第117話 海を越える告白と、獣人の街のフトシサンド
ガルディア行きの船が、ゆっくりとポルト・ラーラの桟橋を離れ始めた。
甲板から港を見下ろしていたクロエへ、レオン様が最後に声を掛ける。
「クロエ。何度も言うが、無茶はするなよ」
「分かってるわ」
「それと、行き先が延びるなら必ず知らせろ。無事だという連絡も忘れるな」
「はいはい……じゃなくて、ちゃんと連絡するから安心して」
クロエが手を振る。
その隣で、カオリも頭を下げた。
「船まで手配していただいて、ありがとうございました」
「気にするな。二人とも気をつけて行ってくるといい」
船と桟橋の間が少しずつ広がっていく。
やがてレオン様の姿も小さくなり、港町全体が遠ざかり始めた。
今回の船旅は二泊三日。
カオリは手すりへ手を置き、昨日までいた街を眺める。
王都を出てからは、町を離れるたびに次のことばかり考えていた。
次の宿はどうするか。
食料や水は足りるか。
道は合っているか。
王国兵はいないか。
けれど今は、すぐ隣でクロエが海風を受けながら髪を押さえている。
同じ船に乗り、同じ場所へ向かっている。
(誰かと一緒に旅するんだ……)
カイトたちと行動していた頃とは違う。
誰かに任された予定でもない。
自分で決めた目的地へ、クロエも一緒に向かっている。
そのことが、まだ少し不思議だった。
船室へ荷物を置き、必要なものを整理していた時。
カオリは空間を小さく歪め、簡易収納空間から着替えと旅の資料を取り出した。
「え?」
後ろから声がした。
振り返ると、クロエが目を丸くしている。
「今の、アイテムボックス?」
「違います」
「違うの?」
カオリは開いたままの収納空間を見る。
「一人で旅を始めたら、荷物を全部持って歩くのが大変だったので……空間魔法をいくつか組み合わせて作りました」
「作った?」
「はい」
クロエが収納空間へ顔を近づける。
もちろん中へ頭を入れたりはしないが、かなり興味があるらしい。
「どのくらい入るの?」
「小さな物置くらいです。中でも普通に時間が進むので食べ物は傷みますし、生き物も入れないようにしています」
「へえ……」
「開ける時にも魔力を使いますから、そんなに特別なものではないですよ」
クロエが何とも言えない顔でカオリを見る。
「荷物が大変だからって、旅の途中で収納魔法を自分で作るのね……」
「必要だったので」
「やっぱりカオリって、かなり変……じゃなくて、すごい魔法使いよね」
「今、変って言いかけませんでした?」
「気のせいよ」
クロエが先に船室を出ていく。
カオリも資料を収納へ戻し、その後を追った。
昼食の時間になると、船内の食堂には乗客が集まり始めていた。
カオリは空いている端の席を見つけ、そちらへ向かおうとする。
「カオリ、こっち」
呼ばれて足を止めた。
クロエが二人掛けの席から手を上げている。
一瞬だけ迷ってから、その向かいへ座った。
出されたのは、塩気の効いた焼き魚と豆の煮込み、それに少し硬いパンだった。
「これ、美味しいね」
クロエが魚を食べながら言う。
「はい。船の料理って、もっと簡単なものだと思ってました」
「ガルディアの料理は肉が多いらしいわよ」
「獣人帝国ですもんね」
「フトシ君、絶対喜んだでしょうね」
二人で顔を見合わせる。
ポルト・ラーラでフトシの話を聞いてから、会話の中へその名前が自然に出るようになっていた。
特別な料理ではない。
けれど誰かと食べながら、次に行く土地の話をする。
カオリはそれだけで、一人で黙って食事をしていた時とは全然違うと思った。
船旅の二日目。
昼を過ぎた頃には、二人とも船の揺れにもだいぶ慣れていた。
甲板の端で海を眺めていると、カオリは前から気になっていたことを尋ねる。
「クロエさんは、フトシ君とどうやって知り合ったんですか?」
