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探求者の異世界美食行脚 ~異世界召喚でハズレ扱いされたゴリラ系男子、気ままなグルメ旅に出る~  作者: おまめちゃん
南の地メリディアへ

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第125話 空を駆ける飛竜便と、香る白い牛もつスープ

メリディア王城へ挨拶に行った翌朝。


次にどこへ向かうかも、この街をいつ出るかもまだ決めていない。


朝食を終えて今日の予定を考えていると、一つ見ていない場所を思い出した。


「そういえば、飛竜便の発着場にはまだ行ってませんでしたね」


「飛竜便?」


清水さんがこちらを見る。


「飛竜で荷物を運ぶ専門の商会があるんです。前に市場から飛んでるところだけ見ました」


「飛竜で荷物を運ぶの?」


「はい。ただ、俺も発着場へ行ったことはないです」


クロエさんも興味を持ったらしい。


「それなら見てみたいな」


「わたしも見たい」


キリコも続いた。


特に用事もないし、今日はそこへ行ってみよう。


ベル、メイ、シルク、ウンディーネも一緒に宿を出て、メリディアの街外側へ向かった。


発着場は市街地から少し離れた、建物の少ない開けた場所にあった。


遠くからでも飛竜が降りるためらしい広い空間が見える。


近づくと、太い柱の並ぶ場所や大きな屋根付きの建物、その横には飛竜を休ませるためらしい囲いもあった。


騎手や作業員が行き来している。


荷物を扱う区画を見ると、大きな荷車へ積み上げるような箱はない。


人が抱えられる程度の小型貨物箱を仕分けたり、飛竜用の鞍の左右へ固定したりしていた。


見学していると、一人の作業員が声を掛けてくれた。


「飛竜便を見に来たのか?」


「はい。市場で話を聞いたことがあって」


「なら、あの線より内側には入らないでくれよ。降りる時はかなり風が出るからな」


「分かりました」


ちょうど一頭戻ってくるところらしい。


作業員が空を指した。


遠くに小さな影が見える。


それが徐々に大きくなり、翼を広げた飛竜の姿がはっきりした。


背には騎手が一人。


胴の左右には、鞍と一体になった小さな貨物箱が取り付けられている。


発着場の上まで来ると、飛竜は翼を広げて速度を落とした。


バサッ、と強い風が地面へ叩きつけられる。


清水さんが髪を押さえながら目を丸くした。


「本当に飛んで運んでるんだ……」


飛竜は数歩走るようにして着地し、騎手の合図でゆっくり止まった。


係員が近づき、左右の貨物箱を外していく。


「思ったより荷物は少ないんですね」


俺が言うと、作業員が頷いた。


「飛竜だからって何でも運べるわけじゃない。むしろ積める量は少ないぞ」


長距離を飛ぶ以上、重いものを大量に積むわけにはいかないらしい。


「運ぶのは手紙、急ぎの薬、希少素材みたいなもんだ。小さくて高い品が多いな」


「食材もありますか?」


「ああ。鮮度に値段が付くものならな。陽冠鶏みたいなのを送ることもある」


市場で聞いた話と同じだ。


軽く、高価で、早く届くことそのものに価値がある荷物。


だから高い運賃を払ってでも使われている。


「穀物や野菜を大量に運ぶなら、馬車の方がずっと安い」


「なるほど」


速い代わりに、用途をかなり選ぶ輸送手段ということか。


何便か眺めていると、新しく到着した一頭が少し気になった。


