調だった道。


停止した巨大な機械。


気になるものはいくらでも残っている。


それでも今は、先ほどより落ち着いて眺めることができた。


俺は小広間の壁際へ腰を下ろす。


少しするとメイが近くで伏せ、シルクもその横へ座った。


ベルとキリコも身体を休め始め、ウンディーネも静かにこちらへ来る。


俺も背中を壁へ預けた。


先を見たい気持ちは、まだ消えていない。


ただ今度は、その気持ちだけに足を動かされることはなかった。

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