「最初はマルタね」
クロエはすぐに答えた。
「広場でタコスっていう料理を売ってたの」
「タコス……」
また日本の料理だ。
「初めて食べたらすごく美味しくて、次の日もその次の日も買いに行ったわ」
「そんなに?」
「だって美味しかったんだもの」
クロエは悪びれもしない。
その後、マルタの代官だったゴードンがフトシの料理を自分のものにしようと圧力を掛けたこと。
クロエがその場に居合わせ、止めたこと。
そしてポルト・ラーラで再会したことを話してくれた。
「ゴードンを厳しく処分しようとした時も、フトシ君本人に止められたのよ」
「フトシ君が?」
「やったことは悪いけど、いきなり全部取り上げるほどじゃないって。自分が嫌なことされたのに、そういうところは変に冷静なのよね」
クロエが少し笑う。
カオリは黙って海を見る。
日本にいた頃のフトシと、今聞いているフトシ。
知っているようで、ほとんど知らなかった。
「そういえば」
今度はクロエが口を開いた。
「カオリとフトシ君って、同じ故郷なんだよね?」
「はい」
「どうして、そんなにフトシ君を探してるの?」
カオリの言葉が止まった。
責めるような聞き方ではない。
ただ不思議に思ったから聞いた。
そんな声だった。
「……」
今まで、詳しいことは誰にも話していない。
王都を出た理由も。
フトシを探す本当の理由も。
ポルト・ラーラで泣いた時でさえ、クロエは無理に聞こうとはしなかった。
カオリは海へ視線を戻した。
「……私たち、この世界の人間じゃないんです」
「え?」
口にしてから、自分でも驚いた。
ここまで話すつもりだったわけではない。
けれど、一度出た言葉はそのまま続いた。
「私たちの故郷は、日本っていう……この世界とは全然違う場所なんです」
クロエは何も言わずに聞いている。
「ある日突然、ロドリス王国に呼ばれました。私たちが行きたいって言ったわけじゃありません」
召喚されたのは五人。
フトシ。
カイト。
トウマ。
リン。
そしてカオリ。
魔王を倒すための戦力として、勝手に異世界へ呼ばれた。
「カイトは【勇者】。トウマは【聖戦士】。リンは【拳聖】。私は【賢者】でした」
「フトシ君は?」
「【探求者】です」
クロエが少し首を傾げた。
「それが悪かったの?」
「誰も知らない職業だったんです」
ほかの四人は分かりやすかった。
強い。
戦える。
王国が欲しがっていた力だった。
けれど【探求者】だけは、王国側にも何をする職業なのか分からなかった。
「戦闘向きの能力にも見えないって。それだけで、一般人と変わらない、ハズレだって言われて……」
カオリは一度言葉を切る。
「あの国は、フトシ君に少しだけお金を渡して、一人で王城から追い出しました」
「待って」
クロエの声が低くなった。
カオリが顔を向ける。
「勝手に別の世界から呼んだのよね?」
「……はい」
「それで、自分たちが欲しかった力じゃなかったから追い出したの?」
「はい……」
クロエの表情から、いつもの明るさが消えた。
「最低じゃない」
短い言葉だった。
けれど、本気で怒っているのが分かる。
「フトシ君が自分から王国に来たわけでもないのに。呼んでおいて、役に立たないと思ったら一人で出ていけって……何それ」
カオリは俯きかけた。
「でも、王国だけじゃないんです」
「え?」
「あの時、私も何もしませんでした」
フトシが追い出される時。
声を上げなかった。
止めなかった。
一緒に行くとも言わなかった。
目を合わせることすらできなかった。
「怖かったから……だけじゃないんです」
自分には【賢者】があった。
必要だと言われた。
強い力を持っている側に入れた。
そしてフトシだけが、そこから外された。