着地自体は問題ない。


騎手も普通に降りた。


ただ、飛竜の息が少し荒く、何度も片側の翼を動かしている。


騎手も気づいているらしく、首筋へ手を当てながら声を掛けていた。


周囲には慣れた作業員もいる。


俺たちは勝手に近づかず、離れた場所から様子を見る。


やがて左右の貨物箱を外す作業が始まった。


一人が飛竜の脇へ入り、留め具を緩める。


その瞬間だった。


「ギャアッ!」


飛竜が痛がるように大きく身体を振った。


「危ない!」


外しかけていた片側の小型貨物箱が、固定具から滑った。


箱そのものは一人でも抱えられそうな大きさだ。


それでも飛竜の胴の高さから人へ落ちれば危ない。


クロエさんがすぐ動いた。


真下にいた作業員の腕を掴み、後ろへ引く。


同時に清水さんが手を向けた。


落下する箱の下へ風が回り込む。


勢いよく落ちていた箱が、ふっと軽くなったように速度を落とした。


吹き飛ばすのではない。


風が箱を下から包み込み、その重さを支えるように少しずつ下ろしていく。


清水さんは箱から目を離さず、細かく手を動かしていた。


中身を壊さないよう力を調整しているようだ。


箱は地面へ叩きつけられることなく、ふわりと着地した。


ただ、最後に残った勢いで少し横へ滑る。


その先には別の作業員がいた。


半透明の小さな壁が現れる。


箱は壁へそっと触れるようにして止まった。


キリコが両手を前へ出している。


「大丈夫?」


作業員が慌てて横へ離れた。


「あ、ああ。助かった!」


飛竜はまだ落ち着かず、片側の翼を動かしている。


俺はその動きを見る。


敵意があって暴れているようには見えない。


特に片方の翼を庇っている。


荷具が触れていた付け根の辺りを嫌がっているようだった。


よく見ると、皮膚に擦れたような跡もある。


「すみません」


騎手へ声を掛ける。


「翼の付け根、怪我してませんか?」


「翼?」


騎手が飛竜の横へ回る。


別の係員も荷具を慎重に持ち上げた。


「あった。擦れてるぞ」


留め具の一部が本来の位置からずれていた。


飛んでいる間に少しずつ位置が変わり、翼の付け根へ擦れ続けていたらしい。


着地までは耐えていたものの、貨物箱を外そうとした時に金具が傷へ当たり、痛みで身体を振ったようだ。


「治療担当を呼べ。残りの荷具も先に外そう」


騎手たちが手早く動き始める。


原因となった部分が外れると、飛竜も少しずつ落ち着いていった。


怪我人はいない。


清水さんが受け止めた貨物箱も、外から見た限り壊れていなかった。


作業員が慎重に蓋を開け、中を確認する。


「こっちも無事だ。薬瓶だったから、地面へ落ちてたら何本か割れてたぞ」


「よかった……」


清水さんも安心したように息を吐いた。


俺はキリコを見る。


「今の盾、よかったよ」


「うん」


キリコが少しだけ笑う。


ウンディーネと練習していた、必要な場所へ必要な大きさだけ盾を出すこと。


今回は自分で判断して使えていた。


しばらくして、発着場の責任者らしい男性が俺たちのところへ来た。


「さっきは助かった。人も荷物も無事だった」


「大きな怪我がなくてよかったです」


「それでも礼はさせてくれ」


男性が発着場の近くを指す。


「昼はまだだろ? せめて飯くらい食っていってくれ。俺たちがいつも使ってる食堂がある」


ちょうど昼も近い。


みんなを見ると、特に反対はなさそうだ。