「酷いって思ってたのに……自分は追い出される側じゃなくてよかったって、安心してました」
カオリは両手を握る。
「自分は選ばれた側なんだって……少し、嬉しかったんだと思います」
今でも一番認めたくない部分だった。
けれど、それを隠して謝りに行っても意味がない。
クロエは途中で口を挟まなかった。
カオリはそのまま、カイトたちのことも話した。
強い力を得てから、少しずつ考え方が変わっていったこと。
最後には、邪魔ならロドリス王国そのものを潰してもいいと言い出したこと。
自分で資料を調べるうちに、魔王国について王国から聞かされていた話にも疑問を持つようになったこと。
そして三人とはもう一緒にいられないと思い、一人で王都を抜けたこと。
「だから、フトシ君を探してるんです」
カオリは海からクロエへ視線を戻した。
「許してもらいたいからじゃありません。許してもらえるとも思ってません」
何も言わなかった。
見捨てた。
そのことを、自分の口で本人へ伝えたい。
「ちゃんと会って、謝りたいんです。それだけは……逃げたくないんです」
話し終わる。
海の音だけが残った。
クロエはしばらく黙っていた。
やがて、ゆっくり口を開く。
「……わたし、フトシ君にしたことは本当に酷いと思う」
「はい」
「王国もそうだけど、カオリたちが何も言わなかったことだって、なかったことにはできないと思う」
「……はい」
カオリはその言葉を受け止めた。
慰めてほしくて話したわけではない。
正しかったと言ってほしいわけでもない。
「でも」
クロエが続ける。
「だからカオリは、一人でここまで来たんでしょ?」
カオリが顔を上げる。
「怖くても王国を出て、フトシ君を探して、本人に会いに行こうとしてる」
クロエが少しだけ笑った。
「だったら、今のカオリの味方はする」
「……味方」
「うん」
あまりにも普通に言われて、カオリはすぐに返事ができなかった。
「一緒にフトシ君を探そう」
クロエは海へ視線を向ける。
「ちゃんと会って、ちゃんと謝りに行こう」
「……一緒に?」
「うん」
また普通に返ってくる。
「ガルディアまでって話だったけど、もうやめた」
「え?」
「フトシ君に会うまで付き合う」
カオリは慌てる。
「でも……レオン様との約束が」
「ああ、それなら大丈夫」
クロエが手を振った。
「船に乗る前に、お父様にはもう話してあるの。ガルディアでもフトシ君の足跡が続いてたら、その先まで追うかもしれないって」
「許してくれたんですか?」
「無茶しないことと、ちゃんと無事を知らせることが条件だけどね」
だから出航の時にも、レオン様は何度も念を押していたらしい。
「今の話を聞いて、カオリをまた一人にする方が無理だし」
クロエはそう言った後、少しだけ声を明るくした。
「それにさ」
「はい」
「フトシ君に会えたら、また料理食べられるでしょ?」
カオリは一瞬きょとんとしてから、思わず笑った。
「……それも理由なんですね」
「もちろん!」
クロエも笑う。
さっきまで重かった空気が少しだけ軽くなった。
「あと」
「まだ何か?」
「ずっと一緒に旅するなら、クロエさんじゃなくてもいいわよ」
カオリは少し迷う。
「……クロエ」
「うん」
クロエはそれだけ答えた。
大きく何かが変わったわけではない。
それでも、二人の間にあった距離が一つ縮まった気がした。
二泊三日の船旅を終え、二人は獣人帝国ガルディアへ到着した。
港へ降りた瞬間から、ポルト・ラーラとは雰囲気が違う。
大柄な獣人たちが太い声を上げながら荷を運び、市場の方からは肉を焼く香ばしい匂いが流れてくる。
黒パンを山積みにした店。
大きな塊肉を並べた肉屋。
人間の街では見ない姿の獣人たちが、行き交う人々の大半を占めていた。
「すごいわね!」
クロエは楽しそうに辺りを見回している。
カオリも少し圧倒されながら、その隣を歩いた。
市場へ入ってすぐだった。
「フトシサンド、焼きたてだぞ! 肉たっぷりだ!」
二人が同時に足を止める。
「……フトシ?」
「フトシ君、料理名になってるんだけど」
声がした屋台へ近づく。
そこで売られていたのは、大きな黒パンを横から割り、分厚い肉の円盤と野菜を挟んだ料理だった。
鉄板では粗く挽いた肉をまとめたパティが焼かれ、脂の弾ける音を立てている。
「二つください!」
クロエが早速注文する。
「その前に聞いてもいいですか?」
カオリが店主へ尋ねた。
「これ、どうしてフトシサンドっていうんですか?」
熊の獣人の店主は、不思議そうな顔をした。
「最初にこの食い方を始めたのがフトシだからだろ?」
「この料理をフトシ君が作ったんですか?」
「今売ってるやつとは違うぞ」
店主は焼いているパティをひっくり返す。
「最初にあいつがやったのは、うちの黒パンを横に割って、野菜とホロホロにした肉やカツを挟んで食うやり方だ」
カオリは話を聞く。
フトシが市場で売ったのは、プルドポークやカツと野菜を黒パンへまとめて挟む料理だった。
その食べ方が広がった後、狼やワニの獣人の肉屋たちが、自分たちでも挟む肉を作ろうと考えた。
そこで魔物の端肉や脂を粗く叩き、塩や香辛料を混ぜて円盤状にまとめ、鉄板で焼く肉を作った。
それが今使われているパティの始まりらしい。
さらに別の店がチーズを挟む。
違う肉を重ねる。
ソースを変える。
魚を挟む店まで現れた。
「それで、どうして全部フトシサンドに?」
クロエが聞く。
店主が首を傾げる。
「だから、最初に黒パンへ色々挟んで一つにして食わせたのがフトシなんだろ?」
「……それだけ?」
「他に何がいるんだ?」
クロエが笑い出した。
「フトシ君、自分が知らないところで名前付けられてるじゃない」
出来上がったフトシサンドを受け取る。
厚いパティ。
アイアンキャベジなどの野菜。
濃い肉ソース。
店によってはここへチーズや別の肉を追加するらしい。
カオリも両手で持ち、かぶりついた。
硬めの黒パンへ肉汁とソースが染み込み、噛むほどに粗挽き肉の旨味が広がる。
野菜の歯ごたえもあり、見た目ほど食べづらくない。
「美味しい!」
クロエがすぐに声を上げる。
「フトシ君が作ってた料理とは違うけど、これもすごくいい!」
「当たり前だ」
店主が笑う。
「あいつがいなくなってから、俺たちでずっと変えてきたからな」
カオリは手元のフトシサンドを見る。
ポルト・ラーラのたこ焼きと同じだった。
フトシが作ったものを、そのまま残しているわけではない。
一つのきっかけから、その土地の人たちが自分で考え、変えて、今も作り続けている。
だからフトシがいなくなった後も残っている。
(私、本当に何も知らなかったんだ……)
日本にいた頃も。
王城にいた時も。
フトシ本人を、ほとんど見ていなかった。
食事を終えた二人は、次の手掛かりを探すため冒険者ギルドへ向かった。
受付でカードを提示した後、カオリが尋ねる。
「フトシという冒険者について、何か記録は残っていますか?」
対応していた虎獣人の職員が、すぐに顔を上げた。
「ああ、あの人間の兄ちゃんか」
またすぐに通じた。
「ご存じなんですか?」
「そりゃ覚えてるさ。色々やってったからな」
最初に聞かされたのは、料理の話ではなかった。
近郊の森に作られていたオークの集落。
多数のオークに加え、オークジェネラルやオークマジシャンまでいた場所を、フトシが討伐したという。
「フトシ君一人でですか?」
「白いウサギと黒い犬みたいなのも一緒だったな」
「……三人で?」
カオリは思わず聞き返す。
ポルト・ラーラでも聞いた、白いウサギと黒い子犬のような相棒。
名前も正体も、まだ知らない。