「では、お言葉に甘えます」


発着場から少し歩いたところに、小さな食堂があった。


騎手や荷役作業員が多く、昼前なのにかなり賑わっている。


店へ近づいたところで、厨房から濃い香りが流れてきた。


肉を煮た香り。


いくつもの香辛料。


その奥には、椰香果の濃厚な汁に似た柔らかな甘い香りも混じっている。


俺は思わず厨房の方を見る。


大きな鍋の中には、白っぽい汁が見えた。


「すみません。あれは何を作ってるんですか?」


声を掛けると、中年の料理人がこちらを向いた。


「白香牛煮(ソト・ベタウィ)だよ」


「ソト・ベタウィ?」


「牛の肉と内臓を香辛料で煮て、椰香果の濃い汁と乳を合わせるんだ」


内臓も使うらしい。


一気に興味が湧いた。


「どの部位を使うんですか?」


「肉の他なら、胃や腸、舌だな。店によって入れるものは違う」


俺のアイテムボックスにもある。


紅角野牛のタン。


スネやネック。


胃。


腸。


仕込んでおいた牛骨出汁もまだ十分残っている。


「俺も牛の肉と内臓を持ってるんですが……もしよければ、作り方を教えてもらえませんか?」


料理人が少し目を丸くした。


「客が厨房に入りたいって?」


「無理なら大丈夫です」


そこへ発着場の責任者が笑いながら口を挟む。


「この人たちがさっき助けてくれたんだ。それに、この兄ちゃんは市場で屋台をやってる料理人らしいぞ」


「ああ、あの肉サンドか?」


知られていた。


俺はアイテムボックスから、紅角野牛(クリムゾン・バイソン)のスネ肉とタン、下処理済みの胃と腸を少量ずつ出す。


料理人が肉を見る目を変えた。


「紅角野牛か?」


「はい」


胃と腸も確認してもらう。


内容物を取り除き、清水、水流、赤塩、小麦粉で十分洗ってある。


料理人が胃の表面を指で確認した。


「ずいぶん綺麗にしてあるな」


「一頭分、自分で解体しましたから」


「これを一頭?」


少し驚いたあと、料理人は笑った。


「そこまで料理が好きなら、見るだけより一緒に作った方が早い」


「お願いします」


仲間たちは食堂の席で待ってもらい、俺は厨房へ入った。


料理人が今日使う香辛料を調理台へ並べていく。


涼香草(シル・コリア)の種。


翠芳莢(カルド・ポッド)。


以前にも見たクローブに似た香辛料。


他にも知っているものがいくつかある。


その中に、初めて見る三種類があった。


細長い葉と、白っぽく太い根元を持つ香草。


硬い殻から取り出した、乳白色の木の実。


淡い赤褐色の硬そうな根茎。


まず香りや手触りを確かめてから【鑑定】する。


【香茅草(レモル・グラス)】


詳細:温暖な土地で育つ細長い葉を持つ香草。茎の根元に特に強い柑橘を思わせる爽やかな香りがあり、叩いたり潰したりすることで香気が出やすくなる。肉や魚の煮込み、汁物の臭みを和らげ、濃い脂や乳の後味を軽くする用途に向く。


【白脂実(ケミル・ナッツ)】


詳細:硬い殻の中に乳白色で脂質の多い仁を持つ木の実。生では独特の青臭さと刺激があるため加熱して使用する。炒ってから潰すと穏やかな香ばしさと油分が出て、香辛料のペーストへ厚みと滑らかさを与える。


【芳辛根(ガラン・ルート)】


詳細:淡い赤褐色の皮を持つ硬めの根茎。生姜に似るが辛味は穏やかで、土や柑橘を思わせる強い芳香を持つ。薄切りや叩いた状態で煮込みへ加えると肉や内臓の匂いを整え、長時間加熱しても香りが残りやすい。