「しかも討伐した後に、集落まで綺麗に片付けてきたんだ」
「集落まで……」
さらに話は続いた。
その討伐を、自分たちの功績だと騙ったCランクパーティ【血塗られた牙】がいたこと。
本物の討伐証明をフトシが持ち込んだことで嘘が発覚し、逆上した三人から模擬戦を挑まれたこと。
「兄ちゃん、一人で三人まとめて受けたんだよ」
「勝ったんですか?」
クロエが聞く。
虎獣人は笑う。
「数秒だったぞ」
「数秒?」
「三人とも一発ずつだ。それでも壊すような殴り方はしなかった」
その場にはギルド長のレグルスも現れ、【血塗られた牙】の行動を直接謝罪した。
そしてフトシの実力と、必要以上に相手を傷つけなかった振る舞いを認めたという。
クロエが感心したように息を吐く。
「料理だけじゃなくて、本当に強かったのね」
カオリは黙っていた。
【探求者】。
分からない。
だからハズレ。
一般人同然。
ロドリス王国はそう決めた。
けれど、実際にフトシが歩いた場所で聞く話は、その評価とまるで噛み合わない。
料理を残している。
人と関わっている。
魔物の集落を討伐している。
Cランク冒険者三人を相手にしても圧倒している。
(王国は……何を見てたんだろう)
そう思った直後、自分にも同じ言葉が返ってくる。
自分だって、何も見ていなかった。
「その後、フトシ君はどちらへ向かったんでしょうか」
虎獣人の職員が北を指す。
「もっと北の魔族の街だな」
地図を広げてもらう。
当時、獣人帝国と魔族領を直接結ぶ定期馬車はなかった。
フトシは徒歩で北へ向かったらしい。
「大人の獣人でも、一か月くらい歩く距離だ」
「一か月……」
クロエも驚いている。
「フトシ君、本当に歩いて行ったの?」
「行ったぞ。途中でどこ通ったかまでは知らんがな」
カオリは地図の北側を見る。
「では、私たちもこのまま北へ……」
言いかけて、止まった。
フトシと同じ道を歩くことが目的ではない。
自分たちは本人へ会いたいのだ。
「今、アストラーレ方面へ行くなら、ほかの道はありますか?」
「あるぞ」
虎獣人の職員が地図の南側を指した。
獣人帝国内には、港街から南側の都市や国境方面へ向かう定期便がある。
そこからさらに国境を越える商隊や旅人が使う通常の交易路を通れば、アストラーレ南部へ向かえるという。
「ただし、ガルディアからアストラーレまで一本で行く定期馬車があるわけじゃない」
「途中で乗り継ぐんですね」
「ああ。国内は定期便。その先は交易路だな」
カオリは地図へ視線を落とし、道順を確認していく。
「アストラーレ側へ入ったら、どこを目指すのがいいでしょうか」
「南部ならメリディアだろうな」
「メリディア?」
「南の陽都って呼ばれる大きな街だ。商人も旅人も集まる。そこまで行けば、その先の情報も集めやすい」
カオリはその名前を覚える。
クロエも地図を覗き込み、すぐに頷いた。
「じゃあ、そっちでいいじゃない」
「はい」
カオリも迷わなかった。
「フトシ君と同じ道を通る必要はありません。行き先へ近づけるなら、その方がいいです」
「決まりね」
二人はギルドを出た。
次は、南へ向かう定期便の出発時間を確認しなければならない。
クロエが歩きながらカオリを見る。
「道とか乗り継ぎは、カオリに任せていい?」
カオリは少し笑った。
「はい。じゃあ、危ない時はクロエにお願いします」
「任せて」
ポルト・ラーラでは、クロエが前に立ち、カオリが後ろを支えた。
これからの旅では、カオリが道や情報を調べ、クロエが実戦や行動を支えてくれる。
どちらかが一方的に守るのではない。
それぞれができることを受け持って進んでいく。
カオリは隣を歩くクロエを見てから、南行きの定期便が出る場所へ目を向けた。
今度は、一人で進む道ではなかった。