どれも濃い肉や内臓に合いそうだ。


「まず内臓を整えるぞ」


料理人の指示で、胃と腸を軽く茹でる。


すでに十分洗ってあるので、何度も茹でこぼして味まで抜くことはしない。


表面を整え、この煮込みへ馴染みやすくする程度で引き上げた。


スネ肉。


タン。


胃。


腸。


それぞれを見ながら切り分ける。


「全部一緒に煮ればいいわけじゃないんですね」


「硬さも脂も違うからな。胃なんかは柔らかくしすぎても面白くない」


「腸は?」


「脂を残しながら、噛み切れるところまでだ」


俺も紅角野牛の肉質は分かっている。


ただ、どんな状態をこの料理の完成とするかは料理人の方が詳しい。


次は香味ペースト。


小ぶりの玉葱。


ニンニクに近い香味野菜。


芳辛根。


涼香草の種。


クミンに似た香辛料。


炒った白脂実。


料理人が石鉢で潰し始める。


俺はすぐには手を出さず、どこまで細かくするのかを見る。


完全な滑らかさにはしない。


少し粒を残している。


「これくらいですか?」


「そうだ。細かくしすぎりゃいいってもんでもない」


粗さが分かってから、俺も一緒に潰す。


鍋へ油を少量。


そこへ香味ペーストを入れた。


ジュッと音が鳴る。


「ここは急ぐな」


料理人が木べらを動かす。


「生の匂いが消えるまで、ちゃんと炒める」


最初は玉葱と根の青い香りが強い。


炒めるほど水分が抜け、香りが変わっていく。


玉葱の甘さ。


ニンニクの香ばしさ。


芳辛根の少し土を思わせる香り。


涼香草の種とクミン系の香辛料。


白脂実の油分が全体へ馴染み、ペーストに艶が出てきた。


さらに、根元を叩いた香茅草を加える。


クローブに似た香辛料と翠芳莢も少量。


強い香りのものは控えめだ。


「全部を強くするわけじゃないんですね」


「ああ。どれか一つの匂いしかしなくなったら、入れすぎだ」


なるほど。


香辛料をたくさん使う料理でも、一つを目立たせるのではなく重ねていく。


香味ペーストへ十分火が入ったところで、紅角野牛の牛骨出汁を取り出す。


料理人にも一口味を見てもらった。


「……ずいぶんしっかり出てるな」


「骨が大量にあったので、まとめて仕込みました」


「これなら十分だ」


鍋へ注ぐ。


炒めた香辛料の香りが、湯気と一緒に一気に立った。


スネ肉とタンを入れる。


火の入り方を見ながら、胃と腸も加える。


本来ならここからじっくり煮込むらしい。


火加減と目指す柔らかさを聞いたあと、俺から提案する。


「この鍋、収納の中で煮込み時間だけ早く進められます」


「時間を?」


「必要な時間そのものはちゃんと経ちます。途中で取り出して確認できますよ」


料理人が少し考えてから頷いた。


鍋を適温に保ち、時間進行区画へ入れる。


教わったところまで進めたら止めて取り出す。


料理人と一緒に状態を見る。


「タンはまだもう少しだな」


串を入れて確かめる。


胃はまだ硬い。


腸ももう少し煮た方がよさそうだ。


出汁の濃さも確認し、再び必要な分だけ時間を進める。


次に取り出した時には、スネ肉へ串がすっと入った。


タンは柔らかくなりながら弾力を残している。


胃にも程よい歯触りがある。


腸は脂を抱えたまま、噛み切れる柔らかさになっていた。


「これくらいだ」


「分かりました」


ここで椰香果(ウォーター・パーム)の熟した果肉から搾った、乳白色の濃い汁を加える。


さらに料理人が牛乳を持ってきた。


「うちは椰香果だけじゃなく、乳も少し入れる」


「味が丸くなるんですか?」


「それもある。まあ、食えば分かる」


混ぜると、スープが白く濁っていった。


「ここからは強く煮立てるなよ」


「はい」


教えてもらった火加減を保つ。


必要なところだけ【絶対温度領域】で温度を安定させ、ゆっくり馴染ませる。


椰香果のコク。


牛乳。


牛骨出汁。


紅角野牛の脂。


そこへ何層にも重ねた香辛料が溶けていく。


隣では白飯も用意する。


手持ちの長粒種のインディカ米だ。


昨日の和定食では、日本米へ近づけず、この米に合う炊き方をした。


今日はさらに粒離れを活かす。


(この濃いスープなら、かなり合いそうだ)


料理人はもう一品、芋を出してきた。


「これも作るぞ。白香牛煮にはよく合う」


加熱した芋を潰す。


そこへ炒めた小玉葱とニンニク系の香味野菜、胡椒に近い香辛料、刻んだ香草を混ぜる。


小判型に整え、溶き卵を薄くまとわせて油へ。


表面が香ばしく色づいたところで引き上げた。


食卓には刻んだトマト、揚げた小玉葱、香草、南方柑橘、辛味調味料も並べられる。


器へ白濁したスープをよそう。


スネ肉。


タン。


胃。


腸。


それぞれを入れ、トマトと揚げ小玉葱、香草を散らした。


別皿には白飯と香味芋の揚げ団子。


仲間たちの分も同じ料理を用意する。


メイとシルクは、食べやすい量と大きさ、温度だけ調整した。


「いただきます」


まずは何も足さず、白いスープを一口。


最初に椰香果と牛乳の柔らかなコクが来た。


すぐ後から、紅角野牛の牛骨出汁の濃い旨味が広がる。


さらに鼻へ抜けるのは、何種類もの香辛料だ。


「……うまい」


濃厚なのに、単に脂っこいわけではない。


香茅草の爽やかな香りが残り、芳辛根も内臓の風味を邪魔せず整えている。


スネ肉は柔らかく、噛むと赤身の旨味が出た。


タンは柔らかい中にも弾力がある。


胃には独特の歯触りがあり、表面へ白いスープがよく絡む。


腸を噛めば脂の甘味が広がった。


それぞれの癖を消しているわけではない。


違う部位を、同じスープの中へまとめている。


途中で南方柑橘を少し搾る。


酸味が加わった瞬間、濃厚だった後味がすっと軽くなった。


「おっ、全然違う」


料理人が満足そうに頷く。


「重くなってきたら、それを入れるといい」


清水さんもスープを一口飲んでいた。


「香り、すごいね」


もう一口。


「でも、食べるとちゃんとまとまってる」


「俺もそこが面白いと思いました」


清水さんはタンを食べ、次に胃へ箸を伸ばした。


「こういう料理、日本にいたら多分知らないままだったな」


昨日より、旅先の食べ物へ手を伸ばすのもずっと自然になっている。


クロエさんは胃と腸を交互に食べていた。


「同じ牛なのに、食感が全然違うね」


「部位ごとに煮る時間も変えてます」


キリコも白飯とスープを順番に食べる。


「これ、好き」


ベルは香味芋の揚げ団子を少しスープへ浸して食べている。


ウンディーネも白い汁をゆっくり味わっていた。


俺も香味芋の揚げ団子を取る。


そのまま食べると、外側は香ばしく、中はほくほくだ。


玉葱と香辛料の香りも芋の甘味によく合う。


今度は端だけ白いスープへ浸す。


外側だけが濃厚な汁を吸い、中の芋はほくっとしたまま残っている。


「これもいいですね」


「だろ?」


最後に白飯へスープを少しかけた。


粒の間へ白い汁が入り込む。


肉や内臓と一緒に食べても、米が粘りすぎず軽い。


(これはむしろ、この米だからいい)


昨日食べた時とは、また違う良さが出ている。


食事を終えると、俺は料理人へ頭を下げた。


「ありがとうございました。すごく勉強になりました」


「こっちも面白い肉を使わせてもらった」


料理人は残った紅角野牛の肉を見る。


「普通の牛で作るのとは、味の出方が違う。あの牛骨出汁も良かった」


教えてもらうだけではなく、こちらの食材も試してもらえた。


こういう料理の覚え方は楽しい。


発着場の人たちにも改めて挨拶し、食堂を出る。


帰り道、清水さんが空を見上げながら口を開いた。


「観光するだけじゃなくて、こうやって知らない人と知り合って、知らない料理を教えてもらうこともあるんだね」


「こういうのも、旅の楽しみですね」


「そっか」


清水さんが少し楽しそうに笑う。


その時、また一頭の飛竜が空を横切った。


胴の左右には、小さな貨物箱が取り付けられている。


朝は、ただ飛竜便を見に行くつもりだった。


実際には少し騒ぎが起きて、人と荷物を助け、その縁で料理人と知り合い、知らない料理まで一緒に作った。


予定していたことは、ほとんどない。


清水さんは遠ざかっていく飛竜をしばらく見上げていた。


その表情は、予定外の一日も悪くないと思っているように見えた。

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